発生日時:2016年11月30日
発生場所:カントー地方・ヤマブキシティ旧線路跡
関与ポケモン:ムウマ(不明)
目次
【未解決】漂う黒髪の影
【ヤマブキシティ】の西側、現在は封鎖されている旧貨物線の廃線跡地で、不可解な死亡事件が発生した。
現場で発見されたのは20代後半の女性で、死亡時刻は深夜2時前後と推定されている。
遺体は旧線路に面したベンチに《自らの身体を抱きしめるように》座った状態で発見されており、外傷は一切なかった。
第一発見者は早朝に通りがかった旅するポケモントレーナーで、彼はこう証言している。
『最初はただ寝てるだけだと思ったんです。
でも、近づいてみたら生気を感じなくて…
体は冷え切ってて、背中のあたりに《黒いナニカ》があったんです…』
証言の通り遺体の背後…肩口から腰にかけて不自然な束の《黒い長髪》のようなものが纏わりついていた。
一見すると被害者本人の髪に見えるが、被害者はショートカットであり、DNA鑑定の結果その髪らしきモノは人間のものでもポケモンのモノでもないことが判明。
繊維構造が特殊で異常なまでに軽く、わずかに【幽波干渉】を示す成分が検出された。
口は閉じ、目は見開いており、自らを抱きしめるように掴んでいた腕には傷一つ無く、力が入りきる前に急激に体温が失われていた事が確認された。
遺体の体温は足先まで異常に低下しており、特にその中心部分はマイナス20度未満にまで冷えていた。
検視官はその状態を『まるで《内側》から急速に凍らされたようだ』と表現している。
近隣に設置されていた防犯カメラの映像には、事件発生とされる時間帯、深夜1時42分にベンチに向かってゆっくりと歩く女性の姿が記録されている。
その映像では異常な点が2つ確認された。
一つは、彼女の《影》が映っていなかったこと。
もう一つは、背後からついてきている《黒い影のような何か》の存在である。
その映像を確認した警察関係者は以下のように語った。
『その黒い何かは髪のように揺れていた。
人の形ではなく、大きな髪の塊のような…
そしてそれが彼女の背中に《ツイて》いたんだ』
この背後の影は、女性がベンチに座った瞬間に肩から腰に絡まるように漂っていた。
その直後、彼女はあたりをキョロキョロと見渡してから、誰かに声をかけるように口を動かしていたが、ものの数秒で動かなくなり、3分後には発見された当時の姿勢で完全に静止。
カメラ映像はその数十秒後、突如ノイズに覆われてブラックアウトした。
事件後、現場の線路跡には【ムウマ】の出現時に観測される低周波振動と微弱な光素子の反応が残されていた。
一帯は現在も立入禁止となっており、調査は継続中だが、ムウマと事件との明確な因果関係を証明する手段は見つかっていない。
なお、私が現場を訪れた際に、女性が亡くなっていたベンチの上にボンヤリと《黒髪の影》が空中に漂う姿を確認した。
撮影を試みるも、写真には何も写らず、再度ベンチに目をやると影は既にその場から消えていた。
亡くなった女性のスマートフォンには最後に起動したメモアプリの履歴が残っており、次の一文が記されていた。
《うしろに だれか いますか》

――文・【タカハシ・メイコ】(カントー地方特派ジャーナリスト)
【管理人の考察】
【遺体に絡みついていた《黒い長髪》は何だったのか?】
最も注目すべき点はそれが人間でもポケモンでもない成分構造を持ちつつ、【幽波干渉】に反応した《実体》であるという事実。
特に《異常なまでに軽い》という性質は通常の有機繊維とは異なり、まるで感情や念が具現化したような存在だと解釈できる。
つまり、これはムウマが発した《恐怖の結晶》であり、精神エネルギーが髪という形で実体化した霊的な副産物だった可能性がある。
【なぜ彼女は自らを抱きしめるように座っていたのか?】
死に際の姿勢として、自らを抱きしめるという行動は極めて異常。
これは極度の寒さに対する生理的反応ではなく、《ナニカから抗おうと》した可能性がある。
つまり、背後に《絡みつく何か》を自分の腕で拒むようにしていたのではないか。
【体温の異常な低下と《内側から凍る》死因の意味】
検視官が述べた内側からの急速凍結は自然界ではありえない現象である。
これがムウマが引き起こしたモノであるならば精神波による神経冷却作用、または《幽波を媒介としたエネルギー排出》と考えられる。
つまり、ムウマは彼女の恐怖や過去の未練を糧にし、その精神の温度ごと吸い取ってしまった可能性がある。
が、それにしてはあまりにも冷えすぎているので全く別のポケモンによる現象なのかもしれない。
【防犯映像に映らなかった《影》と消えたタイミング】
映像の異常点は、彼女の影が映っていないという点と、背後に揺れる《髪のような存在》。
この時点で彼女はすでに《見られていた》のではなく、《取り憑かれていた》と考えるのが自然である。
カメラがブラックアウトしたのは、恐らくムウマをはじめとするゴーストタイプが持つ記録干渉能力によるもの。
目撃者や記録を残す視線を遮断するという、霊的防衛反応である。
【最後に残されたメモの意味と彼女の認識】
《うしろに だれか いますか》という文は、恐怖による錯乱ではなく、《確信を得たい》という意思がこもっている。
これは彼女が【背後に気配を感じていた】という段階ではなく、既にそこにいるということを悟った瞬間だったのではないか。
言い換えれば、ムウマは見られることを望んでいた可能性がある。
【《黒髪の影》は誰かを模していたのか?】
事件現場で記者が見たという《黒髪の影》は、単なる霊的な形ではなく、かつての誰か――あるいは被害者自身の記憶が投影された姿ではないだろうか。
ムウマは驚かせる時によく人の恐怖や後悔、未練を利用する傾向にあるが、そのエネルギーが物質化した《擬似体》であった可能性も考えられる。
【この事件は《偶然》だったのか】
駅跡地、旧線路、深夜の時間帯、そして単独行動の若い女性…
一体何の目的で一人こんなところを歩いていたのか…そしてどこへ向かおうとしていたのか。
遥か前にもう既に、取り返しがつかない状態になっていたのではなかろうか。
【管理人の感想】
これは静かな恐怖が渦巻く事件だと思う。
派手な攻撃も、異常な破壊もない。
ただ静かに、背後に《存在しないはずの何か》が立ち、唐突に命を奪う。
その様子はまるで、人間の想像力に対する罰のようだとも思う。
何より怖いのは、彼女が最後にスマホに残した言葉だ。
あれは誰かに宛てたものではなく、きっと後ろにいる存在に向けた問いかけだった。
その問いにナニかが返事をしたのか、それとも何も言わずにいただけなのか…
答えはもう、彼女しか知らない。
振り向いていれば何かが変わったのだろうか?
だけど私ならきっと振り向けない。
そこに何がいようと、ただ、目を閉じて、耐えるしかない気がする。
それでも《ソレ》が、ゆっくりと背中から這い降りてきたら…
――きっと、もうどうしようもないんだろう。
構事件録
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