【解決済】一石二鳥の殺戮

発生日時:2020年2月
発生場所:アローラ地方・アーカラじま内湾
関与ポケモン:ヒドイデ(複数/トレーナー所有)
関与人物:ケイン・タゴロア(研究員/逮捕)


【解決済】一石二鳥の殺戮

2020年2月、アーカラ島南部の内湾にて海上に浮かぶ複数の遺体が立て続けに発見されるという異常事態が発生した。
発見されたのは計7体で、いずれも漁業関係者とみられる中年男性であり、遺体はいずれも胴体に無数の穿孔痕が集中し出血と海水による壊死が進行していた。
尚且つ針のような微細な異物も一部の遺体に付着しており、警察と海洋研究機関が合同で現場周辺の調査を開始。
なお、数週間前から同じ海域に設けられたサンゴ礁保護区内で密漁の報告が相次いでいたため関連性が疑われていた。

調査の過程で湾内の岩礁地帯に不自然に固定された係留チェーンとそれに繋がれた《ヒドイデ》が複数発見された。
このチェーンは海中の特定ポイントに打ち込まれ、長さに制限があり、繋がれていたヒドイデは限られた半径内でしか動くことができない構造になっていたという。
また、その近辺では海底に沿って不自然に散らばったヒドイデの死骸や等も確認された。
その後回収されたヒドイデのうち4体は生命反応が極端に低下しており、専門施設にて安楽死処置が取られている。

その後の聞き込み調査でアーカラ島の海洋観測及び研究員の【ケイン・タゴロア】が頻繁にこの湾に単独で入っていたことが判明。
また、ケインの所有していた研究用クルーザーからは海底にあったものと同様の拘束用具とヒドイデ用のクラブパウダー、そして捕獲用の道具等が押収された。

ケインは自身が捕獲した複数のヒドイデを湾内のサンゴ礁付近に《設置》していたことを認めた。
ヒドイデ達は捕獲後数日に及ぶ絶食を強制され、極度の空腹状態で海流によって漂ってもサンゴには手が届かない距離に鎖で繋がれ配置されていた。
この極限状態のなか彼らの視界に密猟者が現れサンゴを削り取る光景を目にした途端、ヒドイデ達は一斉に攻撃を開始。
毒針と鋭利な触手による繰り返しの打撃で複数の人間を溺死あるいは失血死、または中毒死に至らせたとされる。

この手法はケインが公的に行っていた《サンゴ礁監視プログラム》の裏で実験的に進められていたもので研究機関は関与を否定。
警察は《生物を用いた傷害・殺人幇助罪》および《ポケモンに対する虐待行為》に該当するとして彼を逮捕。
取り調べの中でケインは真顔で次のように述べたという。

『密猟者もヒドイデも結局サンゴ礁を荒らす化け物ですよ。
そんな化け物同士を喰い合わせればどちらも死んでくれるんですから皆助かる。
まさに一石二鳥ですよね。』

事件後、保護区周辺のパトロールは強化され以降この海域で密猟の報告は一件も確認されていない。
鎖の先で生にしがみつき抗っていたヒドイデ達の痕跡は今も岩陰に染みついている。

――文・【アカマツ・レン】(アローラ海洋異変調査団)


【管理人の感想】

《一石二鳥》というあまりに歪な理屈に込められた狂気が事件の全てを象徴していたように思う。
密猟者を撃退するという《正義》の体裁をまといながら、その実態は人間とヒドイデに向けられた明確な《殺意》だった。

密猟者への制裁という構図で語ればある意味で抑止力としては機能していたのかもしれない。
だが人を殺すために配置され、飢えさせられ、最後は動けなくなった個体が死滅していくという流れには言葉にできない虚しさがある。

ケイン・タゴロアという人物の冷静すぎる語り口からもケインには一片の後悔もなければ感情の揺らぎすらなかったように感じる。
むしろ、サンゴ礁という環境を守るためなら、《それを荒らす者の命など必要ない》という思想の強固さが浮かび上がっていた。
ある意味で人間とポケモンの命が対等に扱われているのをまざまざと突きつけてくる事件だったのではないだろうか。

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