発生日時:2009年5月
発生場所:イッシュ地方・ノースベイルシティ
関与ポケモン:ダイオウドウ(1体・野生)
【未解決】地底を歩く巨影
2009年5月、イッシュ地方北西部に位置する人口約28万人の都市《ノースベイルシティ》が突如として未曽有の大地震に見舞われた。
震源は市の中心部にある複合商業施設とその周辺で、縦揺れと長く続く横揺れが同時に発生しわずか十数秒で市街全体を飲み込むような揺れに変わった。
当時この地域は耐震基準が低かったため耐震構造を持たない高層ビルや大型施設の多くが一瞬で崩れ落ちる大災害へと発展した。
塔屋を備えた商業施設は中央から折れるように倒れ、内部にいた数千人が瓦礫の下敷きとなり、周辺のオフィスビルやホテルでも同様の被害が連鎖的に広がった。
街全体が灰色の粉塵に包まれ視界は数メートル先すら見えず、耳を劈くような金属の破断音と建材の崩れ落ちる轟音が交互に響き続けた。
通行中の市民や商業施設内の買い物客は逃げる間もなく、崩落した床や壁に押し潰されるか高層階からの落下によって命を落とした。
主要道路の多くは瓦礫で塞がれ、救急車や消防車が現場へ辿り着くまでに数倍の時間を要することとなった。
ようやく救助活動が開始されたものの、余震が頻発し崩落が継続したため地震がおさまるまでは現場周辺で見守ることしか出来なかったという。
最初の地震発生からおよそ40分後、最も大きな余震が市を直撃すると中心部の地盤が大きく沈下し、直径数百メートル、深さ百メートルを超える巨大な陥没孔が突如として口を開けた。
粉塵の渦の奥、崩れた地層の影から現れたのは通常の個体を遥かに凌駕する全長約80メートルの巨大で複数の角を持つ異形の《ダイオウドウ》だった。
その巨体は剥き出しの岩盤を踏み砕きながら進み、足元の振動が地表に伝わって周囲の倒壊を免れた建物までも揺らした。
分厚い岩質のような甲殻を背負い、それは鈍い金属光沢を帯びながら体の動きとともに軋む音を発していた。
陥没孔の底には古代の地殻変動によって形成されたとみられる広大な地下水脈と天然洞窟が口を開けておりダイオウドウはその奥深くへと姿を消した。
この巨大な生物が市街直下を通過していた事実は地震の原因を裏付けるものであったがなぜこの経路を選んだのかは今も不明である。
その後連続する余震が市を追い打ちし、地下空間はさらに崩壊し夕刻までには陥没孔は土砂と瓦礫に完全に埋まり、内部の構造も巨体が進んだ先の行方も確認する術は失われた。
最終的な死者数は80,000人を超え、負傷者と行方不明者を合わせると被害者数は185,000人規模に達したとされる。
市の心臓部ともいえる商業地区は壊滅的な被害を受け、かつて賑わっていた通りは全て瓦礫の山と化した。
ノースベイルシティの復興は現在も続いており、市民は唯一倒壊を免れ傾いた塔を《ノースベイルの斜塔》として残し、慰霊と教訓と被害の象徴として市民の記憶に刻まれ続けている。

――文・【マイケル・ウィートリー】(イッシュ異常現象調査班)
【管理人の考察】
地下を歩くダイオウドウ
陥没孔の底に古代の地殻変動で形成されたとされる地下水脈と天然洞窟が存在していたことは今回の地震が単なる断層活動によるものではなかった可能性を明確に示している。
通常の地震では震源域から一点に集中するような大規模な沈下は珍しく、むしろ長期間かけて掘削された空洞が突発的に崩落した状況に近い。
もし巨大なダイオウドウが長年継続的に同じ経路を往来していたとすれば地下構造の弱体化が進行した結果であり、今回の崩壊は偶発的ではなく必然だったとも考えられないだろうか。
選ばれた経路の意味
全長80メートルという規格外の体躯を持つダイオウドウがなぜ密集した市街地直下を通過したのかは依然として不可解だ。
生物にとって行動ルートの選択は環境条件や生態的習性に基づくことが多いが地下水脈の方向性だけでは説明がつかない。
人工構造物の振動や音が地中を伝わり、ルート変更を余儀なくされた可能性もある。
仮にこれが外的刺激による回避行動の結果であれば都市活動そのものが大型地下生物の行動パターンに影響を及ぼすという新たなリスクを示しているのではないだろうか。
都市設計の脆弱性
被害者数が市人口の大半に及んだ背景には耐震基準の低さだけでなく都市計画段階で地下構造への配慮が欠如していた点があると考えられる。
大規模商業施設や高層ビル群が地下空間の真上に集中していたことで崩落の影響は連鎖的に拡大した。
都市基盤が未知の地下環境の上に築かれていた場合、災害時には想定外の二次被害を招く可能性が高くこの事件はその危険性を極端な形で示した事例といえる。
痕跡消失の意味
夕刻までに陥没孔が瓦礫で埋まり内部構造も巨体の行方も確認できなくなった事実は地震や大型生物の関与に関する情報を失ったことを意味する。
地下水脈や洞窟がその後も維持されているのか、崩壊により完全に消滅したのかすらも不明なままだ。
この喪失は再発防止や原因究明の観点から見れば致命的であり、同規模の現象が将来再び起こった場合の観測・調査手法を早急に整備する必要性を示しているのではないだろうか。
構事件録
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