【未解決】禁断のセレス砂丘

発生日時:2011年9月
発生場所:オーレ地方・セレス砂丘
関与ポケモン:ナックラー(1体・野生)


【未解決】禁断のセレス砂丘

2011年9月、オーレ地方《セレス砂丘》で星空観賞の夜間ツアーに参加していた旅行者が行方不明となる事件が発生した。

最初の異変は流れ星を見て歓声を上げていた群衆の中に紛れるように小さく短い悲鳴が聞こえ、近くにいた者達が声のした方へ視線を向けると折り畳み椅子の横に水筒と上着と靴がそのまま置かれた状態でそこにいたはずの人だけが消えていることに気がついた。
騒ぎを聞きつけたツアーガイドの内一人が現場を確認すると直ちに他のガイドを呼び寄せ、周囲にいた参加者を小さな組に分け、互いの距離と目視の範囲を保ったまま扇状にライトを振るよう指示し、斜面のくぼみなどを照らしながら呼びかける事となった。

現場から離れたエリアにいた参加者達も徐々に不安に駆られざわつく中、数人が《ナニカ》光る物体を目の端で捉えたためそちらにライトを向けると強烈に反射する濡れた金属の板を思わせる銀色に輝く《ナニカ》が群衆から数メートル程離れた砂丘に佇んでいるのを発見した。
直ぐ様大声でガイドを呼び寄せたがその声に反応したのかガイドが駆け寄るより早く一瞬で姿を消し、《ナニカ》がいた砂丘を確認しても何の痕跡も発見されなかったという。

手掛かりが途切れたまま範囲を改めて探るうち、二度目の短い悲鳴が闇に吸われ、探索班の一部である十数人が丸ごと同時に消え去ったため、危機的状況であると判断した残りのガイドは捜索及びツアーをただちに中止し、全員を一箇所に集めて外側に向けてライトを重ね、衛星電話で救助を要請し周囲を警戒することに徹底した。
その後ツアー参加者は救助隊が到着する夜明けまで誰一人として空を見上げる事なく、周囲の砂面だけを見張る体勢を保ち、風で斜面がさざ波のように小さく揺れる度に恐怖に震えた。
救助隊と捜索専門のポケモンレンジャー隊が到着すると参加者は列をなして車両に乗り込みその場を後にし、現場に残った専門家達により調査と捜索が行われたが行方不明者は誰一人として発見されなかったという。

捜索開始から十数時間を迎えた夕刻、一時撤退の準備を行っていた所、砂丘の斜面の縁で銀色に光る《ナックラー》が目撃され、追跡を試みようとしたものの数歩近づいただけで一瞬で姿を消し、確認された地点を見ても一般的に見ればなんの痕跡も見つからなかったがポケモンの生態に詳しく捜索のプロであったレンジャー隊のリーダーはその場の砂を掘り返した後に【目にも止まらぬ速度で砂に潜り、その後潜った形跡を後ろ足で完全に消してから深く潜って場所を移動している】という事を発見した。
これにより昨晩目撃された《銀色に輝き姿を消したナニカ》ナックラーであることが断定され、行方不明者達も砂の奥に埋められている可能性が高いと考え、翌日改めて重機を取り入れて現場周辺を掘削する事となった。

するとおよそ8メートル程掘り進むと砂の中からは《ランプ》《折れた眼鏡の枠》《金属製の留め具》《布片》《携帯端末》などがまとまって見つかったが人骨や遺体などは1つとして見つからなかったという。
また、発見された繊維は触れただけで崩れ、金属は孔食で薄くなっており、皮革は乾いてボロボロに割れており、いずれも一日しか経過していないにも関わらず後の鑑定では全て《100年以上》砂に埋れていたものであると判断され物議を醸した。

その後セレス砂丘を複数回にわたってレンジャー隊により巡回されたがその都度《銀色のナックラー》は遠目に目撃されており、レンジャー隊が距離をあけていた際に再び姿を消すという現象が発生したことにより、関係機関はセレス砂丘の立ち入りを全面禁止とし、外周の通行も制限することを決定した。
以降、セレス砂丘はセンサー等での記録を継続しているが、配置機器はたびたび《ナニカ》に破壊されており近年では記録を行うことすら禁止事項とされている。

未だ行方不明者の手掛かりは存在せず、《銀色のナックラー》も1体のみなのか、複数体いるのかも確認できぬままセレス砂丘は死を招く完全に未知の領域へと変貌した。
旅するトレーナーが訪れる事は勿論なく、上空を飛ぶことすら忌避するためセレス砂丘が今どのようになっているのかは誰にもわからないという。

――文・【ソフィア・ロペス】(オーレ砂丘保安隊調査班)


【管理人の考察】

銀色のナックラー

一般的にナックラーは砂に溶け込むような土色の体色を持つが、ここで目撃された個体は光を反射するほどの銀色という異質な存在だった。
これは単なる突然変異ではなくセレス砂丘という環境に長く適応する過程で鉱物質を体表に取り込み、表層が金属光沢を帯びたのではないかとも考えられる。
もしくはセレス砂丘に迷い込んだ通常のナックラーセレス砂丘に存在する《ナニカ》と結びついた結果としてあのような姿になった可能性もあるのではないだろうか。

砂へ埋める目的

目撃証言では人々が次々に砂に取り込まれるかのように消えたがもし《銀色のナックラー》がこれに関与していたとすれば、それは縄張りを荒らされたことに対する防御行動、もしくは狩りであったとも解釈できる。
しかし防御にしては規模が大きく、狩りとしては明確に捕食した形跡もないため、むしろ人間を砂の奥に閉じ込める事そのものが目的だった可能性も考えられないだろうか。
そうすることによってセレス砂丘自体を立ち入れないようにし外部から隔絶しようとしたかのようにも見える。
その場合、もしかしたら《ナニカの命令》に従った行為であった可能性も排除できない。

犯人は本当にナックラーだったのか

一番の問題はこの一連の現象が果たしてナックラー単体によるものなのかどうか、そしてそもそもナックラーが砂へ引きずり込んでいたのかどうかではないだろうか。
《銀色のナックラー》の姿は幾度も確認されているものの、人が消失する瞬間はおろか、消失する際に側にナックラーがいたのかさえ確認されていない。
仮にこれらがナックラーではなく別の《ナニカ》が背後に存在し、ナックラーはその影響を受けた媒介、もしくはその《ナニカ》から人々を守ろうとしていたのであったとすればどうだろうか。
ナックラー自身はただ砂丘を守る役割を担わされており、本来の目的は異なる存在の行動を補完していた可能性も十分に考えられる。

100年分の劣化の謎

最大の不可解さは発見された遺留品の状態だ。
1日しか経過していないにも関わらず、鑑定では《100年以上の風化》が確認された。
これが意味するのはセレス砂丘の地下に通常とは異なる時間の流れが存在するということかもしれない。
あるいはセレス砂丘自体が別次元と接しており、そこから引きずり込まれた物が持ち込まれているとも考えられないだろうか。

つまり遺留品は《今回の行方不明者》のものではなく、《過去、あるいは別空間にいた人物》の所有物であった可能性もある。
もしそうならば行方不明者たちは《次元の裂け目》のような領域へ放り込まれたことになり、それすなわち彼らの生死すら通常の尺度では測れない。

この事件において《銀色のナックラー》は単に人間を襲った存在というより、砂丘と異界を繋ぐ境界の象徴のような存在だったのではないだろうか。

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