【解決済】希死念慮を囁く学校

発生日時:2024年11月
発生場所:パルデア地方・コルミナシティ
関与ポケモン:デカグース(1体・トレーナー所有)
関与人物:ギジェルモ・クレイス(元用務員/逃走中)


【解決済】希死念慮を囁く学校

2024年11月、パルデア地方北部の町【コルミナシティ】にある中学校で昼休みの時間になるたび放送機器から《ナニカの声のような音》が流れるという奇妙な現象が発生した。
最初の頃は誤作動か咳払いのようにも思えた雑音程度だったが徐々に内容は変化し、《ナニカが囁いている》ような言葉になりきらない《声らしきノイズ》が明確に混じるようになっていった。
生徒の中には『自分の名前を呼ばれた気がする』と証言する者が現れ、やがて《聞いていると死にたくなる》と語る生徒まで出始めるようになった。

不気味な放送は決まって昼食時間を迎える直前に流れ、教師達もスピーカーの作動音を確認することはできたものの《音声そのもの》を耳にすることはなかった。
最初は悪質なイタズラか生徒の誇張だと思われていたが、複数の学年・教室から同様の訴えが寄せられたため事態は次第に本格的な調査へと発展していった。

その後校内の放送設備は全て点検されたものの、機材そのものに異常は見つからず、録音データにも何も残されていなかった。
全ての点検が終わり異常がないと判明した数日後、ある生徒が『昼休み直前、体育館裏で黒い影が動いていた』と教師に報告した。
教員らがすぐさま現場を確認したところ、放送機器とは無関係な外部スピーカーに不自然な形で接続された集音マイクが設置されているのを発見。
そしてその真下、コンクリートの影にうずくまっていたのは湿ったような低い声で短く鳴く1体の《デカグース》だった。

教師達が側にいることに気づいたデカグースは即座にその場を離れ、その進行方向にいた用務員の【ギジェルモ・クレイス】の方へと駆け寄っていったため、そのデカグースを捕まえるよう教師たちが呼びかけた。
モンスターボールを取り出したギジェルモを見て捕獲はそういう意味ではないと教師が声を上げようとした次の瞬間、デカグースギジェルモのモンスターボールへと収納され、彼の手持ちポケモンであることを皆が悟った。
ギジェルモは一言も発する事なくそのまま裏門から姿を消し、教師たちはすぐに警察へ通報した。

現場に駆けつけた警察が校内の音響装置を回収し検証を行った結果、使用されていた装置には驚くべき機能が多数備わっていたことが判明。
通常であればデカグースの鳴き声は人間の言葉として認識できるものではないが、この音響装置には特殊なマイクとAI音声加工ソフトが連動しており、デカグースの発する声の中から特定のパターンを検出しそれを《特定の単語やフレーズ》に変換するマクロが組まれており、さらに加工された音声は《児童にしか聞こえない高音域》へ変調されて流されていたという。
プログラム解析を行ったところ、流されていた内容はいずれも特定の生徒の名前と《死への暗示》を与える強い自責を促す言葉に整えられていた。

 

後日、警察はギジェルモの自宅へ向かったが既に家はもぬけの殻でPCや記録媒体などの機器は全て持ち去られていた。
証拠となるようなものがこれ以上見つからない可能性があった中、部屋の押し入れに残されていた一冊のノートが警察の目を引いた。
そのノートには名前、身長体重、趣味、家庭環境、友人関係など《特定の生徒の情報》がそれぞれ一人1ページずつ、異常な密度で記録されていた。
中でも数名のページには朱色のインクで《浄化》と記されたハンコが押されており、それらの生徒は全て《自分の名前が呼ばれている気がする》と教師に訴えていた児童と一致した。
また、ノートの冒頭には【穢れを音に、声は浄化の器となる】といった意味不明な文言が書かれていたという。

 

以降、同様の異常放送は一切流れていないが彼の行動の全容や真の目的は未だ明らかにされていない。
現在もギジェルモ・クレイスは指名手配中であり、デカグースとともに行方をくらませたままとなっている。

後にこの事件はSNSでも大きく拡散され、《希死念慮を囁く学校》といった名で一時期話題となった。
一部の生徒が長期欠席に陥るなど精神的な影響も大きく、現在もカウンセリング体制の強化が続けられている。

――文・【エリカ・ブレア】(パルデア人間信仰行動史研究所)


【管理人の感想】

ただの音ではなく《暗示をかける声のようなナニカ》が子供達にだけ聞こえていたという的確に対象を選んでいた異常性は何をキッカケに生まれたのだろうか。
音の扱いに長けたポケモンは数多くいるが、なぜその中でデカグースを選んだのかも極めて謎である。
単純に手持ちがそれしかいなかったのか、1番信頼を寄せていた存在だったのか、デカグースだからこそできるものだと偶然ナニカで発見したのか…
もし偶然でないのであれば、デカグースの鳴き声を解析し、意図的に特定の言葉に変換して操作するという構造は前代未聞であり、極めて優れた技術と《底しれぬ執念》が無くては実現不可能に思える。

音声加工だけならまだしもギジェルモはさらに《大人には聞こえない》ように周波数を設定しても尚も暗示をかけられるものに仕上げていた事があまりに高度な技術すぎる。
それらを踏まえて考えると、今回行われた《デジタル呪術》ギジェルモ単独で行われたものではないという可能性はないだろうか。

自宅からも彼のPCなどが持ち去られているにも関わらず、ビッシリと書き綴るようなノートを大して隠しているような場所でもない押入れに置いたまま去るだろうか。
証拠を残したくないのであれば間違いなく持ち去っているものであると考えられる。
つまり、ギジェルモ《PCを持ち去って逃げた》のではなく、そもそも裏門から立ち去ってから一度も自宅に訪問すらできておらず《ナニカに攫われた》とも考えられないだろうか。

もしそうであれば、指名手配となったギジェルモが今後見つからない可能性が極めて高いと言える。

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