発生日時:2019年6月
発生場所:カントー地方・セキエイ高原
関与ポケモン:オニシズクモ(1体・野生)
【解決済】水糸の渇き
2019年6月、カントー地方北西部のセキエイ高原において結婚記念撮影中の女性が突如失踪し、その後山中で発見されるまでに至った一連の事件は当時メディアでも大きく報じられた。
その異様な経緯と現場で発見された《一体のポケモン》による被害の甚大さから、以降同地域での撮影・登山などの規制が一時的に強化される結果となった。
事件が発生したのは晴天が続いていた6月中旬の午後3時頃。
新郎新婦とその親族、及び撮影スタッフ数名がセキエイ高原北部の崖縁に位置する展望地にてウェディングフォトの撮影を行っていた。
ここは背後には緑深い山林と清流が流れ、人気の撮影スポットとして当時からSNSでも知られていた場所だった。
撮影が始まり花嫁が一人フレームの中央に立ったその直後、空から突然滝のような水流が降り注ぎ周囲一帯を瞬時に水で包んだ。
水流はほんの十数秒で止んだものの、視界が晴れた時には花嫁の姿だけが跡形もなく消えていた。
現場にいた撮影スタッフと親族らはすぐさま花嫁の名を叫びながら近辺を捜索し、警察への通報が行われた。
約40分後に現場へ到着した山岳救助隊と警察官によりさらなる捜索が実施され、捜索範囲が拡大されていった
すると撮影地点から北東に約350メートル離れた湖畔に白いドレスが水に浮かんでいるのが山岳救助隊により発見された。
ドレスは鋭利な刃物で背中から足元のレースまでが引き裂かれたような状態で、近くの岩肌には乾き始めた無数の水滴が残されていた。
その水滴を追って捜索班が辿り着いたのは木々の奥深くに隠れるように佇む一棟の古びた木造小屋だった。
小屋は既に長年使われていない様子で屋根の一部は落ち、扉は半ば外れていたという。
だが中から軋むような音が聞こえたため、警察官がそのまま内部を確認した直後、震える声で無線で救援を要請することとなった。
中には《巨大なオニシズクモ》が棲みついており、床板はその体重で一部が歪み、壁面や天井にまで無数の粘液質な糸が張り巡らされていた。
その中心部、天井近くには繭状に巻かれた花嫁が吊るされており、すぐ下には白骨化した複数の遺体が散乱していた。
オニシズクモは集まった人達に反応し甲高い叫び声をあげながら糸と水流を用いた激しい抵抗を開始。
山岳救助隊及び警察が即座にポケモンを用いて応対し約30分に及ぶ激闘の末ようやく制圧に至った。
なお、この戦闘により小屋は原型を留めない程に崩壊し、8名が負傷、ポケモン12体が戦闘不能に陥っている。
救出された花嫁はすぐに搬送され集中治療を受けたがオニシズクモの毒液による神経系の損傷により下半身に重度の後遺障害が残ることとなったが、数日後に意識は回復し命は取り留めた。
捕獲後、専門機関で行われたオニシズクモの生体分析によりこの個体が通常よりも巨大であるだけではなく《人間を含む複数種の生物を補食対象としていた》ことが判明。
その後セキエイ高原全域の危険個体調査が強化され、また、該当地域で過去10年間に報告された失踪者リストとの照合が行われ、小屋の遺体のうち1体が2009年に行方不明となった登山ガイドであることが歯型から確認された。
現在、問題のオニシズクモはトキワシティに2008年に新設されたポケモン保護及び研究施設にて厳重に管理されており、生体研究の対象として隔離環境下に置かれている。
事件以降、セキエイ高原一帯で同様の失踪例は報告されていないが、地元では今も水辺に長く近づかないよう子供達に教える風習が残されている。

――文・【ヤマグチ・レン】(カントー特異生態調査団)
【管理人の感想】
展望地での晴れやかな撮影の最中に祝福に包まれるはずだった花嫁がまるでその瞬間を狙い澄ましたかのように消え、繭となって発見されるというのがあまりにも残酷であると感じる。
犯人が巨大なオニシズクモだったという事実も衝撃的だったが、被害者が生きたまま巣に運ばれていたというのも極めて恐ろしい。
繭にされた花嫁の下にあった白骨遺体の存在がそこが《一時的な巣》などではなく、長い間オニシズクモに使われていたことを強く物語っているのではないだろうか。
救出された花嫁が取り返しのつかない後遺症に悩まされる事となったが、生きて戻れたのは本当に奇跡的で、安堵とやりきれなさが複雑に入り混じる。
事件の終息後も地元で水辺に近づかないように言い伝えられているというのはただの言い伝えではなく、生き延びるための警告としての重みが感じられる。
自然の中に潜む危険がいつどこで牙をむくか分からないということを痛感させられる事件だった。
構事件録
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