【解決済】山を背負うもの

発生日時:1925年2月
発生場所:ヒスイ地方・天冠の山麓鉱山跡
関与ポケモン:イワパレス(1体・野生)


【解決済】山を背負うもの

1925年の冬、ヒスイ地方《天冠の山麓》に位置する大規模な鉱山で連続する不可解な死亡事故が発生した。
犠牲となったのはいずれも地下坑道で採掘作業に従事していた鉱夫たちで、その遺体は《ナニカに押し潰された》ように変形していたと報告されている。
鉱山を運営していた鉱業組合は当初、落石の可能性や坑道の老朽化を疑い複数の技師と管理者を派遣して内部の調査を行った。

しかし、現場付近では落盤どころか落石の痕跡すら見つからず、報告書には《異常なし》との記録が残されている。
その後作業員の一部は恐怖から辞職し、現場に残った者たちの間でも《絶対にナニカがいる》といった証言が囁かれるようになるが、管理者側は《集団心理による過剰反応》としてこれを黙殺した。

だが翌月、坑道の最深部で大規模な岩盤崩落事故が発生。
作業中だった鉱夫十数名が巻き込まれ、地層の奥深くへと埋没。
外部からの応援と機材を導入しても岩盤の強度と危険性から進入は不可能とされ、救助を断念することとなった。
この事故をもって《天冠鉱山》は閉鎖され、坑道の入り口にも関係者以外立ち入れないよう厳重な封鎖措置が施された。

その後数年に渡り改めて現地を調査する動きもあったが、崩落箇所の不安定さと安全確保の困難さから繰り返し断念される事となった。
それを受けて天冠鉱山《人的被害が拡大する恐れがある》として完全な立ち入り禁止区域に指定され、鉱山は静かに歴史から姿を消し、封鎖されたまま数十年が経過した。

 

時は流れ、1998年5月11日、登山と写真を趣味とする1人の男性がテンガン山を訪れた。
彼が旧天冠鉱山の上方に位置する尾根道から、かつて鉱山の作業ヤードが広がっていた崖下を何気なく望遠レンズで覗いていた時、奇妙な動きをとらえた。
それはまるで山肌が動いたと錯覚するほどの、山そのものを背負ったかのような《超巨大なイワパレス》だった。

通常のイワパレスとはかけ離れたその巨体は、崖下の斜面を悠然と移動していた。
撮影者はとっさにシャッターを切り、後日現像した写真を地元新聞社に提供。
これが複数のメディアに取り上げられ、イワパレス《テンガン鉱山の主》として一躍脚光を浴びることとなる。

ただし、現在でも旧鉱山跡の崖下は封鎖されており、尚且つあまりに巨大であるため近づくことは極めて危険とされている。
観光ルートも鉱山を見下ろせる崖の上など、遠景から見て回る形で整備されており、そのルートでさえ立ち入りには地元自治体の許可が必要となっている。
また、必ずイワパレスが表にいるとは限らないため、高い金額と許諾を得て訪れてもイワパレス自体を目撃できないまま終わることも多々あった。
しかしそれでも【目撃すると幸運が訪れる】として多くの観光客が訪れるようになった。

イワパレスは遠くから人の姿を見るとゆっくりとその場を離れることもあるが、縄張りに入らない限り積極的に襲う様子はないという。
未だにその生態は詳細不明で、いつどこに現れるのかも予測できないが、今も毎年数十件の目撃報告と鮮明な写真や映像が収集されている。

 

あの冬、坑道内で起きた奇怪な死亡事故。
封鎖された坑道の奥深く、ただ一人何十年もイワパレスはそこに棲んでいたのだろうか。
そしてそれは果たして自然が生んだ偶然の産物なのか。
それとも当時の《ナニカ》が意図して生み出したものなのか。

――文・【ナギ・ロジュール】(ヒスイ自然誌記録室)


【管理人の感想】

封鎖された鉱山の奥で長い時を超えて存在し続けていたという超巨大なイワパレスの存在は静かで重たい恐怖をまとっている。

今となっては直接的な攻撃や脅威を見せるわけでもなく《ただそこにいる》というのがある種不気味で、鉱夫達のあの異様な死因を想起させる。

何も語らないまま風景と同化し、人が去った場所で誰にも知られずに成長し続けていた存在。

しかしそれが、自然発生したものなのか《ナニカにより生み出されたのか》がわからないのがまた恐ろしい。

現在、イワパレスがただ生きているだけで害があるわけではないが、実態がわからないままそれを《観光用資源》として扱うことの無神経さも少し怖くなる。

ナニカが今もその場にいるかもしれなくて、そんな場所にまた人間が踏み入れてしまったことで、《別の歪み》が始まってしまっていないか…それだけが気がかりである。

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