発生日時:1976年11月2日
発生場所:カントー地方・シオンタウン
関与ポケモン:ゴースト(未確認・複数)
【解決済】鐘の音が告げる別れ
1976年11月2日、カントー地方シオンタウンの墓地にそびえる古びた鐘楼から《鳴るはずのない鐘の音》が深夜の静寂を切り裂くように響いた。
その鐘は数年前に老朽化で崩れ落ち、鐘の綱も切れたまま放置されていたため長らく誰も近づくことがなく、近々撤去される予定のものだった。
その夜、シオンタウンに住む高齢の女性が息を引き取った。
彼女の名はツジ・エイコ(仮名)。
70年近くシオンタウンに住み続けた彼女は、数十年前に夫と幼い息子を相次いで亡くし、その遺骨を鐘楼近くの墓地に埋葬していた。
以来、彼女は毎日のように鐘楼の側で夫と息子に語りかけるように一人佇んでいたという。
エイコが亡くなったその夜、鐘楼の鐘が鳴り響いた瞬間、彼女の家の窓辺に置かれていた小さな額縁が床に落ちて割れた。
額縁の中には若かりし頃の彼女と夫、そして幼い息子が一緒に写った古びた写真が収められていたという。
鐘楼の鐘の音を聞いたという住民たちはその音に何か《言葉のようなもの》が混ざっていたと語る。
その言葉はほぼ聞き取れないものだったが【行かないで】と囁くよう悲しげな声を聞いたと証言する者もいた。
そしてその声を聞いた者たちのほとんどはまるで冷たい手が肩に触れるような《異様な悪寒》を感じたと口を揃えて言っている。
翌朝、シオンタウンの住民たちが鐘楼を訪れた時、鐘楼の周辺には《無数の幽霊の影》が飛び交っていたという。
現場に駆けつけたポケモンレンジャー隊員たちも、うごめく影の群れを目撃したが、シルフスコープを取り出した途端にその姿は消え失せた。
その後レンジャー隊が鐘楼に踏み込んだ所、周囲は全体的に煤けており、柱には《無数の小さな手形と足跡》が発見され、鐘楼の天井には《爪痕》が幾重にも刻まれていおり、その爪痕からゴーストがいたのではないかとされている。
事件後、鐘楼の鐘は取り外され、鐘楼自体も老朽化のため予定通り解体された。
廃材の運び出し作業が進む中、作業員の一人が《黒い影》に見つめられているような感覚を覚えたという。
彼は『誰かが鐘楼の跡地に立ってこっちを見ていた』と語ったが、他のものが確認する前にその姿は一瞬で掻き消えてしまった。
事件から数週間後、ツジ・エイコの家を訪れた特殊清掃業員が彼女の遺品を整理している最中に彼女の日記を発見した。
内容は基本的に日々を綴ったものだったが、最後のページには震えるような文字でこう書かれていた。
『やっと準備ができたから、今日はあの子と一緒に行くよ。
何度も迎えに来てくれて本当にありがとう。
もう一人にしないからね。』
鐘楼跡地は後に墓地として利用されているが、そこでは《夜中に鐘の音が聞こえる》という噂が絶えず続いている。
もしかしたら鐘が取り外された今でも、彼女が亡き家族のもとへ届くことを願って鳴り響いているのかもしれない。

――文・【シラハタ・レイジ】(カントー怪奇事件調査班)
【管理人の感想】
この事件の背景には深い哀しみと長年癒えることのなかった孤独が漂っている。
ツジ・エイコ氏が家族を亡くしてから何十年も鐘楼の前で語り続けた日々は、もしかしたらそこにいた《ナニカ》が自らに語りかける言葉と感じたのかもしれない。
そして彼女が亡くなったその夜に鳴り響いた鐘の音は彼女の魂が家族のもとへと旅立つ最後の合図だったのかもしれない。
温かい話しとして終わるのであればそれまでだが、一方で鐘楼内部に残されていた無数の手形と足跡の正体は不明のままで不気味さが残る。
もし、彼女を迎えに来たのが夫と息子だけではなかったとしたら…あの足跡は一体誰のものだったのだろうか。
もしかするとそもそも彼女を迎えに来たのは集まってきた他の霊たちだったのかもしれない。
あの鐘楼には他にも多くの亡霊たちが眠っていたのではないだろうか。
彼らもまた彼女のもとに訪れ、連れ去るように導いたのではないかという恐ろしい考えが頭をよぎる。
今でも鐘楼跡地で鳴り響くという鐘の音。
それは亡きエイコの魂が家族のもとでようやく安らげていることを伝える安らかな音色なのか…
それともこの世に取り残されたナニカがまだそこに存在し続けているという警告なのか。
エイコが本当に成仏できたのか…
その答えは今なお鐘の音が響くたびに問いかけられているのかもしれない。
構事件録
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