【解決済】狂気の夢喰い

発生日時:2011年7月9日
発生場所:ホウエン地方・カイナシティ
関与ポケモン:スリープ(3体・野生)
関与人物:コバヤシ・サキ(大学生/逮捕)


【解決済】狂気の夢喰い

2011年7月9日、ホウエン地方のカイナシティで異常な昏睡事件が発生した。
事件の舞台となったのは大学生【コバヤシ・サキ(21歳)】のアパートの一室だった。

コバヤシはSNSを通じて知り合った若者たちを自宅に招待しオフ会を開催した。
参加者は全て女性で、大学生を中心に数名の高校生や中学生を含む7名が集まった。
その夜彼女らはコバヤシの部屋で飲み物を片手に好きなドラマや映画の話しなどで盛り上がる…はずだった。

最初に異変に気づいたのは中学生の少女【カトウ・ナナ(仮名・当時14歳)】の両親だった。
娘が朝になっても帰宅しないことを不審に思った母親が警察に通報し、事前に娘から聞いていたコバヤシの住所を伝えた。
駆けつけた警察が部屋を開けるとそこには異様な光景が広がっていた。

床に87名の女性たちが倒れ込み、皆一様に悪夢に苦しむように魘され、震えていた。
さらに部屋の中央には《スリープ》が3体集まり、今まさに参加者たちの《夢を喰らっている》最中だった。
入口付近に倒れていたコバヤシ・サキは軽度の昏睡状態にあり、警察によってすぐに目を覚まされた。

 

事件の発端はコバヤシの歪んだ欲望にあった。
調査の結果彼女はスリープ《夢を食べる能力》に着目し、《夢を食べたスリープがその内容を自分の夢に投影してくれるのではないか》と考えたという。
その考えに取り憑かれた彼女は事件前夜にスリープを捕獲し自らの部屋に監禁し準備を整えた。
そしてSNSで知り合った参加者たちを集めると、彼女らに《規定量を遥かに超える量の睡眠薬》を混ぜた飲み物を飲ませ眠らせた。

全員が眠りについたのを確認するとコバヤシは監禁していたスリープ達を解き放った。
スリープ達は当初怯えていたが、コバヤシが何もしてこないのを確認すると横たわる彼女らの夢を貪り始めた。
その後、コバヤシ自身も眠りについたという。

だが、スリープは夢を食べることはできてもそれを他者に伝える能力は持たない。
結果としてスリープたちが貪り続けた夢の内容は彼ら自身の中で消化されるだけとなった。
一方で参加者たちは長時間に渡り夢を喰われ続けたことで脳が異常な負荷を受け、深い昏睡状態に陥ったという。

参加者の2名はその日のうちに、4名は数日後に意識を回復した。
だが全員《眠ろうとすると悪夢が蘇る》と訴えており、長らく心理的後遺症を抱える事となった。

そんな中、最も重篤な状態に陥ったのは中学生のカトウ・ナナだった。
発見当時彼女は唯一目を見開いて硬直した状態で小刻みに震えており、即座に病院へ搬送されていった。
最善の治療を施したが彼女の脳は深刻なダメージを受けており、医師の診断の結果《脳死》と判定された。
その後カトウ・ナナは病院の集中治療室に収容され、生命維持装置によってかろうじて生存しているという。

 

警察の取り調べに対しコバヤシは冷静な態度を崩さずにこう語った。

『私とあんなにも気の合う人が沢山いるのが嬉しかった。
でもどこまでが本心なのかいつも不安だった。
夢なら嘘はつけないはずだから、同じ夢を見るならやっぱり同じなんだって安心できると思った。
スリープに夢を奪われたのは本当に悔しいけど…
でも、きっと同じ悪夢を同時に見れたからこれはこれで良かったかなって思ってるの。』

その発言には罪の意識も後悔の念も一切含まれていなかったという。
精神鑑定の結果コバヤシ《精神的に正常》と判断され刑事責任能力があるとされた。
彼女は収監後も終始【またみんなと一緒に夢をみたいな】と呟き続けたという。

 

事件後、警察によって捕獲されたスリープ達はポケモン保護施設へと送られた。
スリープ達は薬物で昏睡させられた人の夢を食らい続けた影響で通常の夢では満足できなくなり、一種の依存状態に陥っていたという。
終始精神的に不安な状態に陥り、激しい身体の震えや発汗に加え、唐突に叫んだり自傷行為をするようになった。
保護施設にいる医療スタッフの介入とサポートを受けながら長い年月をかけて治療が実施されていき、今では通常の生活を施設内で送れているという。

だが、時折虚ろな目で遠くを見つめながら数時間ほどボーっとすることがあるらしい。
どんなに治療を受けても、一度覚えた味は彼らの記憶から消えることはきっとないのだろう。

――文・【タニグチ・シノ】(ホウエン事件調査班)


【管理人の感想】

学者でも専門家でもなく、長年スリープを相棒として時間を過ごしたわけでもない。
そんな《ほぼ何も知らない状態》でコバヤシの勝手な《勘違いと思い込み》により多くの若者たちが心身共に深い傷を負った。

特に中学生の少女が脳死状態に陥ったという事実は重く心にのしかかる。
一緒に楽しむはずだった時間が一瞬にして《悪夢》へと変わり、家族含め今も《悪夢に閉じ込められて》いる。
彼女の家族の気持ちを思うと胸が締めつけられるような思いになる。

事件に利用されたスリープたちのことも忘れてはならない。
彼らはただ目の前の夢を食べ続けただけであり、その行為がどれほどの悲劇を生むかなど知る由もなかった。
さらに薬物投与された夢を貪り続けた結果、通常の夢では満足できなくなり依存状態に陥ったという事実は痛ましい。

 

コバヤシは取り調べの際にも自らの行動に一切の罪悪感を感じていないようだった。
彼女らの人生を壊しておきながら【またみんなと夢を見たい】と呟くその姿には寒気すら覚える。

SNSで繋がっただけの相手に対して行き過ぎた執着がコバヤシを狂わせてしまった。
もしくは彼女は初めから狂っていたのだろうか。
彼女が自由の身になった時、今度は何をしようとするのか…
考えるだけでゾッとする。

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