【解決済】集合住宅昏睡騒動

発生日時:2023年10月26日
発生場所:カントー地方・クチバシティ 3丁目民間アパート
関与ポケモン:プリン(単体・トレーナー所有)
関与人物:サヤ・ミナセ(OL)


【解決済】集合住宅昏睡騒動

2023年10月26日午前7時42分、カントー地方【クチバシティ3丁目】にある古い民間アパートで、住民20名が一斉に《原因不明の昏睡状態》に陥るという騒動が発生した。
現場は木造2階建ての集合住宅で、密集した住宅地に立地しており、被害者の中には翌朝まで覚醒しなかった者も複数含まれていた。

通報のきっかけとなったのは午前8時35分、恋人に会いに来た《シオリ(仮)》さん。
いつも通り呼び鈴を鳴らしたところ応答がなく、合鍵を使用して室内に立ち入ったところ、恋人がキッチンの床に横たわっているのを発見。
すぐに駆けつけた所外傷はなく、深い眠りに落ちたまま反応しない状態だったためそのまま警察と病院へ通報。
その後、立て続けに他の住人からも『夜勤から戻ったら家族が目を覚まさない』『建物が静かすぎる』といった通報が相次ぎ、複数の警察と消防が出動する事態となった。

一時は毒物やガス漏れなどの可能性が疑われ、建物全体が緊急封鎖されて全戸の安全確認が実施されたが、有害物質や異常な空気成分などは一切検出されなかった。

 

調査が続く中、2階の一室の前を通ろうとした隊員が唐突に意識を失った事で原因が204号室であることが判明。
その後、室内を調査しようと別の隊員が複数近づいた所、中から【ぷい〜♪】という小さな声が聞こえ、その瞬間先頭を歩いていた隊員が意識を失った。
その声の主が【プリン】である事に気づいた隊員は一時撤退し、防音装備で室内に突入した。
すると中にはトレーナーである女性【サヤ・ミナセ】(25歳)がベッドで熟睡する横で静かに歌い続けるプリンの姿があった。

その後の聴取により、ミナセはクチバ市内の中規模企業に勤務しており、事件当日は13日連続の深夜残業からの帰宅を経て、仮眠のつもりでベッドに横たわったとのことだった。
彼女には近隣に家族もなく、恋人など頼れる存在もいなかったため、多忙が続き家は荒れていて、なおかつ最近はプリンと過ごす時間も減っていたという。
その日もいつも通りプリンに軽く声をかけたあとベッドに入り込んで、ふと【早く全て終わらせて、ゆっくり眠りたい】と呟いたのが最後に残っている記憶だった。

 

以降は推測だが、プリンは通常では発揮しないレベルの強さで《うたう》を発動。
《愛する人を眠らせて休ませる》という単純な思いやりが、過剰に働いた結果だったとされている。

ミナセはこう語っている。

『あの子はいつも側にいてくれました。
帰ってくるたび、私が元気かどうか、必ず顔をのぞいてくれていたんです。
あの子に心配かけまいと、いつも無理して笑顔で返していましたが…
きっと、無理してる事も、限界だったのもあの子には全部わかってたんだと思います。
あの日もただ私のことを眠らせたかっただけなんだと思います。』

 

通常、プリンの《うたう》はせいぜい数メートルの範囲内にしか効果を及ぼさないが、専門家によれば《精神的に強い結びつきを持つ対象への過剰反応》により能力上昇が起こるケースがあるという。
今回もアパート丸ごと一棟という、壁などで遮られているにも関わらずその場にいた住民ほぼ全てを昏睡させたのは極めて稀なことである。
実際、駆けつけた警察官が部屋の前に来るまで効果がなかったのもその時点ではもう通常の力にまで落ちていたためだという。

事件後、クチバ警察およびポケモンリーグ・トレーナーライセンス管理委員会は事態の重大さを鑑み、【トレーナーライセンスの一時停止】を含む処分を検討。
だが、プリンが命令を受けたのではなく、善意によって引き起こされた事故であること、またミナセ本人にも重大な管理違反がなかったことから、【厳重注意と再教育講習の受講】という軽処分にとどめられた。

内容としては、今後ミナセはプリンに対して《夜間はモンスターボールでの管理を徹底》及び《防音措置を講じた居住環境への転居、または改修を行う》ことが義務づけられたという。

なお、今回の件を受けてSNS上では

『プリンは何も悪くない』

『働かせすぎた社会がこの事故を生んだ』

『防音設備を整えられるならとっくにしている』

『毎日残業なのに家でもモンスターボールの中にプリンを入れっぱなしにするのはいかがなものか』

などの声が殺到し、【労働環境の見直し】に対する議論が高まりを見せている。
また、《ポケモンの優しさが社会の闇を照らした》という言葉が広まり、今もその夜の記録は静かに共感と議論を呼び続けている。

――文・【ヤマト・フクシマ】(カントー東報社)


【管理人の感想】

プリンの《うたう》は元々攻撃技というより、補助や子守唄のようなものだと思う。
聞いた人を眠らせる…ただそれだけの、優しくて少し困った力なのは周知の事実だ。

だけど今回の件でわかったのは、過剰な優しさは時に予期せぬ迷惑をかけてしまうことがあるということ。
パートナーの疲れを見て、プリンはただ静かに眠らせようとした。
でも今回、想いがこもってしまったのかそれが少し強すぎてしまった。

迷惑を被った人や、不安に駆られた人がいたのもわかる。
でもやはり責められるべきなのはプリンではない。
そして、トレーナーでもない。
労働基準法を守らず、人材を蔑ろにする会社が蔓延っている事が何よりも問題なんだと思う。

本当に《起こすべき》だったのは誰なんだろうか。

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