発生日時:2022年9月
発生場所:パルデア地方・デルク火山
関与ポケモン:ジヘッド(1体・野生)
【解決済】双頭の影
2022年9月、パルデア地方南部《デルク火山》の西側斜面に位置する旧鉱山跡で複数の遺体が発見された。
かつて鉱石採掘に使われていたこのトンネルは長らく閉鎖されていたが、近年になって歴史保存団体によって調査が進められていた場所だった。
初めは崩落事故の可能性が疑われたが、後の検視と現場分析によって被害の原因は明らかに別のものであることが判明する。
それは、暗く封じられていた地下でひっそりと生き続けていた《あるポケモン》の存在だった。
犠牲となったのは採掘会社の元作業員たちを中心に結成された保存活動団体のメンバーで、彼らは廃坑道内に残る設備や記録を調査・保全するため定期的に立ち入っていた。
この日も数週間かけて調査活動を行っていたが、現地組との連絡が途絶えたため消防と調査班が派遣され、その日の午後に坑道内の第4層中央部で3人の遺体を発見。
彼らの体はいずれも強い力で引きちぎられており、現場には血痕が広がり、破壊された機材とねじ曲がった鉄骨が散乱していた。
検視の結果、死因は崩落による圧死ではなく、鋭利な牙による咬傷と《噛みつかれながら引きちぎられ》、それに起因する内臓損傷であった。
その後現場に残されていた痕跡を詳しく調査した結果、通常より大型な《ジヘッド》のものと断定された。
ジヘッドは本来、森林や山岳地帯を回遊しながら生息するが今回確認された個体は採掘作業の停止以降人の目が届かなくなった坑道の奥深くに長期間棲みついていたとみられる。
この個体が巨大化し、攻撃的というには過剰なほど異常な行動を取るに至った背景には坑道内で成長した影響が高いと専門家は推測している。
その後改めて坑道内を調査した際に突如として地響きがと共に天井岩が崩れ落ち隊員2名が重傷を負った。
崩落直後、坑道の奥から奇声を上げながら一際巨大なジヘッドが走ってきたが、そのまま隊員達には目もくれず坑道の入口の方まで駆け抜けていった。
入口にいた隊員を突進で蹴散らした後、ジヘッドはそのまま火山北側の断崖地帯へと姿を消した。
以降、現在に至るまでジヘッドの再出現は確認されていない。
事件を受けて自治体は坑道一帯に封鎖措置を施し半径3キロ以内を立入制限区域に指定。
現在、坑道入口には犠牲者の遺族によって慰霊碑が建立されている。

――文・【エステバン・カレーニョ】(パルデア地方地底危機調査局)
【管理人の感想】
閉鎖された旧鉱山で起きたこの事件には長く見過ごされてきたものの重みと人の手が届かない空間で《ナニカ》が変質してしまう恐ろしさがあったと感じる。
犠牲者たちはいずれも地元の保存活動団体の人間であり、金銭的な利益ではなく地域の記憶と歴史を守るという純粋な目的で立ち入っており、彼らがそこで遭遇したのはただ棲み処を得て生き延びてきた存在だったという事実が重くのしかかる。
長期間閉ざされた空間で野生ポケモンが巨大化し、行動まで変化するという現象自体は過去にもいくつか例が報告されているがここまで攻撃性が極端なケースは珍しいのではないだろうか。
逃走時に周囲の人間を完全に無視して突進したという記録もまた、この個体が何らかの強い恐怖や執着によって行動していた可能性を示唆しているように思われる。
崩落と出現のタイミングが偶然ではなかったとすれば閉じ込められていた存在がようやく出口を見つけて駆け抜けたという見方もできるのではないだろうか。
慰霊碑の存在が語りかけてくるのは封鎖によって忘却されるべき過去ではなく、人の営みの中で静かに変化していく自然や環境への責任の在り方ではないだろうか。
構事件録
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