発生日時:1975年6月8日
発生場所:シンオウ地方・クロガネ山中
関与ポケモン:ピクシー(1体・野生)
【未解決】星と隠れた者たち
1975年6月8日、シンオウ地方【クロガネ山】で地元大学の天文サークルに所属する学生4名が突如として姿を消した。
彼らは10日前から山中に滞在しており、山の中腹にキャンプを設営しながら夜ごと星空の観測を行っていた。
最終日の夜、連絡が途絶えたのを不審に思った家族の通報により翌朝から大規模な捜索が開始された。
捜索から十数時間が経過しあたりが暗くなってきた頃、キャンプ予定地から北東へ数百メートル離れた樹林帯でテントを発見した。
不可解だったのは遠く離れた場所にあったことだけではなく、およそ10メートルの高さにある複数の木々の間に《逆さに吊るされるように》が浮かんで存在していた事だった。
テントはロープで結ばれておらず、重力に逆らうかのようにテントの形状を保ったまま静かに佇んでいた。
付近に落下物や足跡はなく、呆然と見上げながら近づいていくと、そのすぐ傍にある岩場の上で《ナニカが光り、動いている》事に気がついた。
それは1体の《淡く光るピクシー》だった。
ピクシーは誰に見せるでもなく、目を閉じ朗らかな表情で腕を広げ、円を描くように舞い、空を仰いでいたという。
発見者がその姿に言葉を失っているとピクシーは徐々に踊りを辞め、こちらを一度だけ振り返り、ふわりと宙に舞って木々の間に姿を消した。
その後の捜索でもピクシーは二度と姿を見せず、行方はわからないままになっている。
残されたのは空中のテントのみだった。
到着した他の捜索隊とともに慎重に地上に降ろして中を確認すると、人の姿はなかったものの《寝袋、観測用機材、複数の星図と手記、未現像のフィルム入りカメラ》などが入っていた。
それら全ての表面にはうっすらと《銀白色の粉末》が付着しており、まるで重力の影響を受けないかのように羽のように軽くなっていたという。
粉末は小さいながらもボンヤリと明るくなるくらい煌めいてたが、手に取ると途端に輝きを失い霧散していった。
後日、これが《ピクシーが放出する妖精粉》だったのではないかいう憶測がたてられたが確認する術はなかった。
また、現場に残されていた観測ノートには事件当日の星図が未完成のまま残されていた。
ページの端には鉛筆で書かれた走り書きがあり、そこにはただ一言『星がない』と記されていた。
その後さらに捜索範囲を拡大したが遺留品以外に学生たちの痕跡は何一つ見つからなかった。
だが、後日の聞き込み調査で事件当日の深夜に同じクロガネ山の南側斜面に滞在していた登山者が次のような証言を残している。
『夜中、地響きのような空気の振動を感じたんです。
あたりを見渡したら空の一部がまるで《くりぬかれた》ように真っ黒だった事に気づきまして…
星が見えないとか雲がかかってるとかそんなんじゃなく、本当にこう、ぽっかりとそこだけ《なにもない穴》が空いてるような…』
大まかな位置から推測するとそこはまさに学生たちがキャンプを張っていた地点の真上だったという。
この証言は当時ただの見間違いや錯覚と処理されたが近年になって一部の研究者の間では《ウルトラホール》の発生を疑う声が挙がっている。
ウルトラホールは極めて稀に空間そのものが歪み、異なる世界と繋がる現象とされ過去にも類似の未確認事例がいくつか報告されている。
あの夜4人は空に吸い込まれたのか、あるいはどこかに連れ去られたのか。
踊るピクシーは何かを招いていたのか、それとも見送っていたのか。
答えを知る者は今も暗い山中で踊っているのかもしれない。

――文・【ミナミ・サユリ】(シンオウ異常事象記録班)
【管理人の考察】
空に現れたナニカ
テントに残された【星がない】という走り書き。
彼らは《星があるはずの場所が消えている》のを目撃した時に、そこに他にも《ナニカ》がいたのだろうか。
もしかしたら彼らは星を観測していたのではなく《彼ら自身がナニカに観測されていた》可能性も考えられる。
数日かけて《ナニカ》の準備が整ったのか、怒りを買ったのか、理由はわからないが《観測者》が直接関与してきたのかもしれない。
そしてその時ウルトラホールが発生し《扉が開いてしまった》ではないだろうか。
果たして彼らは何を目撃し、関わってしまったのだろうか。
舞うピクシー
ピクシーやピッピは元々人前に滅多に現れず、気配を悟られると即座に逃げ去る性質を持っていると知られている。
そんなビクシーが茂みを歩み進んでくる人の事を気にすることもなく堂々と踊り続けていた。
誰かに見せるためでも誰かを呼ぶためでもなく、《ただ舞っていた》と感じさせるソレはは得も言われぬ異質さがある。
もしかしたらピクシーは既に《連れ去られた者達》を見送っていたのではないだろうか。
そして見送りが終わるとともに人間を一瞥して静かにどこかへと消えていった。
その一連の所作にはある種の儀式的なものを感じる。
それ以降一度たりともピクシーは目撃されていないことから、《扉の向こう側》へ消えていったのかもしれない。
異空間を形成していた可能性
テントはロープに支えられることもなく10メートルの高さで逆さに浮かんでいた。
物理的に不可能な状況だがここで焦点になるのはテントの中にあった物品すべてが《重力を感じない程軽くなっていた》という点だ。
そしてその全てに妖精の粉のようなものが付着していたことからこの異常性の鍵となるのは粉なのはほぼ間違いないと思う。
もしかしたらこの粉末は《重力からの開放》ではなく、《別の物理法則への接続》を示唆していたのではないだろうか。
つまりテント内の空間はもはやこの世界の法則では捉えきれない《ナニカ》に接していたのではないか。
そしてその場で舞を続けていたピクシーもやはり深い関係性があったのではないかと思う。
古来より妖精と呼ばれる存在が人間の知覚を逸脱した場所へと導く話しをよく聞くが…
ピクシーはやはりこの星由来のポケモンではないのかもしれない。
消えた4人と《空の穴》
登山者による《空の穴》の目撃証言はこの事件における最大の鍵かもしれない。
ナニカ大きな者が浮かんでいたのか、本当に巨大な穴のような空間が生じていいたのか。
それすら確認する術が残されていないのがなんとも歯がゆい気持ちにさせられる。
彼らは恐らく観測地点の真上に現れた《ナニカ》をハッキリと目撃したのではないだろうか。
偶然通りかかったのか、引き寄せられたのか、あるいは《選ばれた》のかは分からない。
ただ1つ言えるのはあのテントが《空の穴》の痕跡として宙に残された唯一の物証だったということ。
4人の学生は今どこにいるのか。
私たちの知らない空の裏側、あるいは《ウルトラスペース》のどこかで未だ彷徨っているのではないかという考えがどうしても頭を離れない。
構事件録
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