発生日時:2021年7月
発生場所:ホウエン地方・ミナモリタウン
関与ポケモン:キングラー(1体・野生)
【未解決】沈む琥珀
2021年7月、ホウエン地方東部の港町《ミナモリタウン》にある、干潮時にのみ露出する海蝕洞の最奥、波音すら吸い込まれるような静けさのなかで極めて異質なポケモンが発見された。
地元の漁師が洞窟内に入りこむわずかな陽光を反射する大きな琥珀を目撃したが、それが生き物であると認識されるまでには少し時間がかかったという。
その琥珀は艶を帯びた濃い黄金色で陽の角度によって半透明の層が幾重にも透けて見え、複雑に絡み合う螺旋状の模様が走っており、何千年もの時間をかけて作られた宝石のようであったという。
近づこうとすると琥珀はわずかに動き始め、それが生きた巨大な《キングラー》であることが判明した。
キングラーは警戒心をあらわにハサミを構えたものの、自ら攻撃を仕掛ける事はなくただ洞窟内の岩場に身を沈めるようにして様子を伺っていたという。
その場にいた漁師たちは捕獲を試みたが繰り出されたポケモン達はいずれもキングラーの前に立つと怯え、戦闘開始が不可能となった。
それでも攻撃指示を続けた一部の漁師によりポケモンが攻撃態勢を取った瞬間、キングラーが放った水流の一撃によって漁師もポケモンも全て洞窟外へ吹き飛ばされた。
その後キングラーは洞窟の奥へと消えていき、そのまま海に潜ったのか完全に姿を消してしまった。
漁師たちが洞窟内へ再調査しに戻った時にはなんの痕跡も確認されず、以降一度も琥珀の殻を持つキングラーの姿は目撃されていないという。
現在、当該の洞窟は内部の海水流によって一定の時期以外は調査以前に立ち入る事自体が困難を極めているため、調査機関および自治体により封鎖措置が取られており立ち入りは厳しく制限されている。
なお、その後数回にわたる調査で中を探索したものの、潮流の影響なのか洞窟の地形そのものが変化しており奥へと進むことは実質不可能と判断された。
事件以降ミナモリタウン近海では『巨大な琥珀が海底を漂うのを見た』とする証言が複数寄せられているが全てが曖昧な目撃情報であり、確証を得るには至っていない。
一部研究者は琥珀の殻を持つ事は通常の適応や進化を超えており、人為的に作られた存在だったのではないかという声も上がっている。
それがどのような意味をもつのか答えは未だ得られず、ただ1つ確かなのはあの琥珀は今もなお海の何処かを漂っているという事である。

――文・【サカモト・ユウカ】(ホウエン自然異常記録調査班)
【管理人の考察】
《琥珀化》の謎
発見されたキングラーが生き物であると判明するまでに時間がかかったという証言から一目では巨大な琥珀にしか見えなかった異質な存在であることが伺える。
琥珀のように光を多層的に通す殻の構造は現状自然界において他に例がなく、《琥珀のようなものを背負っている》ではなく《琥珀化した殻を持つ》と表現するのが最も正しいのではないだろうか。
それがもし独自の進化をした存在であるならば、いったい数十年、数百年、どれほどの時間をかけてその姿になっていたのか検討もつかない。
そしてそれが今の今まで誰にも目撃されていなかったというのも極めて不自然と感じる。
その巨大さも含めて人為的に改造、もしくは独自の進化をさせられたと考えるほうが辻褄があるのではないだろうか。
痕跡無く消えた謎
事件のあと洞窟内には痕跡ひとつ残されていなかった。
さらに潮流や地形の変化によって再び同じ場所へたどり着くことすら困難となっている。
自然環境による変化と説明されてはいるが変化の急速さを考えるとそれら全てが意図的であった可能性は否定できない。
つまり何者かが記録を消すために地形そのものを閉ざしたのではないだろうか。
また、短期間に劇的に洞窟の地形が変わったということからもあの場所が自然に形成された空間ではなかった可能性すら示唆している。
キングラーだけでなく洞窟自体も人工的な構造物だったとすればキングラーはどこかへ消えたのではなく誰かに《隠された》と見ることもできるのではないだろうか。
途絶えぬ目撃情報
ミナモリタウン沖では《海底を漂う巨大な琥珀》の目撃が相次いでいる。
そのいずれもが曖昧で明確な証拠は残されていないがいずれも巨大な琥珀を目撃している事から虚言や幻を見ているとは思えない。
むしろ中には《見間違いである》と考えて誰にも伝えないままでいるため、それでも伝えずにはいられなかった人の証言だけでもこれだけ集まるということからも間違いなく目撃されていると考えられないだろうか。
そう考えるとキングラーは今もナニカの理由でミナモリタウン近辺の海底を動き続けていると考えられる。
それがどのような目的でいるのかについては目撃情報だけでは答えにたどり着けないのかもしれない。
誰がこの存在を生み出したのか
一部研究者の間では琥珀化したキングラーは人為的に作られたものではないかとの見解が出ている。
単なる進化や突然変異で説明できない構造、そして記録の残らない消失をしたにも関わらず繰り返される目撃情報。
それらの要素を組み合わせていくと意図的に配置された個体だった可能性が浮かぶ。
もしこれが、研究施設や特定の集団による実験であったならば事件の一部始終が記録されていないこと自体が計画の一環だったとさえ思われる。
もしくは想定外のタイミングで発見されてしまったため、苦肉の策として隠しながらナニカを行っている結果、今も目撃されているのかもしれない。
《琥珀化》が意味し、目指すモノがなんなのか。
それがわかる日はまだ遠いのかもしれない。
構事件録
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