【未解決】夕暮れに呼ぶ雪の声

発生日時:2019年10月22日
発生場所:シンオウ地方・エイチ湖南東の林道
関与ポケモン:ユキメノコ(または不明)


【未解決】夕暮れに呼ぶ雪の声

紅葉が見ごろを迎えた2019年の秋、シンオウ地方北部に位置する【エイチ湖】の湖畔で小さな家族旅行が悲劇へと変わった。
被害に遭ったのは当時8歳だった少女・ナギサちゃん(仮名)。
彼女は両親と姉とともに家族4人で湖畔キャンプを楽しんでいた。

事件が発生したのは午後4時半頃。
テントの設営を終え父親が食事の準備をし、母親がキャンプの様子を撮影していた最中にナギサちゃんが林道の方へふらりと歩いていった。
あまり遠くへいかないよう母親が声をかけたが、目を離したわずか一瞬後にはその姿が完全に消えていた。

直前まで側にいた姉曰く、ナギサちゃんは『呼ばれた気がする』という言葉を残して消えたという。

キッサキ警察と地域ボランティア合わせて70人以上が周辺を捜したが、ナギサちゃんの姿は見つからなかった。
唯一見つかったのは最後に姿を確認した場所から東へ300m離れた林の中で落ちていたナギサちゃんの手袋のみであった。
その周辺だけ気温が異常なまでに低く、手袋を中心に雪が降り積もっていたという。

現場の気象記録では当日は晴天・無風であり、限定的で突発的な雪が発生する条件は揃っていなかった。
さらに不可解な点として周辺に足跡は一切残されていなかった。

その後、少女の家族が警察に提出したスマホの録画データ内で奇妙な音声が確認された。
動画には父親が笑顔で料理したり少女達が楽しそうに遊ぶ姿や、風に揺れる木々と、遠くで鳥の鳴き声が聞こえるだけの平和な映像が続いた。
だが、最後の十数秒間に唐突に《ナギサちゃんの名前を呼ぶ声》が記録されていた。

声は高く透き通っており、風音とも声真似とも判断しがたい。
専門家による分析の結果、声の中に特殊な波長が確認された。
この波長は【ユキメノコ】の鳴き声に近いパターンを持っていたことが判明している。

ただし、事件当日の気温では【ユキメノコ】の出現条件は整っておらず、また、過去一度も目撃例はなかった。
だが、調査の結果2012年にも同様に、夕暮れ時に粉雪が一瞬吹き、《透き通った声に呼ばれた》という別の失踪未遂事件が記録されていた。
当時も同様に子どもが呼ばれていたが、親と手を繋いでいたため難を逃れたのではないかと予想されている。

事件から2年後の秋、キャンプ場再開の準備で訪れたスタッフが一本の太い木の枝を見つけた。
そこには不自然なまでに白く変質した木の樹皮に少女の名前と《判別不可能な文字のようなナニカ》を刻んだ彫り痕があった。
すぐに通報をうけた警察により再び捜索されたものの、それ以上の痕跡は見つからず数日後には捜索も打ち切られた。

この事件を受けてエイチ湖周辺では現在も《夕暮れ時の林道には近づくな》という注意喚起がなされている。
現地住民の中には『局所的な霧が発生していた』『湖の上に人影があった』という体験談を語る者もいるが、それが何だったのか、誰だったのかは、今も分かっていない。

――文・【イソベ・ナオミ】(シンオウ地方特派ジャーナリスト)


【管理人の考察】

【《呼ばれた》のは幻聴か、それとも共鳴か】

ナギサちゃんは『呼ばれた気がする』と言い、誰の姿も見えない林道へふらりと入っていった。
この声は映像にも透き通った声として記録されていたため、外部からの明確な呼びかけだった可能性がある。
問題は、それが映像を確認するまで【本人にしか聞こえなかった】ことである。
どのような原理で映像にだけ音声が残っていたのかはわからないが、一種の精神波干渉だったのではないかとも考えられる。

【突発的な低温現象と局所降雪の異常】

晴天・無風の状況下で手袋の周囲にだけ雪が積もっていたというのは明らかに自然現象ではない。
このような《限定空間での極端な冷却現象》は、こおりタイプのポケモンが高密度にエネルギーを集中させた場合に起きうる現象と考えられる。
特にユキメノコはその周囲の温度を急激に下げ、視界を歪ませる能力を持つためやはりユキメノコが関わっていた可能性が高いとみれる。

【名前が刻まれた木は痕跡か、それとも封印か】

事件から2年後に発見された少女の名前が刻まれた白い木。
これが本人の手によるものとは考えにくいことから、何者かが刻みつけたと解釈するべきだろう。
また、共に刻まれていた《判別不能な文字》が何らかの契約または隔絶を示す記号であったとすれば…
ナギサちゃんは戻れない領域に存在を移されたのかもしれない。

【過去の類似事件との関連性】

2012年の失踪未遂事件と本件には驚くほど多くの共通点がある。
どちらも粉雪が吹きすさび、ユキメノコに類似した声に、夕暮れ時の林道で呼ばれたという。
これらが偶然でないとすれば一定の周期、もしくは何らかの《特定の条件》が揃った時に発生する現象である可能性が高い。

【《連れて行く》存在の目的】

もっとも恐ろしいのは、呼ぶ側がなぜ子供ばかり選ぶのかという点だ。
純粋な感受性を持つ者のみが声を聞けるとすれば、それは【意思疎通のための選別】なのか…
あるいはナニカへの【代償としての供物】なのか……

そしてその呼ぶ声が優しく、綺麗な声であることも本当に恐ろしい。
ナギサちゃんは誰にも見えない何かに微笑みかけられ、安心してついていってしまったのかもしれない。


【管理人の感想】

この事件を読みながら私は何度も胸の奥がひやりとするのを感じた。
静かで穏やかな湖畔、子どもの笑い声、差し込む秋の光……
その全てがいとも簡単に《向こう側》に連れて行かれる光景を想像すると本当に恐ろしい。

『呼ばれた気がする』

ナギサちゃんが残したその一言からは不安も恐怖も感じられない。
それなのに、事件の全てが不気味で恐ろしい。

声の主が本当にユキメノコだったかは誰にも分からない。
何を目的にしていたのかも、どこへ行ってしまったのかもわからない。

彼女の名前と謎の言葉が刻まれていた木がより一層不気味さを掻き立てる。
その白く変色した樹皮はまるで時間が止まった記憶のようにも感じられた。
もしかすると今も、あの林のどこかにナギサちゃんはいるのかもしれない。

そして、夕暮れの風が揺れるたびに、また誰かが呼ばれるのかもしれない。

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