【解決済】キンセツ7.21爆破事件

発生日時:2023年7月21日
発生場所:ホウエン地方 キンセツシティ
関与ポケモン:マルマイン(トレーナー所有)
関与人物:キヨミ・オオバ(無職/故人)


【解決済】キンセツ7.21爆破事件

2023年7月21日午後3時12分、ホウエン地方【キンセツシティ】の地下街にて、大規模な爆発とその後の崩落が発生。
商業施設地下2階のフードコートエリアで買い物客と従業員を巻き込んだ本件では、複数の死者と多数の重軽傷者が確認されている。
この爆発はトレーナー所有のポケモンによる《意図的な自爆》で、事件性が極めて高いことから現在でも話題に上がることがある。

 

当時、現場では爆発の瞬間に強烈な閃光と熱波が発生。
床が剥がれ落ち、爆心地付近に至ってはドロドロに溶け、鉄骨が変形するほどの衝撃が走った。
最終的に死亡が確認されたのは35名、重傷者は49名で軽傷者は118名にものぼった。
被害者の中には即死と見られる者もおり、一部の遺体は損傷が激しく身元確認が困難となっている。

爆心地から回収された痕跡とエネルギー反応から、【マルマイン】が関与したものとされた。
通常、ポケモンが爆発すると爆心地で瀕死になっている状態で見つかるが、マルマインの原形は見当たらず、破片らしきものだけが見つかった。
また、現場に残されていた焼け焦げたモンスターボールを確認した所、ライセンス名として【キヨミ・オオバ(19歳)】が記載されていたため、トレーナー所有のマルマインであることが判明した。

しかし、爆心地に最も近い位置にいたとされるキヨミの姿は確認されなかった。
代わりに、彼女のDNAと一致するごく微細な生体痕跡が爆心地から採取された。

このことから、当局はキヨミがマルマインと共に《自爆による無理心中》を遂げた可能性が極めて高いと結論づけている。

 

事件後、キヨミの自宅を捜索した結果、寝室、浴室や鏡などに複数の《自傷・自殺未遂の痕跡》が発見された。
また、部屋の片隅に残されていた日記には以下のような記述が綴られていた。

『もう何も感じたくない。
他人が笑っているのが腹立たしい。
親がいないこの世界で、私だけ苦しいのはおかしい。
何度も終わらせようとしたけど、失敗した。
でも、今度はあの子とならできる。
一緒なら、きっと。』

 

記録によれば、キヨミの両親は事件の3ヶ月前交通事故により他界。
そして事件の1ヶ月前、彼女は通っていた学校を自主退学しバトルリーグからも姿を消した。
近隣住民の証言では、以降キヨミは人との接触を完全に断ち、唯一マルマインとだけ時間を過ごしていたという。

マルマインはかつてキヨミの父親が所持していたポケモンで、10歳の誕生日に与えられたものだった。
父親は優れた電気タイプ使いのトレーナーで、相棒のマルマインは高度な制御訓練を受けていた特別な個体だったという。
周知の通り通常、爆発系の技は威力調整が施されており、実行しても使用ポケモンが消滅するようなことも、甚大な被害が出る事もない。
だが今回は、内部電圧を限界以上に蓄積させる操作が行われ、安全域を大きく逸脱したままの爆発だったとされている。

つまりこれは事故ではなく明確な《意図を伴う破壊行為》で、異例極まりない事件であった。
ポケモンが自身すら破滅させるような技を使うには、トレーナーと深い心の同調が必要とされるため、双方合意の上で実行された無理心中だったという推測は、今なお消えていない。

事件後、SNSやメディアでは爆発技持ちポケモンへの規制を求める声が過熱。
《マルマイン禁止法案》《自爆技制限ルール》などの仮案も複数浮上した。
一方で、キヨミの置かれた境遇を知った人々の間では《この事件を生んだのは社会の側だ》という意見も強まり、議論は今なお続いている。

後日、トレーナー連盟による内部調査では、キヨミが在学中に複数のいじめや差別的発言の標的となっていた記録が明らかにされた。

『バトルが下手で邪魔』

『親にポケモン教えてもらえば?』

『マルマインは雑魚』

『自分でポケモン捕まえてみたら?』

『バトルリーグに参加するな』

『親と一緒に車乗ってたら良かったのにね』

等といった書き込みや証言が複数存在しており、精神的に追い詰められていた経緯が裏付けられた。

現在、キンセツシティの地下街B2フロアは封鎖され、記念碑や慰霊碑の設置も議論されている。
市民の間では、事件現場で時間が止まったような静けさを感じるという話しが広まっており、一部では《まだそこに魂が残っている》と信じられている。

誰もが見過ごしていた孤独と、たった一体のポケモンに託された願い。
それが街を破壊し、人々を変えた。
今もなお、あの爆心地には静かな余熱が残されている。

――文・【ミツル・ナガセ】(ホウエン地域時報)


【管理人の感想】

この事件を初めて知った時は最初はただの事故だと思っていた。
ポケモンの暴走か、何かに引火したか、爆発した場所が運悪くて崩壊を招いたなど、そのような類いの話しなのかと。
だが後に様々な情報が流れ込んできて、今となってはそれがどれほど浅はかな受け取り方だったか思い知らされた。

キヨミという一人の少女が、どんな孤独を抱えていたのか。
マルマインという一体のポケモンと、どれだけ静かな時間を過ごしてきたのか。
そしてその静けさが、最後に街を崩すほどの脅威へと変わったのだと思うと、言葉を失ってしまう。

 

彼女はきっともう他に誰も信じられなかったんだろうと思う。
あの子にとって、マルマインは自分の半身みたいな存在だったんじゃないだろうか。

社会が悪いとか、規制をすべきだとか、そういう議論も当然ある。
だけど私は、この事件をただの危険な技の問題として語りたくないと思っている。

彼女が残した日記はあの子が世界に残した最初で最後の叫びだったのかもしれない。
そしてそれは、誰の耳にも届かなかった叫びだった。

自分だけが世界からこぼれ落ちているような気持ち。
あの子が見ていた景色を、少しでも想像できるようになった気がする。

でも……正直に言うと、やっぱり私は怖い。
これ以上、同じことが起きないようにと願う一方で、
その同じことが、もうどこかで始まっているような気がしてならない。

 

……あの爆心地に、花を一輪置きに行こうと思う。

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