【未解決】アカツキ号の記録

発生日時:1887年6月
発生場所:ホウエン地方・キナギ沖海底遺構
関与ポケモン:ジーランス(複数・野生)


【未解決】アカツキ号の記録

1887年6月、ホウエン地方南西部のキナギ沖にて深海調査隊6名が任務中に行方不明となるという異常事態が発生した。
当該調査は数世紀前から語り継がれていた《海底の石棺》と呼ばれる未確認遺構を調査するもので、当時最先端の新型潜水艇《アカツキ号》を用いて水深500メートルに達する深海帯に初めて人員を派遣したものだった。

乗員は指揮官【アサクラ・リキオ(42歳)】、副操縦士【ナダ・ジュンペイ(33歳)】、技師【キタノ・トウゴ(29歳)】、記録係【サエキ・レイ(27歳)】、通信士【ミヤノ・シンジ(30歳)】、生物学者【オノデラ・ユイチ(34歳)】、ポケモン学者【カザマ・ショウタロウ(32歳)】の計6名。

 

アカツキ号は6月9日早朝にキナギ港を出港し、正午過ぎに調査海域へ到達。
潜航を開始してから数十分後、【海底に円形の構造物を確認した】という通信が入った。

歓喜の声とともにさらなる調査を続けているとその10分後、妙なノイズが通信に入り交じるようになる。
ノイズが走る中『…から…語りか…る…これは……の言葉だ』といった断片的にカザマ・ショウタロウが報告したのを最期に通信が完全に途絶えた。

それからおよそ40分後、唐突に通信が繋がった。
しかし管制室の声は潜水艦に届いていないようで呼びかけには応じず、ひたすらミヤノ・シンジが繰り返しSOSを叫び続けていた。
ミヤノの声は引き裂かれるような絶叫で、やがて意味をなさない発語へと崩れていき、最後に『見えた!!見えた!!』という叫び声が記録され完全に沈黙した。
なお、後の調査で音声を再確認した際に叫び声の横でノイズの入り混じった誰かの声で【更に深く、共鳴の先へ】と繰り返し呟かれていた事が判明している。

 

その後、複数の救助艇がキナギ港から出動し3日後にようやくアカツキ号の引き上げが完了した。
調査艇は不思議と損傷もなく外殻にも浸水の痕跡はなかったが、艦内には《誰一人として乗っていなかった》

艦内に設置されていた映像記録装置は潜航直後から撮影されており、通信にあった通り《円形の構造物》が不鮮明ながら捉えられていた。
それは巨大な石造りの環のようなもので、一部が崩れているものの形を保っており、表面には削り込まれたような模様があり、その中心は底が見えない程暗く深い穴が開いていた。
映像が進むにつれて複数の未確認の深海魚類に混じって無数の《ジーランス》が映り込んだ。
ジーランスたちは円形の構造物の周辺をゆっくり泳いでいたが、徐々にアカツキ号に向かって移動してくるのが確認された。
それ以降、映像に他の生物が映ることはなく、記録される映像のほとんどがジーランスの群れで占められるようになる。

画面には光に照らされた無数の鱗が揺れ、ジーランスたちが一定の間隔を保って円を描いて漂う様子が繰り返し記録されていた。
そして映像の最終記録には薄く漂う泥の奥、ジーランスたちの群れのさらに向こう側に明確な輪郭を持たない《巨大なナニカ》が映り込んでいた。
近くを漂うジーランスから推測するにそれは優に《20メートルは超える巨体》で、光が吸い込まれるような漆黒で微かに脈動しているように見えた。
カメラの焦点はその存在を捉えようと数秒粘るが突如として記録が強制終了され、以降の映像は破損しており詳細は不明となった。

アカツキ号の内装や制御装置に細工された形跡はなく、脱出の痕跡もなかった。
調査隊の失踪以降《海底の石棺》と呼ばれる遺構は現在立入禁止海域に指定されている。
また、記録装置に最後に映されたジーランスの群れの中に映った《ナニカ》について公式発表も行われないまま捜査資料はほぼ全てが閲覧不可となっている。

――文・【クボ・サツキ】(ホウエン海洋観測局記録課)


【管理人の考察】

円形構造物の用途

アカツキ号が最初に確認した《円形の構造物》は誰がいつ何のために作ったものだったのか。
崩落の跡がありながらも未だ整然と形を保っており、生物の少ない深海にも関わらずジーランスが群れる程いるというのは異常であると感じる。
あれは単なる遺構ではなく祭壇のようなものだったのではないだろうか。
古来より封印や供物の場として円が用いられる文化があるが、そうした信仰や儀式の残滓がホウエンの海底にも沈んでいたのではないだろうか。

通信に残された《ナニカ》の存在証明

カザマ・ショウタロウが通信の中で断片的に発した報告は単なるノイズ混入以上の意味を持っているように感じる。
音声では聞こえなかったが、その場に【語りかけてくるナニカ】が存在したとすればそれは通常の生物的ではあり得ない存在がいたという証拠になる。
そしてミヤノ・シンジが最後に『見えた!!』という絶叫と共に通信が途絶えたのは人間のキャパを超える《知覚を超えた存在》との接触を示しているのではないだろうか。

《ジーランス》の役割

記録映像に映った大量のジーランスたちは単なる深海の生き物としての枠を超えていた印象がある。
彼らは《円形の構造物》の周囲を規則正しく泳ぎ、群れをなして一定の間隔で円を描き、やがて潜水艇へと接近してきた。
この行動はまるで深海に眠る《ナニカ》の覚醒あるいは《共鳴》を引き起こすための《儀式の一部》だったのではないだろうか。

古代より変わらぬ姿で生きるジーランスたちが何らかの役割を持ってこの場に集っていたとすれば、そこには計り知れない意志が関わっているのかもしれない。

謎の言葉に隠された意味

ミヤノの絶叫の背後で囁かれていた【更に深く、共鳴の先へ】という言葉。
これは誰の声なのかすら判然としないし、録音機器の誤作動では説明しきれない明確な意志が感じられる言葉だ。
《共鳴》という単語が使われている点から《円形の構造物》ジーランスたちの行動と何らかの反応が発生していたのではないだろうか。
これは《ナニカ》からの誘導、もしくは《ナニカ》を起動させる鍵だったのかもしれない。
この言葉を最後に映像が破損し記録が途切れているのも偶然ではないように思えてならない。

巨大な《ナニカ》の正体

映像の最終盤に捉えられた《巨大なナニカ》とそれを囲うように漂うジーランスの群れ。
そこには《捕食者と被食者》というような生態系の関係性は感じられず、むしろ《従属や信仰》に近いものを感じた。
この存在が意図的に人間を排除したのか、あるいは姿を見せただけでさらに別のナニカが関与していたのか判断はつかない。
ただ確かなのはこの《巨大なナニカ》は偶然そこにいたのではなく、《明確な意志を持ってそこにいたということだ。

今なお立入禁止区域となっている事実がその存在を雄弁に物語っている。
もしかしたら《巨大なナニカ》正体が既に判明しているのではないだろうか。

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