【未解決】暗雲裂く咆哮

発生日時:2021年8月
発生場所:ガラル地方・バラード岬
関与ポケモン:ジュゴン(1体・野生)


【未解決】暗雲裂く咆哮

2021年8月、ガラル地方南端に位置するバラード岬でかつて例を見ない規模の異常気象が観測された。
岬の沖合で突如として発生した暗雲は瞬く間に空を覆い尽くし、稲光と断続的な竜巻を伴いながら30時間以上にわたって海面を荒れ狂わせ続けた。
沿岸部では潮の引きが通常よりも極端に速まり一部では魚群が打ち上げられるほど海流が不安定になっていたがこの時点ではまだ大規模避難の指示はされていなかった。
しかし真の災害は二日目の深夜0時過ぎに突如として現れた。

沖の暗雲に向かって轟音とともに天を貫く巨大な水柱が出現し黒雲を真っ二つに切り裂いた直後、立っていられなくなるほどの地響きと共に岬一帯を津波が襲った。
その波は高さ10メートルを優に超え、中心街の建造物まで根こそぎ押し流した。
木造家屋は影も形も残らず、鉄骨造の市庁舎すら倒壊し、避難中だった仮設シェルターには浸水が及んだ。
後の調査によりこの時約《45,000人》が死亡しており、負傷者及び行方不明者数は《152,000人以上》に登ったとされている。
街の大部分は泥と瓦礫に埋まり、三日後に現地入りした救助及び調査隊は【まるで街を海から掬い上げたようだ】と報告している。

 

壊滅を免れたのは岬の高台にあるわずかな住宅街だけだった。
そこに住む住民の1人が自宅のベランダから津波が発生している際に沖合の様子を撮影していたところ、崩壊した港湾の向こう、深い霧の中に巨大な《ナニカ》が揺らめくのを目撃した。
しばらくすると海面が静まりかえったあと推定40メートル超の巨大な《ジュゴン》が浮上した。
その巨体の露出した背筋には傷のような痕跡がいくつも走っていたと記録されている。
ジュゴンはしばらくその場で静止していたが突如、体を傾けるようにして頭部を空へ向けると暗雲の中心に向かって常識では考えられない規模の冷凍ビームを発射した。

大気を切り裂くような甲高い轟音と共に冷凍ビームは雲を貫き、軌道上にあった気流がねじれ、暗雲の下の海面は瞬く間に凍りついていった。
すると黒雲は中心からひび割れるように裂け、しばらくするとゆっくりと霧散していったという。
ジュゴンはその様子を確かめるかのようにしばらく海面にとどまったのち、再び潜水し深海へと姿を消した。
それ以降この巨大ジュゴンの目撃例は一件も報告されていない。

 

元来、ジュゴンは人間に対して非常に温和で集団で移動することの多い海棲ポケモンである。
だがこの個体には仲間の痕跡がまったく確認されておらず、異常な体長に発達したヒレ、そして冷凍ビームの出力の高さなどいずれも異質な存在であった。
後の研究により専門家の間では書物にのみ名が残る、かつてガラルの海底に存在したとされる未だ未発見の古代遺跡《マグナ・イデス》の守護個体ではないかという説や、大陸プレートの動きと連動して覚醒した特殊個体である可能性も取り沙汰されているがいずれも決定的な証拠はない。

なお、街を壊滅させた津波はジュゴンが発生させたという説もあったが、ジュゴンが戦っていた《ナニカ》が発生させたという説が現在では有力である。
その《ナニカ》と巨大なジュゴンの戦いに決着がついたのか、またいずれ出会ってしまうのかは謎に包まれたままである。

――文・【エリオット・ヘインズ】(ガラル異常事件調査班)


【管理人の考察】

異常気象が示す存在

この災害の発端はバラード岬沖に突如出現した暗雲だったが、単なる気象現象としては到底説明できない激変ぶりが際立っていた。
雷と竜巻が断続的に発生し30時間以上もの間継続したというのは自然の力だけで起きたとは考えにくい。
つまりそこには明確な意思があり、作用を及ぼす《ナニカ》がそこにいた可能性を強く示唆しているのではないだろうか。
接近せずとどまり続けたのは自らの意思なのか、ジュゴンによる妨害なのかどちらなのだろうか。

水柱と津波の関係性

災害の核心となったのは深夜に発生した巨大な水柱と、それに続いた壊滅的な津波だった。
水柱が天を貫いた直後に津波が発生していることから何らかの因果関係があることは明らかである。
だが、ここで注目すべきは水柱はあくまでも暗雲目掛けて放たれたものであり、街にむけていたものではないという点である。
その後の地響きと共に押し寄せた波の規模からも津波が地震起因ではなく《ナニカ》による水の操作、もしくは圧力変化によるものであった可能性を否定できない。
すなわち水柱は巨大ジュゴンの能力によるものであり、津波は《ナニカ》が発揮したものと考えるのがシックリくるのではないだろうか。

巨大ジュゴンの正体

現れた超巨大なジュゴンは通常個体とは著しく逸脱した存在であり、既に生物学的な分類を逸脱している存在であったとも考えられる。
古代遺跡《マグナ・イデス》との関係性も含めこれは単なる進化や変異ではなく、古代の独立した固有種である可能性もあるのではないだろうか。
遠目に見てジュゴンと認知したとしても、詳しく調査したわけではないので全く異なる未知のポケモンである可能性は否定できない。

《ナニカ》の存在と目的

暗雲を発生させた《ナニカ》の存在は映像含めいかなる形でも記録されておらず、実在したのかも謎である。
しかし異常な暗雲は勿論、巨大な津波の発生及びジュゴンが一方向にのみ攻撃を続けていたことからも《ナニカ》は存在したと言わざるを得ない。
つまりジュゴン《ナニカ》と敵対関係にあり、《ナニカ》は人類への脅威であったという仮説が浮かび上がる。
もしそうであるならばあの災害はジュゴンがいなければより悲惨な結果を招いていたのかも知れない。

今も眠る脅威

ジュゴンは海へと戻り以降目撃されていないがそれは単に観測されていないだけであってどこかに存在し続けている可能性は非常に高い。
問題はそれを再び呼び覚ますような《ナニカ》が出現した時、今度こそ災厄はより大規模で甚大なものになるのではないかという点だ。
バラード岬の壊滅は終焉ではなく、ほんの予兆でしかなかったのかもしれない。
未だに解き明かされぬジュゴンの正体、そして暗雲の裂け目の向こうにいた《ナニカ》
それらの全てが静寂の中に沈んだままである限りあの咆哮が再び空を裂く日は決して遠くないのではないだろうか。

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