発生日時:1965年10月
発生場所:アルミア地方・レナン市北部団地
関与ポケモン:ペンドラー(1体・野生)
【未解決】穿つ百足
1965年10月9日午後4時40分頃、アルミア地方【レナン市】北部の団地にて《2度の絶叫》が響き渡った。
周辺住民が現場に駆けつけたことから発覚したこの事件は現在も謎を残したまま語り継がれている。
団地は老朽化の進んだ五階建ての集合住宅で当時は炭鉱業で栄えていた時代の名残を留める典型的な作りの市営団地だった。
少女は小学校から帰宅後、自宅である2号棟1階の一室に戻ろうとしたところ自宅方面から《母親の絶叫》が聞こえ慌てて階段を駆け上がったという。
いつも通り玄関の鍵は開いていたがリビングにもキッチンにも母親の姿は見当たらなかった。
だが奥の浴室へと続く廊下には水が流れ出しており、足を踏み入れると濡れた床一面に紅く濁った水と髪の毛が浮かんでいた。
少女はそこで錯乱し泣き叫びながら自宅から飛び出し、《2度目の悲鳴》を聞いた周辺住民が様子を見に来たため助けを求めたという。
周辺住民の通報を受けて到着した警察と消防が室内を調査した結果、浴室の床のタイルが一部崩落しており、その下には《直径2メートルを超える大穴》が穿たれていた。
穴は地下へと貫通し、水道管が破裂して水が吹き上げており、泥水混じりの冷水が部屋中に流れ込んでいた。
水面には泥以外にも毛髪、皮膚の一部、布切れ、血が浮いており、そして壁のあちこちにも血痕が点在していた。
穴の中に調査員が潜入したところ内壁には《直径20センチ以上の太さの巨大な爪痕》と《粘液の塊》が確認された。
それらは鋭く、ねじれるような形状で壁を抉っており、見慣れない異様な痕跡に専門家らも言葉を失ったという。
事件から1週間後、現場に残された粘液の成分分析によりそれが高濃度の神経性毒素を含む【ペンドラー】のものであると特定された。
ただし、通常サイズの【ペンドラー】でさえレナン市を含むアルミア地方北部の寒冷地帯には生息しておらず、過去に目撃情報も報告されていない。
一度も確認されたことのない野生個体がたまたま《超巨大》で、なおかつ人間に対して明確な敵意をもっていて、地中を掘り進んで突如団地を突き破ったという仮説はあまりに突飛で現実味に欠けるとされている。
専門家の中には【何者かが意図的にペンドラーを放った可能性】を示唆し、これが《怨恨による計画的犯行》であった可能性を示す者もいた。
だが、トレーナー所有であったことを示す証拠は現場から発見されておらず、周辺のトレーナーからも特異個体の目撃証言は得られなかった。
事件当夜に団地付近で異常を感じたという住民もおらず、少女の母親は今もなお行方不明のままである。
団地内には事件後多数の住民が避難し、その多くは戻ることなく市の西側に設けられた新興住宅地に移り住んだ。
事件から半世紀以上が過ぎた今も現場となった団地は健在だが、住民が少なく老朽化も進んでいるため近年取り壊し予定である。

――文・【ヨウ・カミシロ】(アルミア記録社)
【管理人の考察】
異常な侵入経路
浴室の地中から突き上げるように床を破壊し、なおかつ水道管を巻き込みながら貫通するルートをつくるとなれば相応の力と明確な方向性を持った存在によるものと考えるしかない。
犯人の姿を目撃したものはいないが、自然災害とは到底思えず、存在するかもわからない《超巨大なペンドラー》が明確な意志をもって突き進んだとしか思えない異常な現象である。
だが果たして野生個体がわざわざそんなルートを通ってまでして人を襲うだろうか。
もし人が関与していないのであれば、過去にペンドラーと何があったのだろうか
人の関与の可能性
ペンドラーは本来、熱帯〜温暖な地域に分布する種であり寒冷なアルミア北部に現れた時点で生態的には完全に異常といえる。
しかも通常の個体より遥かに巨大で、人間の住居を破壊し、消化器系毒素ではなく神経系毒素を放出している時点で野生個体としての行動範囲や生理反応から大きく逸脱していると考えられる。
これは突然変異による進化や地域変異ではなくやはり人が関与しており、人為的に何らかの強化もしくは異常進化が施されていたと考えるほうが筋が通る。
その場合誰がなぜこの地域にそれを放ったのかという新たな疑問が浮かび上がる。
《誰かが放った》のであれば
事件から半世紀を経てもトレーナー所有を示す証拠は見つかっていない。
しかしだからといって人の関与がなかったとは言い切れない。
むしろ、証拠が何も残っていないことこそが逆に意図的な隠蔽や完全犯罪の構築を想起させる。
都市部でもなく目撃証言も乏しい団地を狙ったという点で、計画性は極めて高いものだった可能性がある。
つまりやはりこれは突発的なポケモンの暴走ではなく明確な目的を持って行われた暗殺、もしくは実験に近い行動だったのではないだろうか。
母親の隠された真実
少女の母親が《遺体が発見されていない》という点も重要なポイントだ。
水面に浮いていたのは髪の毛や皮膚の一部に過ぎず、完全な死体は発見されていない。
また、当時の技術的にも長時間泥水に晒されていたこれらから母親を明確に特定などできなかったのではないだろうか。
つまり、もしかしたら母親はそもそも殺害されておらず、ペンドラーを使用した、あるいは使用者と計画的に行ったナニカであった可能性すらある。
団地が取り壊される前に今一度徹底的に調査する必要があるのではないだろうか。
構事件録
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