発生日時:2012年2月
発生場所:イッシュ地方・ディアバロー峠
関与ポケモン:メブキジカ《冬の姿》(1体・野生)
【解決済】ディアバロー改革
2012年2月、イッシュ地方南西部に位置するディアバロー峠で乗用車1台がカーブに差し掛かった際に突然外側へ弾き飛ばされ、そのままの勢いで崖下へ転落する事故が発生した。
その際すぐ後ろを走っていた別の乗用車が急停止したことにより追突事故が相次いで発生し、計4台の車が事故に巻き込まれた。
現場は氷結した山道が続く急斜面地帯であったため当初は単なるスリップ事故と見なされたが、ふとカーブの方に目をやるとそこには一体の《メブキジカ》がいたという。
その際目撃されたメブキジカの右目は潰れ、皮膚には古傷が刻まれ、角の先端が一本折れていたがいずれも今負った怪我ではなく、少なくとも一年以上前の古傷であることが一目でわかった。
メブキジカは事故を起こした他の3台の車には興味を示さず、崖下へ転落した車両を見下ろすようにしばらくその場に立ち尽くした後、一度も鳴き声をあげずにそのまま斜面を力強く駆け上がって山の奥へと姿を消した。
通報後に現場へ駆けつけた警察と救急隊によって、崖下から大破した車両が発見され車内からは4人の遺体が収容された。
父親、母親、10代の姉弟の4人で、全員が即死に近い状態だったとされている。
車体には鋭利な岩に衝突したと見られる損傷が集中しており、仮に転落直後に発見されていても救命は困難だったと判断された。
車両のナンバーと持ち物から身元が特定され自宅のある《スウィントシティ》に捜査が及んだ。
家宅捜索の結果、壁には1体の《メブキジカの頭部のみの剥製》が飾られており、その下には【2011年 冬 メス/ディアバロー峠】と記されたプレートが付されていた。
さらに、近隣住民への聞き込みによってこの家族の父親が以下のように話していたことを証言。
『去年はメスを仕留めたがトドメをさしたのはウチの息子なんだ!
今年はオスを娘にでも捕らせて並べようと思う。
いずれは春夏秋冬それぞれのメブキジカを飾りたいね!』
ディアバロー峠に生息するメブキジカはイッシュ地方の環境庁によって保護指定されており、通年にわたり狩猟が禁止されていた。
猟銃免許を父親は所持していたものの同行していた家族、とりわけ当時未成年である息子が実際に引き金を引いたとする証言があることから狩猟のみならず銃の扱いまで違法であったことが判明。
事故後、地元では猟銃制度そのものの是非が問われはじめ『制度自体が不十分なのではないか』とする声が大きくなった。
一部の市民団体は【猟銃免許を全面的に廃止すべき】と主張し、これに対して免許を取得し正しく運用していた猟師や自然保護活動家、ジビエ料理人たちからは激しい反発が起こった。
最終的には制度の廃止ではなく【所持者への精神鑑定】、【定期的な適性審査】、【狩猟区域ごとの行動履歴の記録提出】、【家族との同行制限】など免許制度の大幅な厳格化が行われることで決着がついた。
この一連の動きは《ディアバロー改革》とも呼ばれ、イッシュ地方全域の狩猟管理体制の再編に影響を及ぼす結果となった。
事故から数年が経った現在もディアバロー峠は立入禁止区域とはなっておらず、日々数多くの人が利用しており、地域としては日常を取り戻したように見える。
だが、毎年2月になると必ずどこかのネット掲示板で《隻眼のメブキジカを見た》という目撃報告があがり、議論が再熱する。
その個体がかつて命を奪われた《あのメスのメブキジカ》の伴侶だったのかどうかを証明する術はない。
ただひとつ確かなのは事故の現場に立ち尽くしていたというメブキジカが今もこのディアバロー峠のどこかで駆けているということだ。

――文・【マイケル・ウィートリー】(イッシュ災害記録調査会)
【管理人の感想】
氷結した山道で起きた車の転落とそこに偶然居合わせたように見える《隻眼のメブキジカ》。
それが人間の目からどう映ったとしても、車が突如横に吹き飛び、その後あの場に立ち尽くし崖下を見下ろしていたとなればやはりメブキジカが車を意図的に崖下に落としたと見るのが妥当だと考えられる。
亡くなった家族の家に飾られた《頭部の剥製》と父親の発言や態度からみても彼らは明確に《殺戮》で繋がる関係だったと思われる。
本来であれば保護対象であるはずの生き物が違法に命を奪われ、それを聞かされていた周辺の住民も誰一人通報せず放置した無関心さがより大きな悲劇を生むことになったと考えられる。
だが、もしかしたら放置したからこそ、メブキジカが明確に復讐できたからこそ他の人への被害が拡大しなかったという可能性も考えられないだろうか。
命が奪われているからこそ楽観視できないが、ある意味では復讐の連鎖を終わらせられる最初で最後のチャンスだったのかもしれない。
2月になるたびにネット上で報告される《隻眼のメブキジカ》の目撃談はもしかしたらその一部は事件を風化させないために目撃していなくても流しているデマである可能性すらある。
それとも毎年特定の時期にだけ人前に姿を表して警告をしているのだろうか。
自分と同じような被害にあうものがいないと確信出来るその日まで《隻眼のメブキジカ》は現れ続けるのかも知れない。
構事件録
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