発生日時:2017年2月26日
発生場所:カロス地方・ミアレ市南部団地
関与ポケモン:オーベム(疑い)
目次
【未解決】カーテンに立つ影
カロス地方最大の都市【ミアレシティ】。
その南東部、ベール広場近辺に広がる団地群の一角で、突如として《少女が消える》という異常事態が発生した。
事件が起きたのは2017年2月26日、時刻は午後9時前後。
被害に遭ったのは当時10歳の少女・ルイーズちゃん(仮名)。
母親と二人暮らしの彼女は当時ともに夕食後のひとときを居間で過ごしていた。
この夜は珍しく団地の一部区画でごく僅かな時間ではあるものの停電が発生していた。
それは10秒にも満たない時間であり、すぐに電気は戻ったが、当時を振り返り《その間に何かが入り込んだ》のだと母親は語っている。
『カーテンの向こうに、誰かいる』
ルイーズちゃんががそう言ったのは電気が戻る直前だった。
南向きの小さな窓に薄手のレースカーテンがかかっており、外の街灯の明かりがわずかに透けていた。
母親が振り向くとそこには誰の影もなかったが、ルイーズちゃんはジッとカーテンを見つめたまま動かなかった。
『気のせいでしょ、誰もいないわよ』
そう言って母親が席を立ち、一度カーテンを開けて窓の外も確認したがやはりそこにはナニも見当たらなかった。
その後、ルイーズちゃんを安心させるために声をかけながら停電の影響などないか部屋を見て回った。
だが、一向に返事がなかったため様子を見に戻ってきた時には、既に音もなくルイーズちゃんは部屋から消えていた。
玄関は内側から施錠されており、窓もすべて閉まっていた。
ベランダや換気口を含めて外部侵入の痕跡は一切なく、足跡などもなかった。
だが、居間の中央の床に《直径50cmほどの焦げ跡》が浮かび上がっており、白い煙が中心から立ち上っていた。
それはまるで火というよりは電気エネルギーによって発生したかのように、中心から外側へ伸びるようにイカズチ模様が描かれていた。
さらに、窓際のカーテンが静電気を帯びているかのように不自然に少し浮いて、揺らめいていたという。
解析の結果、室内からは【オーベム】の発する電波干渉パターンとよく似たエネルギー波が確認された。
ただし事件当日の団地周辺ではオーベムの目撃情報はなく、生息分布的にも極めて異例の場所といえる。
なお、当日団地の一部区画で観測された《10秒未満の停電》も周辺施設や電力会社には記録されていなかったという。
つまり《停電のように見えた何か》が局所的に発生していたということになる。
母親がのちに提出した証言メモには、こんな言葉が記されていた。
『あの日、娘は昼間からカーテンのほうをチラチラ気にしてたんです。
外に行きたいのかな、程度にしか私は気にも留めていなかったんですけど……
あの時もっとちゃんと確認していれば…
部屋なんか見て回らず側にいてあげてれば…
後悔しない日はありません……』
この事件以降、当該団地では他に失踪者は出ていないが、別の部屋の住民から
『夜中にカーテンが動く』
『電子機器が突然誤作動する』
『誰もいないのに見られているような気配がする』
『窓際にボンヤリと影が映り込む』
などの報告が上がっているため、現在も専門機関による監視と観測が続けられている。

――文・【アマミヤ・セリ】(カロス地方特派ジャーナリスト)
【管理人の考察】
【《記憶改竄》の可能性】
部屋に残された《イカズチ模様の焦げ跡》から察するに、強烈な電気エネルギーによる光と轟音が響き渡ったと考えられる。
特筆すべきは現場に残された波形が【オーベム】の発する干渉パターンと一致している点である。
そしてオーベムは電気エネルギーも使用するがそれ以上にサイコパワーを得意としている。
つまり、ルイーズちゃんが《音もなく消えた》とされているが《記憶改竄》されたのではないだろうか…?
【《停電のような何か》とは】
団地の一部区画のみが一瞬停電したという現象が電力会社には記録されていないという。
これは実際には停電しておらず《感覚だけがそう見えた》可能性を示唆する。
つまり、ルイーズちゃんと母親、あるいは周囲一帯の認識のみが書き換えられたのではないだろうか。
もしくは光や電気が消されたのではなく、《一時的に異空間に閉じ込められて通っていなかった》可能性がある。
【カーテンが象徴する《境界》】
ルイーズちゃんが一貫して見つめていたのは《カーテンの向こう》である。
外ではなく薄布一枚隔てた曖昧な境界を見ていたのではないだろうか。
窓が外界ではなく《向こう側》へ通じていたとすれば…
彼女はそこから呼ばれ自ら踏み出してしまったのかもしれない。
【相次ぐ《ナニカに見られている》という報告】
事件後に相次いだ住民の証言は、いずれも《誰もいないのに、誰かがいる》ということである。
この現象はただの精神的不安ではなく、空間の一部が他の何かと重なっている状態で起きているのかもしれない。
それは一時的に開いた向こう側の残滓であり、ナニカがこちらを覗き込んでいるのだとすれば……
カーテンの向こうは、まだ閉じられていないのかもしれない。
【管理人の感想】
誰も叫ばず、争わず、静かに《いなくなる》という出来事の不気味さもさる事ながら、残された者の後悔の深さは計り知れないと思う。
ルイーズちゃんが最後に見ていたのは、ただのカーテンだった。
だがおそらく、ルイーズちゃんは私たちが見えない《ナニカ》が見えていた。
それは優しそうだったのか、懐かしかったのか、はたまた恐ろしかったのか……
最後にいったいナニを見て、何を感じたのだろうか。
『気のせいでしょ』と流してしまった母親の言葉が今もなお彼女を苦しめているようでこちらまで胸が苦しくなってくる。
後悔を重ねながら、それでも母親は今もきっとあのカーテンの前で娘の気配を探しているのではないだろうか。
そしてもし、今この瞬間も誰かの部屋のカーテンが微かに揺れているのだとしたら……
その向こうにいる《ナニカ》はまた別の誰かを求めているのかもしれない。
構事件録
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