【解決済】惨劇の収穫祭

発生日時:2017年10月
発生場所:アローラ地方・アーカラ島
関与ポケモン:ドデカバシ(1体・野生)


【解決済】惨劇の収穫祭

2017年10月15日、アローラ地方《アーカラ島》南部の集落《レオケ村》で開催されていた伝統的な収穫祭の最中、1体の《ドデカバシ》が突如として祭りの広場に飛来し観客の男性1人を鋭いくちばしで襲撃、頭部を砕く深刻な損傷を与えその場で即死させるという前代未聞の事件が発生した。

事件は夜8時30分頃、祭りの最高潮を迎えていた炎舞の演目中に起きた。
打ち上げられた火柱と太鼓の音が響く中、空から滑り込むように現れたドデカバシは歓声と灯りの中心をめがけて急降下し、舞台前列にいた中年男性に向かって一直線に突撃。
するとそのままくちばしで返り血を浴びながら頭部を十数回突き、その後上空を一周旋回した後そのまま近くの森林地帯へと飛び去っていった。
全てはわずか十数秒の出来事だったが現場にいた数百人の観客は悲鳴を上げて逃げ惑い、炎の光の中で響く羽音と断末魔が祭りの夜を一変させた。

すぐに駆け付けたレオケ村の警備員が現場を封鎖し、通報を受けたアーカラ警察と野生保護局が到着したのは事件からおよそ20分後だった。
周囲の林に残された足跡と羽根、さらには現地住民の目撃証言をもとに赤外線ドローンと網弾による追跡捕獲が開始され、1時間後には村の北にある谷の窪地にてくちばしに鮮血が滴るドデカバシが発見・捕獲された。
現地報告によればそのドデカバシは金属ケージの内部でも激しく羽ばたき続け、警戒音に近い鳴き声を断続的に響かせていたという。

 

事件発生当初、自然との調和を大切にするアローラ文化の中でポケモンが人を襲うという異常事態に人々は動揺し、その原因としては一時的な興奮状態や繁殖期における錯乱、あるいは炎や音への過敏な反応などあくまで《偶発的な要因》及び《その場にいた人々が原因》とする想定がされていた。
だが、アローラ生態研究所の後続調査によって事態は予想以上に深刻かつ意図的なものであったことが判明する。

地元警察と共同で押収された被害者のスマートフォンの解析により事件当日に撮影されたと思しき写真群が見つかり、その中には営巣中の鳥ポケモンの巣を木の棒で破壊している様子や、それを面白がるような発言が記されたメッセージの履歴が残されていた。
さらには数ヶ月にわたって複数回、同じ林に足を運び繰り返し営巣地を荒らしていた形跡すらあり、最新の画像では複数のツツケラを殺害して気に吊るしているものがあったという。
これにより被害者の行為が長期的かつ悪質な生態系破壊であった事実が裏付けられ研究所は今回の襲撃について『ドデカバシによる報復行動』と断定した。

被害者は地元住民ではなくアーカラ島を訪れていた観光客だった事もあり、事件直後は命を落とした旅人への哀悼の声が上がっていたが、明るみに出た一連の行動記録により自然との共生を重んじるアローラの住民達は破壊行為に及んだうえにドデカバシの家族を奪った人物への反感が一気に燃え上がった。
追悼の場は一夜にして糾弾の場と化し、その話題はSNSにも広がっていき様々な人が過激な発言を繰り返し行い、祭りを中断に追い込まれた地元住民の間でも怒りの矛先が観光客全体へと向けられる事態となった。

加えてこの混乱の最中に行政が打ち出した【観光客受け入れ体制のルール改定】がさらなる火種となる。
アーカラ島は観光業に大きく依存しており祭りや自然観光を収入源とする地域も多いため、観光客排斥の流れを緩和すべく森への立ち入りを原則禁止としつつもガイド同伴であれば許可するという措置を導入した。
しかしこの方針が『金のためにまた自然を犠牲にするのか』との批判を招きかえって村民感情を刺激し、抗議運動にまで発展した。

最終的にレオケ村議会とアーカラ島当局は長期的な協議の末、収穫祭そのものの存続を優先することために今後は海沿いの広場での開催とし、森側には柵を設けてガイド無しでは容易に立ち入れられないようにした。
だが事件以降はレオケ村の住民の多くがガイド役を自ら買って出ることを拒んでおり、事実上の《観光拒否》が今も続いている。
さらにレオケ村では現在も観光客を見かけるたびに『森には近づくな』と声をかけることが暗黙のルールとして根付いており、訪れる観光客も居心地の悪さをネット上で広めている。

なお、襲撃を行ったドデカバシは現在もアーカラ野生保護施設に隔離されているが、その境遇を哀れむ声も多く、自然へ返そうとする署名活動が展開されている。
だが人間に対して明確な敵意を示した過去があることから保護施設側は依然として外部との接触を厳しく制限しており、再野生化の見通しは立っていない。

――文・【ヤマモト・セイカ】(アローラ地方生態事件調査室)


【管理人の感想】

炎の光と太鼓の音に包まれた祝祭の空間が一瞬で断末魔に塗りつぶされた光景を想像するとその場にいた人々の恐怖は計り知れないものだったに違いない。
しかし被害者が長期的に野生ポケモンの巣を破壊していた事実はただの迷惑行為では済まされない悪質さを伴っているのではないだろうか。
観光で訪れた場所で生き物の命を弄び、それを記録して楽しんでいたという残酷さを思うとドデカバシの行動が報復であったとする研究所の見解は重い現実として受け止めざるを得ない。

また、アローラという土地の特性が事件後の反応をより鋭いものにしたように感じられる。
自然との共生を誇りとしてきた地域だからこそ命を奪われた者を悼む気持ちよりも、命を弄び破壊を重ねた者への怒りが勝ったのだろう。
追悼が糾弾へと変わり、観光客全体への敵意にまで拡大していったのは長年積もっていた不満もあったからなのではないだろうか。

捕獲されたドデカバシの扱いについても人々の感情は二分されたままだが自然に返すことはやはり難しいと感じる。
だが同時にその行動に至らざるを得なかった背景を考えれば単なる危険生物として切り捨てることも残酷であるため、施設内で保護し続けるしかないのではないだろうか。

この事件を通じて突きつけられるのは自然と人間の関係が決して穏やかで均衡したものではないという現実だ。
一方が過度に踏み込みすぎれば必ず反発が生まれ、その衝突は時に取り返しのつかない形で現れる。
レオケ村に残る観光拒否の空気はその痛ましい教訓を今も静かに刻み続けているのではないかと感じさせられた。

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