【解決済】闇夜の宝石泥棒

発生日時:2016年7月〜8月上旬
発生場所:カロス地方・ヒヨクシティ宝飾通りおよび裏通り排水路
関与ポケモン:ヤミラミ(野生)


【解決済】闇夜の宝石泥棒

海風が吹き抜ける港町【ヒヨクシティ】のシーサイドエリアには、煌びやかな光に彩られた《宝飾通り》がある。
高級宝石店が軒を連ねるこの通りは連日観光客で賑わう街の象徴の一つだ。

だが2016年の初夏、そんな平穏な通りを揺るがす《奇妙な連続盗難事件》が発生した。

 

きっかけは、宝飾通りで長年営業を続ける老舗宝石店【Le trésor aimé d’un chaton(ル・トレゾール・アメ・ダン・シャトン)】、通称【ル・シャトン】からの通報だった。

開店準備のため店内に入ったスタッフが目にしたのは、鍵のかかったままのガラスケースの中が空っぽになっているという異常な光景だった。
防犯カメラには誰も映っておらず、店内のアラームも未作動。
翌日には通りの別の2店舗でも同様の被害が発生し、いずれも窓や扉には破壊の痕跡が一切ないという共通点があった。
また、盗まれたのはすべて小粒ながら高品質な宝石類のみで、《金やプラチナなどの貴金属類》には一切手がつけられていなかったという。

これらの痕跡のなさと選別の偏りから、警察は《人間による窃盗ではない》可能性に目を向けた。
とはいえ、有力な手がかりは何ひとつ掴めぬまま、事件は不気味な沈黙の中で続いた。

 

転機が訪れたのは、7月下旬の朝。
地元の中学生が裏通りの排水路付近で、光るものを見つけたと通報したのがすべての始まりだった。

現場には、小さく古びた《木箱》が置かれており、その周囲には事件で消えたとされていた《ルビー》《サファイア》《トパーズ》などが複数散らばっていた。
さらに箱の外側には、細い爪で彫られたと思しき奇妙な模様と、雑な筆跡で描かれた地図のような線が残されていた。

警察はこの発見を受けて、裏通りおよび側溝周辺に高感度の監視カメラを複数設置。
その結果、8月3日未明、ついに犯人が映り込んだ。

 

時間は午前2時45分。
排水口の格子のすき間からわずかに揺らめく影のようなものが姿を現し、静かに通りを横切っていった。
それは人間の目には捉えられないほど素早く、しかし宝石店の前で止まり、《宝石のように光る目》がギラリと鍵穴を覗き込む様子がはっきりと記録されていた。

その後も影は、通り沿いの複数の店舗の前で立ち止まり、しばらく観察するように動きを止めては、再び排水路へと戻っていった。

この記録から、関与していたのは鉱物を主食とする【ヤミラミ】であると断定された。
当初、店主たちは《盗まれた宝石は全て食べられたに違いない》と落胆した。
だが、その後の再調査で通り裏手に続く排水トンネル内部からさらに複数の木箱が発見される。

それらの中には《紛失した宝石類》がまるで巣の中の卵のように丁寧に整然と収められていた。
保存食にしてもその量は膨大で、宝石類を主食とするヤミラミとしては極めて稀なケースであったという。

おそらくこのヤミラミは、夜な夜な通りに現れては、気に入った宝石を自分の宝物箱に集めていたのだろう。
鍵穴を覗き込む姿からは、空腹を満たすためではなく何かもっと別の感情…
――たとえば憧れや愛着のようなものだったのではないだろうか。

 

全ての宝石が無事に回収され、警察はこの事件を野生ポケモンによる事件とし、人の介入は無いものと判断した。
ヤミラミは事件後、安全な山間部の鉱石帯に移送され専門機関により現在も保護されている。

その後、【ヒヨクシティ】の宝飾通りは、かつての賑わいを取り戻し、観光客たちの目を引き続けている。
遠い山間部では今もヤミラミが宝石のように輝く目をこちらに向けているのかもしれない。

――文・【エイノ・キサラギ】(カロス地方地方紙編集部)


【管理人の感想】

この事件の一連の流れを読んで感じたのは、まるで子どもが宝物をこっそり集めて隠していたような、どこか無垢で切ない愛情の痕跡だった。
ヤミラミが犯行に及んだ理由が食欲ではないのであれば、もしかすると憧れのまなざしで宝石たちを眺めていたかっただけなのかもしれない。

宝石は確かに貴重なもので、人間にとっては価値や所有を象徴する存在だ。
でも、ヤミラミにとってはそれ以上の意味があったのではなかろうか。
静かな夜に誰にも気づかれず、ただひたすらに美しい光を追いかけ…
拾った石をそっと木箱に並べて、《それだけで満たされていた》……
それだけだったのかもしれない。

発見当時、丁寧に集められていたというのも印象的だった。
もしかしたらヤミラミは、自分なりの《宝飾店》を作っていたのかもしれない。
並べられているその姿自体が、憧れの存在だったのかもしれない。

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