【未解決】湖喰らう窪み

発生日時:1983年5月
発生場所:シンオウ地方・リッシ湖
関与ポケモン:不明


【未解決】湖喰らう窪み

1983年5月中旬、穏やかな陽光に照らされ休日を楽しむ人で賑わっていた《リッシ湖》の中央付近で釣りを行っていた若者3人が一瞬大きな声を上げ、人々がそちらに目線をやると湖に漂う小舟だけ残し彼らは忽然と姿を消していた。
近くの船が彼らの船に近づき中を確認するとそこには荷物も釣り具も乱れることなく残されており、まるで人だけが《ナニカ》に吸い取られたかのような異様な光景が広がっていたという。
通報を受けた地元警察はすぐに捜索を開始し、潜水士たちが湖に潜ったが水中には転覆の痕跡も争ったような痕もなく、ただ底知れぬ青が広がるばかりで行方不明の3人に繋がる証拠は一つとして見つからなかった。

捜索が膠着した数日後、現場で待機していた調査員及び捜索隊の目の前で第二の異変が発生した。
湖面の中央が突如として大きく波打ったかと思うと、まるでそこに見えない《ナニカ》が潜んでいるかのように《水が深々と凹み始めた》
風や自然の作用では説明できないほど均整の取れた滑らかなその窪みはやがてゆっくりと移動し始め、水面に浮かぶ葉などを消滅させながら湖面をなぞるように進んでいき、湖内にいた調査員や付近で羽を休めていた水鳥が次々とその窪みに音もなく呑まれて消えていく瞬間を陸地の捜索隊が目撃した。

しばらくするとその《窪み》は岸辺に向かって近づいてきたため現場にいた者達は恐怖に駆られながらも直ちにその場から撤退した。
機材を置いていけないと現場に一番最後まで残った者の証言によれば、《窪み》は陸地をも音もなく削りながら足元に迫るかと思われる位置まで移動してきたが、徐々に速度を緩めて静止し、その後しばらくするとまた湖内が窪みはじめ、最後には何事もなかったかのように消失していったという。
緊張と恐怖の余韻が残る中で逃げ延びた彼らの表情には確かに人の理解を超えた存在を目にしたという確信が刻まれていた。

後日、湖には専門機関による大規模な調査が改めて行われた。
潜水士だけでなく水中ソナーや磁気探査機器等、当時の最新機器が多数投入され湖底の地形や水質が数週間に渡り丹念に調べられたが、新たな《窪み》も痕跡も発見されず、水質も従来と変わらないという結果しか得られず、《窪み》の正体のみならず失踪者がどこに消えたのかも判明することはなかった。

その後リッシ湖で同様の現象が報告されることはなく、なぜ小舟とその中身だけ無事だったのかも不明なまま、水面に現れた《窪み》の正体が《未知の巨大ポケモン》の存在を暗示するものなのか、あるいはナニカもっと恐ろしい存在だったのか、その結論は今も出ていない。

今も湖は観光や釣りの場として利用されており、当時調査に立ち会った人々はすでに高齢となり証言者も減ってきているが、今尚事件の記憶は地元に深く残り続けており、湖に沈んだ《窪み》が何であったのかを解き明かせぬままリッシ湖は今も静かにその深みを湛えている。

――文・【フカザワ・アヤカ】(シンオウ怪奇事件調査班)


【管理人の考察】

窪みの正体とは

湖に現れた謎の窪みが何であったのかを考えると生物的な存在、自然現象、あるいは異空間への扉という複数の仮説が浮かぶ。
もし生物であったなら湖面に均整の取れた凹みを作りながら移動できるほど巨大で、かつ水面を乱さずに物体を呑み込む特殊な構造を持っていたことになる。
ただ、その後に湖底調査が行われても一切痕跡が残っていなかった点が生物仮説を弱める材料になるのではないだろうか。

一方で自然現象として説明しようとすると気象や地形の異常で局所的に水面が窪むことは考えづらく、規則正しく進む形状や物を消し込む作用とは整合しない。

残るのは異空間への扉という解釈だが、これならば小舟の中身だけが残り人間や生物が消えたという状況にも説明がつくのかもしれないが、その場に留まり続けず明確に生物を追いかけるようにしていたことにはただの扉としては疑問が残る。

ターゲットの基準と活動範囲

最初の消失では湖には他にも人がいたにもかかわらず消えたのは中央付近にいた彼らだけだった。
これは窪みが発生する位置や範囲が限られており、特定の条件下にいた者だけが巻き込まれる現象だったと考えられるが、後に発生した際に陸地近くまで窪みが迫ったことは、最初の発生よりも広い範囲に影響を及ぼしうる可変的な存在であったことを示している。
なぜ最初は限定的に作用し、その後に範囲を広げたのかについても不明だが、外部からの刺激や調査活動によって現象が何らかの《反応》を示したとも推測できる。
調査員や機材の存在が湖に異常を引き寄せたと考えれば《窪み》の行動は無差別ではなく、一定の誘因によって規模や方向を変える性質を持っていたのかもしれない。

生物か機械か

規則的に形を保ち物体を音もなく呑み込む様子は自然の力というよりも何らかの意図的な働きに見える事から窪みが単なる自然の現象ではなく意思を持った存在か、あるいは未知のテクノロジーにより作られた機械である可能性が高いのではないだろうか。
だがその後の湖底調査で磁気異常などが確認されず、生物的な痕跡もなかったが、痕跡そのものすらも透明であれば《透明の未知の生物》であった可能性が非常に高いとも考えられる。
もしこの《ナニカ》が自ら動いたのではなく何かに誘導、もしくは指示されていたと考えると、事件そのものがより大きな枠組みの中で発生した事象の一部だった可能性もあるのではないだろうか。

未知の存在との関連

事件で現れた《窪み》は他地域で報告された《空蝕》と呼ばれる《漆黒の球体》の出現と類似性を持つように感じられる。
球体は周囲の物を呑み込み消失させるという報告もあり、唐突に出現しその後何事もなかったかのように忽然と姿を消す点などが酷似しているのではないだろうか。

《空蝕》《未知のウルトラビースト》である可能性が議論されており、もし今回の現象も同種の存在によるものならば事件は単なる局所的な異常ではなく、世界規模で散発している現象の1つに位置づけられるだろう。
ウルトラビーストは既知の生態系に属さない特異な存在であり、痕跡を残さずに消失する性質も彼らの能力として説明できる。
もしそうであるならばリッシ湖の失踪事件もまたポケモン世界の外側からもたらされた干渉だった可能性を強く示唆しているのではないだろうか。

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