【解決済】未知なる魅惑のキノコ

発生日時:1962年8月
発生場所:カントー地方・クチバシティ
関与ポケモン:マシェード(1体・野生)


【解決済】未知なる魅惑のキノコ

1962年8月、真夏の熱気が残る夜更け、カントー地方【クチバシティ】の郊外で一連の不可解な死亡事故が相次いで発生した。
短期間に3軒の住宅で高齢者がいずれも就寝前に庭に出たきり帰らぬ人となっていた。
その他に共通していた点としては各家庭の庭先に《発光性のキノコ》が異様な密度で群生していた点である。

最初の発見は8月2日。
日頃より深夜になると庭で夜風に当たっていた男性が翌朝倒れているのを家族が発見。
救急搬送されたもののその場で死亡が確認された。
死因は転倒による頭部打撲とされ当初は熱中症や偶発的な事故と見なされた。

それから3日後、隣接する住宅でも似たような出来事が起こる。
今度は庭に椅子を出して涼んでいた老夫婦が共に倒れており、発見時にはいずれも意識がなく1名は死亡、もう1名も意識障害を残す重篤な状態だった。
現場には《薄紫に発光するキノコ》が一箇所に高密度で群生しており、周囲からは異様な《甘い匂い》が漂っていたという。

決定的な通報がなされたのは3軒目の住民によるものだった。
彼は深夜、窓の外に奇妙な光を感じたが不審に思って庭に出ず翌朝改めて確認したところ花壇の陰に得体の知れぬポケモンを発見。
驚いて通報した警察とポケモン保護管理局が駆けつけた結果、住宅の物陰で休眠状態にある【マシェード】が発見された。

 

当時のカントー地方ではマシェードという存在は学術的な論文等の中にしか記載されておらず、一般にはほとんど知られていない《外来種のポケモン》とされていた。
その性質や生態が不明であったこともあり発見直後には慎重な保護と調査が行われた。

後の分析で明らかになったのはマシェードが深夜に発する胞子には強い幻覚作用があり、長時間接近することで意識障害や異常行動を誘発する危険があるということだった。
死亡した二人もまた庭で光るキノコの美しさに惹かれて接近及び長時間滞在したことで幻覚症状を発症し、転倒や脱水に至った可能性が高いとされた。

さらに、いずれの死亡現場からも同じ特徴のキノコ胞子が検出されたが、それらがマシェードの近くに自然発生していたものであることが後に証明された。
つまりこの事件は外来の生物がもたらした《知られざる脅威》だったのである。

マシェードは保護されたのち慎重な輸送のうえで《ジョウト地方の研究施設》に移送されその後も監視下での生態観察が続けられている。
なお、マシェードが本来生息していないクチバシティにいた理由として専門家は『貨物船などに紛れて、偶発的に本土へと持ち込まれた可能性が高い』と述べている。
特にクチバシティは港湾都市として交易が盛んであり、積荷の中に胞子が付着した状態で紛れ込んでいたとしても不思議ではないためである。

この事件を受けてクチバシティでは一時的に夜間に屋外での長時間滞在を控えるよう周知されるようになり、発光性のキノコ類の異常繁茂に関する通報が義務化され、市の条例でマシェードの所有を禁止することとなった。
その後さらにジョウトホウエンシンオウフィオレアルミアオブリビア地方などの港町においても輸入貨物の生物チェック体制が強化される契機となった。

――文・【ヨシエ・ツバキ】(カントー環境記録センター)


【管理人の感想】

静かな夜にふと目を奪われるような発光するキノコの群れがどこか幻想的でさえあったのかもしれない。
だがその美しさは命を蝕む胞子に支えられていたという事実にどうしようもない不気味さを感じる。

庭先というごく身近で安心できるはずの場所に現れた《異物》が知らず知らずのうちに人を誘い意識を奪い、最悪のかたちで命を絶った。
その背後にいたのがマシェードという当時はほとんど知られていなかったポケモンだったという点もこの事件に独特の恐ろしさを与えている。

クチバシティという港町の特性がもたらした《偶然の侵入》
そこに暮らす人々の暮らしと異なる生態をもつポケモンとの不意の接触が取り返しのつかない悲劇を生んでしまった。
この事件を通じてポケモンの存在は時に人間にとっての脅威にもなり得るのだという現実を改めて突きつけられたように思う。

それでもマシェードに悪意があったわけではなく、ただ自身の生態のままそこにいただけだったことを思うとどこかやるせなさが残る。
人とポケモンが共に生きる世界であるからこそ知られざる存在に対して想像力と備えを持つことの大切さを改めて考えさせられる事件だった。

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