発生日時:2013年6月21日
発生場所:ジョウト地方・アサギシティ
関与ポケモン:ビリリダマ(5体・野生)
【解決済】電撃の輪
アサギシティ南部の広大な農業地帯で地元有数の生産規模を誇る果樹園が一夜にして壊滅的な被害を受けた。
被害が発覚したのは6月21日の早朝で納品に訪れた青果業者が園内の異変に気づき、警察と消防へ通報したことによるものだった。
現場に到着した関係者が目にしたのは青々としていたはずの果樹がすべて枯れ果て、幹は複雑に裂け、足元には黒く炭化した果実と焦げた葉が散乱する異様な光景だった。
園の中央付近には1人の男性が倒れており、その周囲には円を描くように5か所の放電痕が残っていた。
衣服は一部が焼損し、体には強い電撃による損傷が見られた。
現場に残された麻袋の中には収穫前の果実が詰め込まれており、袋は急ぎ閉じられたまま口が開き中身がこぼれ出していたという。
調査に入った環境保護局のポケモン生態班は焼損痕の形状や配置から5匹の《ビリリダマ》が男性を囲み、ほぼ同時に高出力の放電を行った可能性が高いと結論づけた。
その後警察が現場近くで聞き込みを行ったところ、事件発生の前夜、果樹園から500メートルほど離れた農道で5匹のビリリダマが集まっているのを目撃した人物がいた。
その人物は珍しい光景に興味を抱き近づこうとしたが次の瞬間、突発的に放たれた強烈な電撃を受け、全身に火傷と痺れを負って病院に搬送されていたという。
幸い一命は取り留めたものの、電撃の強さは通常の単体個体による攻撃をはるかに上回っていた事を証言していた。
その報告を受けて発表されたポケモン研究者の分析によれば、ビリリダマが5匹で密集する状況は極めて稀であり、互いの電気エネルギーが共振することで通常よりはるかに強力な電力を発生させる危険な状態に陥る可能性があるという。
この現象は特定の環境刺激や脅威を感知した際に起こると考えられているが詳細な条件は未だ解明されていない。
被害の深刻さと《未だ近隣に潜んでいる》可能性を受け、街の安全を守るためにポケモンレンジャー隊と警察が事件発生から3日後の昼から共同で捜索を開始することとなった。
両者はかつて《ロケット団》が開発した《対電気用の絶縁装備》と《対電気専用のシールド》を用意し、周辺の林や農地を慎重に捜索し翌日の午後に別の果樹園にて発見。
発見時には一匹だったビリリダマは人間に気付くと短い電気を断続的に発生させたかと思うと瞬時に残りの4匹が集まり、共鳴しながら強烈な放電を発生させていたが、レンジャー隊は距離を保ちつつ特殊ネットと放電吸収装置を併用し全個体を無事に捕獲することに成功した。
捕獲後、ビリリダマたちは衝撃や刺激を避けた管理下で電力を安全に放出できる用に訓練、及び保護を目的に専用施設に移送された。
そこでは専門スタッフが常時監視し群れとしての行動やエネルギー発生のメカニズムに関する調査が行われている。
最初に被害を受けた果樹園は大部分の樹木が再生不能と判断され伐採され、新たに苗木が植えられることとなった。
被害から数年が経過し、園には再び緑が芽吹きつつあるが、近隣の農家含め今も夜間の巡回が強化され、野生ポケモンへの警戒は解かれていない。
地元住民の間ではあの晩に遠くから響いた雷鳴のような音が強風の夜になると再び聞こえるという噂が囁かれ続けている。

――文・【ミナセ・タクヤ】(ジョウト自然環境事件調査会)
【管理人の感想】
ただの野生ポケモンの行動がこれほどまでに広範な被害を引き起こす可能性を秘めているという事実は脅威とも感じる。
通常単独行動するビリリダマが集まることによって発生する共振現象が単なる威嚇や防衛の域を超え、環境や人命にまで及ぶ危険性を孕んでいるという指摘は極めて重く、認識を新たにすべきことである。
単体でも強力な電撃を操るビリリダマが群れを形成して放つ電流は想像をはるかに超える破壊力を持っていたが、それが偶発的なものか、あるいは何らかの外的要因による意図的な連携だったのか、その違いが判明するだけでも今後の安全対策は大きく変わってくるのではないだろうか。
事件後のポケモンレンジャーと警察の捜索、捕獲の過程からもこの地域の危機意識の高さを物語っている。
特に《対電気用の絶縁装備》や《放電吸収装置》の準備は過去に犯罪組織によって培われた技術が地域防衛に転用された稀有な事例だと言える。
無事に5匹すべてを保護し、専用施設での監視下に置けたことは被害拡大を防ぐ上で大きな意味を持っているだろう。
それでも噂が絶えないことから物理的な被害が収束した後でも人々の心に残る恐怖や記憶の痕跡を示しているのではないだろうか。
自然と人間、そしてポケモンが交差する場所には目に見えない緊張が常に漂っており、それは簡単には消え去らないものなのだと思わされた。
構事件録
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