【未解決】幻の巨大貝

発生日時:1955年11月
発生場所:アローラ地方・カヘレ湾沖
関与ポケモン:パルシェン(1体・野生)


【未解決】幻の巨大貝

1955年11月6日、アローラ地方北部の港町【カヘレ村】から出港した中型漁船《ブライトアンバー号》が予定されていた帰港時刻を大幅に過ぎても戻らず、家族からの通報を受けて海上保安隊が捜索を開始した。
乗船していたのはいずれも村で長年漁を営んできた5名の漁師たちであり、海の状況は比較的穏やかだったことから悪天候や操船ミスといった可能性は当初低いと見られていた。

出港から約30時間後、広範囲にわたる捜索の末カヘレ湾沖の外れにて《ブライトアンバー号》の船体の一部が海上に浮かんでいるのが発見された。
残された船体は原形をとどめておらず、船腹は複数箇所にわたって大きく裂け、まるで巨大な爪かナニカでで引き裂かれたような跡が刻まれていたという。
破損の角度や深さから専門家は自然の岩礁や暗礁との衝突ではなく、《何かしらの生物》により刻まれた可能性を指摘している。

さらに、残骸の周囲には4名の乗員の遺体が浮かんでいるのが確認された。
いずれの遺体も胴体や四肢に著しい損傷があり、特に胸部や腰回りには内部臓器が圧潰されるほどの強い外圧が加わっていたと見られている。
損傷痕は直線上ではなくいずれも湾曲し、一見すると《半円状の太いナニカ》に押しつぶされたような形をしていたという。

一方で、乗員の1人である若手漁師の姿だけはどこにも見つからず、現在に至るまでその行方は不明のままである。
彼が海に沈んだのか、それとも何かに攫われたのか、あるいは脱出したものの別の場所で命を落としたのか断定には至っていない。

後日判明したことだが、この事件とほぼ同時期に地元の別の漁師たちから《異様に巨大なパルシェン》の目撃情報が複数寄せられていた。
彼らによるとそれは通常個体の数倍にも及ぶ体躯を持ち、黒みがかった殻には無数のひび割れと裂傷があり、鋭く巨大な突起が複数伸びており、海底に静かに漂っていたという。
漁師が遠目で観察していると時折少しだけ殻を開くことがあり、閉じる時には体の芯まで金属音が響いてきたという証言もある。

加えて事件当日のブライトアンバー号の発見現場周辺で漁を行っていた者が超巨大なパルシェンが高速で海中を泳いでいるのを目撃し、その数秒後にまるで爆撃でもあったかのような音が響き急いで漁港へと戻ったと語っている。

その後、アローラ地方の大学に所属する海洋生物学者のチームが現地入りし、パルシェンの行動特性や生態に関する聞き取り・現地調査が実施された。
結論として野生のパルシェンは自衛のために攻撃を行うことはあっても、人間を積極的に襲う行動は基本的に確認されていないとされた。
ただし、極度のストレス状態、環境の異常変化、あるいは異常成長によって行動パターンが変容する可能性は理論上存在し、今回の件がそうした《異常個体による襲撃》である可能性は否定できないとされた。

事件後、カヘレ湾周辺の漁業活動は一時的に全面中止となり海岸線には監視と警戒を目的とした臨時の詰所が設置された。
しかしながらそれ以降同様の大型個体の目撃は一件も報告されておらず、巨大なパルシェンはまるで幻のように消息を絶ったままである。

現在もブライトアンバー号の沈没と乗員の死について誰もが納得するような明確な原因は突き止められていない。
カヘレ村では、今も11月6日になると海へ向けて5本の蝋燭が灯され沈黙のまま戻らなかった漁船とその乗員たちに祈りが捧げられている。

――文・【ケイン・アマモト】(アローラ海洋事件記録会)


【管理人の考察】

異常個体による襲撃

目撃証言にあるパルシェンは体長は数倍、殻は裂け、突起が増殖していることから通常種とはかけ離れた姿をしていたといえる。
こうした変化は通常の進化では説明がつかず、何かしらの原因、または関与により発生した《異常個体》だった可能性がある。
だがたとえ異常個体であったとしても漁船を襲撃する理由や目的が不明である。
なぜ4人はその場に放置され、一人だけ行方不明となったのか。
本当のターゲットは行方不明となったその一人だけだった可能性もないだろうか。

明確な意志

遺体に残された損傷、特に湾曲した圧痕と臓器の圧潰はまるで何かに《挟み潰された》かのような印象を与える。
これはパルシェンの殻により挟まれたということを連想させるが、それを人間に対して引き裂かられるまで行うというのはあまりにも異常と言える。
事故というには整いすぎていて、襲撃というには動機や継続性が感じられない。
つまりこれは本能的ではなく《ナニカの指示》が関与した攻撃だったのかもしれない。
普段は海底で静かに漂っていたのが事件当日に高速で進み、その直後に襲撃したと考えるとやはりそこには明確な意志があったように思える。

傷が語る過去

複数の証言で一致している《ひび割れと裂傷だらけの殻》という特徴も見逃せない。
もしかしたらこの個体は以前から《底しれぬナニカ》と戦闘を行っていたのではないだろうか。
もしくは報告がないだけで過去幾度か人間による被害を受けていたのではないか。
つまり、自らを守るため、もしくはナニカを守るために自衛の延長線として人間に反撃を行った可能性もある。
そう考えるとこの事件はパルシェンにとっての最後の抵抗で最初の意思表明だったとも言える。

根底が覆る可能性

事件後、目撃例も被害も一切発生していないことはこの個体が《偶然迷い込んだ存在》だった可能性も考えられる。
つまりアローラ近海ではなく遥か沖、もしくは深海に生息していた個体が何らかのキッカケもしくは何かしらの目的があって浮上したのではないだろうか。
また、目撃証言にある《爆撃のような音》は本当にパルシェンが行ったものなのだろうか。
もしかしたらパルシェンは人々を守るために浮上してきて、そのナニカの襲撃に駆けつけた結果《4人はかろうじて遺体が残った》という可能性はないだろうか。
つまり、《一人が消えた》ではなく《4人がかろうじて助かった》という構造であると考えると、今回の事件の見え方が180度変わってくる。

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