【解決済】風を裂く守り神

発生日時:1984年9月
発生場所:イッシュ地方・リバース峠
関与ポケモン:ウォーグル(1体・野生)


【解決済】風を裂く守り神

1984年9月、イッシュ地方北部に位置するリバース峠で登山中の親子による救助要請が山岳局に寄せられた。
当日の通報内容は簡潔で、山道の崩落と進行不能を訴えるものであったが救助支援を求める通信がなされた直後叫び声とともに通信が途絶えた。
通報を受けた救助隊5名は即座にヘリポートから現地に向かったが親子の姿はなく、捜索の末、日没直前に岩場の下方に転落した2人の遺体を発見した。

現場確認を行うため崖下へ降りていくと風を裂くような鋭い鳴き声が山中に響き渡り、見上げると上空には大きな影が旋回していた。
影の正体は通常個体より遥かに巨大な《ウォーグル》であり、約8メートルに達する翼幅を持ち、全身が漆黒の羽根に覆われ、額は青く輝いていたという。

隊員達がウォーグルの存在に気づいた直後、大気が震える程の鳴き声をあげながら急降下し隊員たちに向かって突撃した。
第一波の襲撃で3名が念動力のようなチカラで吹き飛ばされながらズタズタに引き裂かれる負傷を負い1名が即死し、その後応戦した2名のうち1名も直後に致命傷を負いその場で命を落とした。
重傷を負いながらも生存した隊員のうち1名が無線で追加支援を要請し、2時間後、ポケモンレンジャー部隊がヘリおよび陸路で現場に到着。

現場は見るも無惨な状態になっていたがウォーグルの姿は無かったため救助隊が遺体の確認と収容を行いつつレンジャー隊員7名が周囲を警戒しながら見張った。
すると再び上空から大気を切り裂くような鳴き声が響き渡りウォーグルが現れたためレンジャー隊は即座に戦闘体制を取った。

隊員の一人がジュカインを繰り出しリーフストームを用いてウォーグルの視界を潰し救助隊が無事に運べるように補助をした。
別の隊員が繰り出したトゲキッスが空中からウォーグルを追跡し上空に誘導することで戦場を山腹から斜面上空に移動させた。
そこにフワライドが上昇気流を発生させウォーグルの飛行軌道を逸らしながら隊員最強の二人によるサザンドラドラパルトで交互に攻撃を繰り返し空中でウォーグルを翻弄した。
その後、飛行姿勢を乱した隙を突きフワライドにぶら下がっていたドククラゲの猛毒攻撃とトゲキッスに乗っていたパラセクトの催眠粉によりチカラを出せなくなったウォーグルは緩やかに墜落。
最終的に捕獲には専用の防衛ネットと3名がかりでの鎮静作業が必要とされ、制圧には実に27分を要したとされる。

捕獲後、研究所で応急処置を施されたウォーグルは異様なまでに興奮状態にあり、体のあちこちに多数の古傷が確認された。
その後の調査で事件発生地から北に外れた谷間にムックルポッポ等の雛と見られる個体が複数発見された。
雛はそれぞれ異なるポケモンで、全てが翼などに怪我を負っており弱った状態で巣穴に身を潜めていたという。
これらの状況からウォーグルが傷つき見捨てられた雛達を集め保護していたことが判明し、本事件は【防衛行動による襲撃】と断定された。

ウォーグルと雛達はレンジャーによってしばらくの間保護され、治療後に周辺の生態系調査を行い、その後再び野生へと返された。
本事件は当時のメディアでも広く報道され【野生ポケモンの縄張りを無視した登山の危険性】【人間が開拓した山道に危険ポケモンが存在する是非】をめぐって世論は真っ二つに割れ、議論は過熱していった。
環境保護団体はウォーグルの保護と峠の立入禁止を求める一方、犠牲者を出した事実を重く見た一部議員は野生ポケモンへの監視体制強化を叫んだという。

その後数年に渡り長らく議論が続いたが近年になって自然保護と共生の方針が重視される流れを受け、リバース峠の登山道は正式に封鎖され一般の立入が禁じらるようになった。

――文・【マイケル・ウィートリー】(イッシュ災害記録調査会)


【管理人の感想】

ウォーグルが初めに見せた激しい攻撃性や人命を奪うほどの凶暴性は明らかに自然災害や事故とは異なる【意志】を感じさせる暴力だった。
だが、後に明らかになった雛たちの存在によりウォーグルは一貫して《守護者》であったことがわかるのが何よりも重かった。

特に、雛たちの種族が全て異なっていたというのがとても印象的で、ウォーグルは自分の雛や同じ種の保護ではなくあくまで《弱り迫害された雛たち》を集めていたという事実が浮き彫りになった。
それは単純なウォーグルの本能だけでは説明できない、極めて高い知性と意志、そして愛情によるものだったとも考えられる。
傷ついた小さな存在を誰にも奪わせまいとするような執念にも似た防衛は時として悲劇を呼ぶものだが、その背景にある動機がここまで明確でそして切実だった例は珍しいのではないだろうか。

最終的にリバース峠の立入禁止という判断はようやく人間側が一歩引いたとも言える結末で、これは自然との向き合い方において極めて象徴的な事例だったと思う。
暴力で守るしかなかったウォーグルの行動とそれを受け止めきれなかった人間の距離感は今もなお多くの場所で似たような事例が繰り返されているのではないだろうか。
だからこそこの事件はただの過去の災害としてではなく《守るという行為の重さ》を問うものとして今後もずっと記録されるべきものだと感じた。

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