発生日時:2015年2月
発生場所:カロス地方・クノウ塔跡
関与ポケモン:バクーダ(1体・トレーナー所有)
関与人物:リゼル・フォンテーヌ(研究員/逃走中)
【解決済】ハカリノミコ
カロス地方南部、切り立った崖沿いに点在する古代の遺構群の1つ、《クノウ塔跡》の地下にて後に過去最大級の民間信仰絡みの大量死事件とされる儀式が発覚した。
クノウ塔跡は地元住民の間で【誰も近寄らない塔】として知られており、その理由も明確なものではなく、ただ漠然とした忌避感と不吉な噂に満ちていた。
転機となったのはある《若い旅するトレーナー》が探索目的で塔跡に立ち寄り、朽ちかけた回廊の崩落跡を越えた先で岩の裏に隠されていた金属製の巨大扉を発見したことだった。
偶然にも仕掛けを解いた彼が中に入って目にしたのは地下空間とは思えないほど広大な空洞、そしてその中央に設えられた信じ難い異形の儀式場だった。
彼の目にまずはじめに飛び込んできたのは中心に鎮座している業火をまとった異様な程巨体な《メガバクーダ》であった。
その大きさは優に20メートルは超えており、その両脇には左右対称に巨大な天秤が設置され、各皿の上には泣き叫ぶ人間が5〜6名ずつ、それぞれの手足を鎖で繋がれた状態で乗せられていた。
さらにその周囲には古めかしい言語で詠唱を唱える数十名の信者達が円陣を組んで立ち並んでおり、その光景はどこか儀式というよりも処刑の準備にも似ていた。
やがて天秤の一方がゆっくりと傾き始めた瞬間、バクーダの体内から滲み出るように溶岩が流れ込み、低くなった側の皿を呑み込みながら焼き尽くし、阿鼻叫喚と共に乗せられていた人が炎に包まれた。
あまりにも異様な光景にトレーナーは動揺しつつも儀式をこれ以上行わせないために手持ちのポケモンを繰り出し、《中央にいた女性指導者》とバクーダに戦闘を挑む事を決意。
だが、バクーダの巨体から繰り出されるチカラは想像を絶する火力をしており、主力である水タイプの技もバクーダの一度の噴煙により全てが蒸発した。
その際、部屋の温度は急激に上昇し、バクーダの側にいた儀式の生還者達は全身が燃え上がり、近くの信者達も次々に倒れてく地獄絵図となった。
その後もバクーダによる一方的な戦闘が繰り広げられるが、視界を塞ぐ煙が立ちこめる中、トレーナーは持てる限りの攻撃を継続し、偶然にもバクーダの背に設けられた巨大な天秤の一部を破壊することに成功。
崩れ落ちる天秤が地面に叩きつけられ轟音が鳴り響き騒然とする会場で女性指導者は一度天秤と信者、そして犠牲者達をゆっくりと見渡すと、無言のままバクーダと共に奥の通路へ姿を消した。
残された信者達は困惑し立ち尽くしたが、トレーナーは隙を逃さず応戦してきた者を撃退し、完全にその場を制圧しすると通報を行った。
通報を受けて現場に急行した警察部隊はその場に残っていた信者全員を拘束し、地下施設はただちに封鎖され、、大規模な現場検証と聞き取り調査が行われた。
施設の奥の方では壊れた巨大な天秤が廃棄されていたほか複数の部屋があり、逃亡した女性指導者が使用していた専用の控室や、外部に通じる脱出通路だけでなく、拷問器具のような道具や複数の拘束具が置かれた収容部屋が複数確認された。
施設の規模や聞き取り調査により最大で30人以上が同時に《生贄》として準備されていたことが判明している。
その後の検視や信者の供述から現場で死亡したとみられる犠牲者は少なくとも858名に上り、その大半がカロス地方内で過去に失踪届が出されていた一般市民だったことが判明。
被害者には10代前半の若者も多く含まれており、改めて事件の残酷さと広範な被害規模が明るみに出た。
逃走した女性の身元は信者の証言から【リゼル・フォンテーヌ(当時26歳)】であることが明らかとなる。
彼女の表の顔としては当時カロス地方の民間信仰や地域儀式の研究を主に扱っていた【カロス民間信仰研究センター】に所属している職員であり、その肩書を利用して宗教団体《ハカリノミコ》に出入りしていたという。
研究者としての立場を保ちながら次第に団体の運営中枢に入り込み、比較的緩やかで平和的だった儀式の構造を自身の解釈で改変し、生贄を前提とした危険な形へと変質させていったとされる。
だが驚くべきはその後の警察の過去データベース照会によりリゼルの真の顔は《フレア団初代幹部》の一人であった事が判明。
団の解体後は長らく潜伏していたとされ、再び社会的影響力を得るために宗教団体へと入り込み工作を続けていた可能性が高く、今回の事件は氷山の一角に過ぎないとする見方が強まっている。
現在もリゼルの行方は不明のままであり、国際指名手配リストに名を連ねながら複数の国と連携した捜査が継続中である。
リゼルが去ったあとも《ハカリノミコ》は世間から激しく非難の的にされ、事件以降急速に衰退し、現在ではその名を耳にすることもほとんどなくなった。

――文・【ナギサ・ヴァレリア】(民間儀式文化・対災研究所)
【管理人の感想】
地下空間に広がる巨大な天秤と、それ以上に存在感のあるあまりにも巨大なバクーダという存在の並びはまるで《神の偶像》をそのまま現実にしたような異形さがある。
彼らが《儀式》の名のもとに何百人もの命を奪っていたという事実は、宗教的狂信がどこまで人の倫理を塗り潰せるかを突きつけてくる。
リゼルは天秤が崩れると信者や犠牲者を見渡し無言で去ったとのことだったがそこに彼女なりの《完成》を見ていたのか、あるいは《次の計画》を考えていたのかは分からないが、少なからず共に過ごしてきた仲間である信者達がいたり、多くの者が炎に包まれ阿鼻叫喚の惨状でありながらも一言も発さずに退場した冷淡さに恐怖を覚える。
だが何より恐ろしいのがこの悍ましい事件の中心に立っていたのが宗教家ではなく《元フレア団の幹部》であり《研究者》だったという点ではないだろうか。
元々穏やかで平和的だった宗教をこれほどまでに改宗させてしまうその手腕が今後またどこかで悪の華を咲かせないか考えるだけで重い恐怖に包まれる。
ポケモン自体がどれほど強大な力を持っていようと、持ち主の思想ひとつで《神》にも《悪魔》にもなってしまうという現実は、改めてポケモンと真剣に向き合うべきであると突きつけられているように感じる。
構事件録
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