【未解決】獄炎と虚空の街

発生日時:2004年11月
発生場所:ガラル地方・グレイドマーシュシティ
関与ポケモン:マルヤクデ(1体・野生)


【未解決】獄炎と虚空の街

2004年11月、ガラル地方の交易と製造業で知られた中規模都市《グレイドマーシュシティ》が一夜にして地図から消え去った。
街の消失は突発的な火災に端を発したがその後に続く光景は人智を超える異常であり、ガラル地方の災害史においても極めて特異な事件として記録されている。

事件の発端は深夜、山向こうの隣町から荷を届けるために山道を走っていた一人の運送業者がまるで昼間のように煌々と輝くグレイドマーシュシティを目撃したことである。
最初はお祭りでも開催されているのかと考えた業者も徐々に近づくに連れグレイドマーシュシティ全体が赤く燃え立っていることに気づき、事態を悟って進入を避け急ぎ山を下りて近隣の街へと駆け込み通報した。

報せを受けた消防団とポケモンレンジャー隊はただちに集結し消火用の車両や水系ポケモンを多数動員して現場に急行した。
消火活動が難航する中、グレイドマーシュシティの中心部から突如として黒い影が揺れ動き、次の瞬間、《全長300メートル》を超える超巨大な《漆黒のマルヤクデ》が立ち上がった。
無数の節を震わせながら炎を撒き散らし周囲を覆う炎すらその体の一部のように纏うその姿は既知の個体と比べてあまりに異質であり、巨体がうねるたびに建物は音を立てて崩れながら火柱を上げ、周囲の空気が歪み全てが朧気に見えたという。

レンジャー隊は即座に応戦を試み水や氷の技を中心にあらゆる技を集中砲火したがいずれもマルヤクデが纏う獄炎を貫通することは出来ず何の効果も示すことはなかった。
するとマルヤクデはゆっくりとグレイドマーシュシティへ放水していた消防団の方を見下ろすと、破壊光線のような《炎のレーザー》を噴射し、数名の重症者を残して消防団は《影だけ残して蒸発》する事となった。
戦況はあまりにも絶望的であった為、レンジャー隊リーダーは即座に撤退命令を叫ぶように全体に伝え、残った重症者を背負いながら逃走を図るも二度目のレーザーによりレンジャー隊及び殿を努めたポケモンが同様に《影だけ残して蒸発》し、辛うじて数名が街外れへと逃げ込むことに成功。
その背後では巨大なマルヤクデが繰り返し炎を吐き出しながら街全体を揺さぶるように暴れ続けており、退避した一行は恐怖に震えながらグレイドマーシュシティが燃え落ちていく様を見届けるしかなかった。

 

そのまま数時間が経過した深夜、突如として空気が震えるような地鳴りが一帯を揺るがしたかと思うと直後、巨大地震が発生し轟音に包まれ、多くが恐怖に包まれながらも身を守るために地に伏せた瞬間、グレイドマーシュシティの上空に炎の光を一切通さない《漆黒の穴》が浮かび上がった。
その《漆黒の穴》は影も光も通さなかったため平面か立体かさえ判別できず、炎が渦巻く空の中でそこだけが不自然なまでに暗く異様な存在感を放っていた。
地震がさらに大きくなり誰もが頭を抱えながらうずくまり身を守る姿勢を取った直後、突如として巨大な轟音と共に地震は止み、あたりは静寂に包まれたという。

レンジャー隊が恐る恐る顔を上げてグレイドマーシュシティの方角を見るとそこに広がっていたのは漆黒の巨体も街の建造物も存在しない《直径数キロに及ぶ巨大な穴》だった。
その光景を目撃して最初に行動に移したのはレンジャー隊のリーダーで、その後全員がグレイドマーシュシティがあった方へ駆け寄ってみると巨大な穴の周辺には火の粉が僅かに舞い散るだけで街並みの残骸は一切見当たらず、地面は人工的に切削されたかのような滑らかさを持って途切れている極めて異様な光景が広がっていたという。

 

後日、調査隊が改めて現場を測定した結果、穴の深さは約8キロに及び、それはグレイドマーシュシティの直径に匹敵していた事が判明し、穴の内部には瓦礫はおろか土壌や基盤すら消えており街全体が球状の《ナニカ》に削り取られたとしか表現できない状態であった。
調査団は当初、異常な巨体のマルヤクデが直接的な原因であると考えたが、街の消失と同時にその姿すら完全に消えていたことから断定を避けている。
また、既知の生態記録から個体が突発的に300メートルに達する可能性はなく、仮にその巨体にまで成長し炎で街を焼き尽くすことができたとしても地盤ごと消滅させる現象を説明することはできなかったためである。
目撃証言にある《上空に浮かぶ漆黒の穴》についても計器には一切記録されておらず、残されたのは限られた人々の記憶のみだったが、後に別の地方の研究者が《空蝕》及び《未知のウルトラビースト》の関与の可能性を指摘しているが真相は明らかとなっていない。

事件から年月を経てもあの日現れた巨大なマルヤクデの目撃情報は皆無であり、なぜ街を焼き払ったかも不明で、あの夜を説明できる理屈は何一つ見つかっておらず、かつてグレイドマーシュシティがあった場所には今も深い穴が空いたままである。

――文・【ジョージ・マクレガー】(ガラル異常事件調査班)


【管理人の考察】

執拗なまでの攻撃

通常のマルヤクデは生態的にも森林や岩場を好み、人間との直接的な衝突は避ける傾向があるため人間の街を無差別に襲う事例は過去確認されていない。
今回の個体が街を炎で覆い尽くした1つの可能性として考えられるのは交易と製造業を中心とするグレイドマーシュシティでは高温の炉や燃料が多く使われていたため、その熱源や化学物質が偶然にもマルヤクデの攻撃衝動を誘発したということである。
もう1つはこの個体が既知の生態系から逸脱した存在であり、従来の捕食や防衛行動では説明できない異質な目的を持っていた可能性であり、目に映った街を破壊する事自体が目的だった可能性である。

異形の巨体

事件当夜に現れたマルヤクデの全長は300メートルに達しており漆黒の体色をしていたとされるがキョダイマックス個体を含め、既知の図鑑記録及び目撃例では到底考えられない大きさである。
過去一度も目撃されていないことから自然環境下での突然変異や長寿による肥大化では説明できず《異界からの流入》という仮説も考えられないだろうか。
独自に調査した結果、グレイドマーシュシティには古来より《異界と交わる土地》として語られてきた地方伝承が残っていたようで、かつて巨大な地震が発生しそれ以降地下から様々な鉱物が発掘されるようになったという。
今回の個体もその空間から迷い出た存在だったとすれば姿も性質も通常と大きく異なっていたのかも理解を示せるようになるのではないだろうか。

地震と《空蝕》

街が焼け落ちた後に発生した大地震と上空に現れた《漆黒の穴》は現場を目撃した者の証言にしか残っていないがその後に直径数キロの巨大な穴が残されていた事実を踏まえると、地震と穴は間違いなく存在しており、街の消失に直接関わっていたと見るべきだろう。
漆黒の穴が光を通さず平面か立体かも判別できなかったという証言は既知の自然現象では説明できないが、世界の様々な場所で目撃情報のある《空蝕》であればむしろ説明が出来てしまうのがひときわ不気味である。
もし同一の存在であるのであれば、またどこかで目撃情報があがってくるのかもしれない。

消失か転移か

最も大きな謎は街も炎もマルヤクデ自身も影も残さず消え去った点にある。
現場に残された巨大な穴はまるで球状に削り取られたようで、崩落や爆発といった通常の破壊とは明らかに異なる。
ここから導かれる可能性として1つは街全体が《どこかへ転移》させられたという仮説が挙げられる。
空に現れた《漆黒の穴》により都市もマルヤクデも異次元へ送り込まれたのではないか。

もう1つの可能性は《存在そのものが消滅》させられたということである。
もし《未知のウルトラビースト》《空蝕》が関与していたなら異次元へ連れて行くのではなく街丸ごと、空間そのものを削り取り物理的に消し去ることが可能だったとも考えられる。
どちらであれ、ただの巨大ポケモンの暴走では説明がつかないのは間違いない。

いいね! 1 この記事が気に入ったら「いいね!」してね

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です