発生日時:1981年5月22日
発生場所:ジョウト地方・ヤドン渓谷
関与ポケモン:ヤドン(多数・野生)
【未解決】ヤドン渓谷の消失
1981年5月22日早朝、ジョウト地方【ヤドン渓谷】にて数千体に及ぶとされる野生のヤドンが一夜にして忽然と姿を消すという前代未聞の事態が発生した。
この渓谷は古くからヤドンの群生地として知られ、豊かな湿地帯に支えられた特有の生態系を形作っていた。
当時の記録によればこの地には常時およそ三千体以上のヤドンが確認されており、季節ごとの増減はあれどその規模が大きく変動することはなかったとされる。
異変が最初に発覚したのは午前7時23分頃。
前日まで賑やかに谷間を埋めていたヤドンたちの姿が、まったく見えないことに訪れた観光客が気づき、【ヤドン渓谷保護観察所】に通報した。
駆けつけた保護観察官は渓流周辺や沼地帯、さらに通常ヤドンが昼寝している岩陰や湿地の小丘に至るまで広範にわたり探索を行ったが、驚くべきことに一体のヤドンも確認できなかったという。
当初、天候変動や気圧低下による集団行動なども可能性として検討されたが、【ヤドン渓谷】では当日含め過去に一度として類似の現象は記録されておらず、この仮説はすぐに棄却された。
次に可能性として挙げられたのは、外敵による大規模な捕食であった。
しかし、ヤドン渓谷には大型の捕食者が生息しておらず、巣穴や休息場、泥地に至るまで踏み荒らされた痕跡や捕食の跡すら皆無だったという。
そのため、仮に天敵が突如として現れたとしてもこれだけの個体数を痕跡も無く、一夜にして一掃することは生態学的に不可能であると専門家は断言している。
続いて人為的な要因、違法な密猟やポケモン取引による大量拉致の線も検討された。
だが、仮にそれほどの規模でヤドンを捕獲し搬出する作業が行われたならば、必ず運搬機材の跡や複数の目撃情報が発生するはずである。
実際には、渓谷内外において不審者の目撃情報も不審な轍も一切報告されていなかったため、この可能性もほぼ除外された。
さらに、地質調査も実施されたが渓谷一帯の地形に異常は見られず、地盤沈下やガス爆発、地割れ、土砂崩れ、洪水、火山活動などの痕跡も確認されなかった。
周辺の植生にも異常は見られず、土壌検査においても外来種の侵入や毒素の検出といった異常値は一切出ていない。
なお、唯一確認されたのは失踪前夜に設置されていた生態音センサーと防犯カメラに異常が発生していたという事のみである。
当時、渓谷一帯に設置されていた複数の生態音センサーは前日の22時過ぎから一斉に強いノイズを記録しており、同時刻、防犯カメラの多くがブラックアウト、もしくは記録不能状態に陥っていた。
ヤドンたちは通常動きも緩慢であり生態音に急激な変化を及ぼすことは殆どないため、センサーに大きな反応があること自体極めて異例といえる。
この失踪事件により、ヤドン渓谷の生態系にも深刻な影響が及んだ。
ヤドンたちが長年にわたりバランスを保っていた湿地帯では、特定の草ポケモンが異常繁殖を起こし、過密状態に陥った。
これに伴い、もともとヤドンが捕食や生息圧によって抑制していた害虫類が爆発的に増殖。
近隣の農作物に被害をもたらしたため、ジョウト地方政府は急遽渓谷周辺の封鎖と、繁殖したポケモンの保護管理及び害虫駆除を進めざるを得なかった。
それから長い年月が経った現在においても、当時失踪したヤドンたちの群れは一体も確認されておらず、目撃情報すら一件も寄せられていない。
学術的にも渓谷規模で野生ポケモンの大群が一夜にして完全に姿を消したという現象は世界的にも前例がなく、また、その後一度も再現されていない。
いかなる自然現象、あるいは人為的介入によるものでも合理的説明がつかず、調査報告は未だ結論に達していない。
ヤドンたちは、どこへ消えたのか。
誰も答えを知らぬまま、渓谷には今日も静かな風だけが吹き抜けている。

――文・【イナバ・コウ】(ジョウト自然観測協会)
【管理人の考察】
ヤドンたちはどうやって姿を消したのか
失踪に際して外敵の襲撃、自然災害、人為的な密猟といった通常想定される原因はすべて否定されている。
約3000体に及ぶヤドンがわずか一夜で痕跡すら残さず消えたという事実は自然界でもポケモン界でも極めて異例である。
泥濘地帯や湿地のような地形であればこれほど多数の生物が移動すれば必ず踏み荒らされた跡が残るはずだが…それすら確認されなかった。
生態的にも個体群が一斉に移動する例は知られておらず、個々の特性を考慮しても、ヤドンにそのような高い集団行動能力があるとは考えにくい。
《ナニ》が関わったのか、何があったのか極めて謎である。
《未知のエネルギー》による干渉
唯一異常として報告されたのが生態音センサーに記録された強いノイズと防犯カメラの一斉ブラックアウト現象だった。
ノイズの発生はヤドンのような動きの遅いポケモンが引き起こすものではない。
さらに、防犯カメラの故障が同時多発的に起きた点も異常であり、これは単なる自然現象や偶発的な機器故障では説明できない。
これらの機器トラブルがヤドン失踪直前に集中して発生していることを考えると、何らかの外部からの強力な干渉、もしくは《未知のエネルギーによる干渉》があった可能性を考慮せざるを得ない。
ヤドンたちの消失方法について
ヤドンたちは通常の移動や運搬ではなく、《消滅》に近い現象だったと推測するのが妥当だろう。
その場に存在していた個体群が痕跡を残さず消えたという状況は極めて異常であり、一般的なポケモンの生態行動ではまずあり得ない。
また、ヤドンにはテレポートや空間転移といった特別な能力は備わっておらず、自発的に異空間へ消える能力はない。
つまり、ヤドン自身が何らかの行動を起こして失踪した可能性は低く、外的要因、しかも自然現象とも通常のポケモン行動とも異なる《未知の事象》によるものである可能性が高い。
渓谷への生態系影響
ヤドンの集団失踪後、湿地帯のバランスが崩れたことも重要なポイントである。
特定の草ポケモンの異常繁殖、害虫の爆発的増加、農作物被害……
これらは全てヤドンたちが地域の生態系で果たしていた役割を失った結果である事は間違いない。
だが、生態ピラミッドのバランスが崩れたとき、環境がこれほど急速に変質する例は自然界でも珍しいのではないだろうか。
ヤドンたちは単なるのんびり屋の存在ではなく、確実に地域生態に不可欠な役割を担っていたことがこの異変によって証明された形となった。
いつの日かヤドンは戻ってくるのだろうか。
しかし、長い年月をかけて新たな生態系を築いた場所に大量のヤドンが戻った場合…
その時もまた、周辺に様々な影響を与えてしまうのではないだろうか。
構事件録
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