発生日時:1983年3月
発生場所:ガラル地方・マインカスタータウン
関与ポケモン:デスカーン(1体・野生)
【解決済】棺に集いし悪霊
1983年3月、ガラル地方の小さな農村《マインカスタータウン》で起きた事件は後に村の住民だけでなく地方全域を震撼させた。
事件の発端は村の学校に通う12歳の少年が自宅へ帰る途中で行方不明になった事だった。
通学路沿いの細い土道の脇には泥にまみれた彼の鞄と教科書、そして水筒が無造作に落ちており、あたりには足跡や引きずられたような痕が不規則に残っていた。
これを見つけた農作業帰りの男性が通報し、警察は即日捜索を開始したがその日のうちに少年の姿は発見できなかった。
だが4日後、村からおよそ30km離れた丘陵地帯にある古い墓地を昼間に訪れていた高齢の女性利用者が地面に半ば埋もれるように横たわった《首と四肢を欠いた胴体》を発見した。
衣服は泥と土にまみれ、切断面は異常な力で引きちぎられたように乱雑だったが動物による食害の痕跡は見られなかった。
通報を受けた警察は現場全域を封鎖し、周囲の墓石や樹木、敷地外の林まで調査範囲を広げた。
そして同日夕方、墓地の別区画で《少年の四肢》が相次いで発見され、それぞれのそばには風化し崩れた石碑の破片が残されていたという。
破片には判読困難な古い文字や文様が刻まれており、その出所は墓地の奥に並ぶ最古の墓群であることが判明した。
遺体を一箇所に集め検証作業を行っていたその時、突如として激しい地鳴りが墓地全体を揺らした。
地面が裂け、中央の大きな石碑が倒れ込むとその裂け目から無数の黒い手を蠢かせながら推定15メートルはある巨大な《デスカーン》が姿を現した。
最も異様だったのはその巨体さ以上に、棺の顔面部には失踪していた少年の顔だけでなく、他にも複数の腐敗した人間の顔や白骨化した頭蓋骨が円を描くように浮遊しており、ゆっくりと回転を続けていたことだった。
周囲の空気は急激に冷え込み、霧が立ち込める中デスカーンの低い唸り声が響き渡ったという。
現場の警察官たちは即座に応戦に入ったが異形のデスカーンは通常個体とは比べ物にならない速度と力で反撃し、影のような手で墓石を容易く砕き地面を引き裂いた。
やがて近隣の港町ロックリッジから応援要請を受けたポケモンレンジャーとたまたま近辺にいた当時のガラルチャンピオンが駆けつけ応戦した。
戦闘は激化し、棺から放たれる光線や無数の手が次々と地面を叩き割り、周囲は瓦礫と土埃で覆われた。
墓地の一部は完全に崩落し、隣接する斜面の樹木も根こそぎ倒れた。
戦闘は1時間以上続いたが最終的にデスカーンを戦闘不能状態に追い込むことに成功。
捕獲されたデスカーンは棺の両脇と下部に分厚い封鎖用の拘束枷を取り付けられ、鎖で複数方向から固定されたまま、夜を徹して護送車両でガラル地方北部にある特殊研究施設へと移送された。
施設到着後、専用の隔離室に収容されたデスカーンは研究班によって慎重に棺の外郭構造を解析された。
外見からも明らかに異形であったその姿は従来のデスカーンとは大きく異なり、金属片のような装飾部位やひび割れた面が複数の層を成していたという。
精密調査の結果、この個体は長年にわたり複数のデスカーンが融合と変質を繰り返した末に棺そのものが互いに飲み込み合い、内部で幾重にも絡み合った状態になっていることが判明した。
また、X線で棺の内部を確認すると層状になった複数の棺の中に異なる年代の装飾品や腐食した銀細工や布切れが折り重なるように詰まっていた。
さらに深部からは人間の頭蓋骨などが点在しており、いずれも異なる時代のものであることが判明。
こうした構造は既存の生態学や考古学的知見では説明がつかず、研究班はこの融合の発端や経過、どの段階で棺内に異物が取り込まれたのかを現在も調査し続けている。
事件収束後、戦闘で荒廃した墓地は自治体と教会の合同事業として数か月をかけて修復された。
地面のひび割れや崩れた石碑は撤去され、土壌を新たに盛り直した上で少年の遺体と共に発見された他の遺骨も丁寧に再埋葬された。
再建された墓標は意図的に華美さを避け、すべて同じ灰色の石板に統一され敷地周囲には鉄製の侵入防止柵が新設された。
加えて、夜間の侵入を防ぐための赤外線監視カメラと動体センサーが複数箇所に設置され、訪問者の出入りは管理台帳に記録されるようになった。
しかしマインカスタータウンの一部の住民は今回の結末に納得しておらず、『墓地の奥深く、まだ掘り起こされていない《別の棺》が眠っているはずだ』と囁き、その存在が再び災厄を呼び込むのではないかという不安が今も薄く漂っている。

――文・【アラン・ブラックストーン】(ガラル異常事件調査班)
【管理人の感想】
マインカスタータウンの墓地で起きた一連の出来事は表面的な被害状況だけでなく地域社会の奥底に長く残る不安を刻みつけたのではないだろうか。
遺体の発見時点で既に通常の事件とは異なる様相を呈しており、切断の痕や遺骸の配置は人為的とも自然災害ともつかない異様さを帯びていた。
さらに、突如として出現した巨大なデスカーンの存在は現場にいた者だけでなく、後に記録を目にした者にも強い衝撃を与えたに違いない。
複数のデスカーンが融合し続けた結果だとされる棺の内部構造は時を隔てた遺物や遺骨が折り重なっており、それぞれが異なる時代背景を持っていたとされている。
これは単に野生ポケモンが偶然遺骨を取り込んだという説明では片付けられず、人間もしくは《ナニカ》との関わりが長期にわたり継続していた可能性を示していると考えられる。
研究機関に収容された後もその成り立ちや経過は明らかにならず地域住民の中には未だ別の棺の存在を口にする者もいる。
戦闘によって墓地は大きく損壊し修復には数か月を要し、鉄柵や監視機器の設置によって表向きの安全は確保されたがそれで全てが解決したわけではない。
物理的な復旧と心の復旧は別の問題であり、事件を直接経験した人々の間には再び同じことが起こるのではないかという恐怖と懸念が残り続けているのが伺える。
この事件は単なる異常個体の捕獲という枠を超え、地域の歴史や記憶の中に長く影を落とす事案となったのではないだろうか。
構事件録
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