【解決済】凍結列車と王者の威厳

発生日時:2003年2月
発生場所:カロス地方・ブランシュ山脈
関与ポケモン:ユキノオー(複数・野生)


【解決済】凍結列車と王者の威厳

2003年2月、カロス地方北東部にある《ブランシュ山脈》を走る人気のある観光列車がゆるいカーブで急停止し、数十秒程すると車体の継ぎ目やドアの隙間から白い霧のような冷気が入り込み、手すりや窓枠が凍りついていき暖房器具がついているにも関わらずまるで吹雪の中に立たされたかのような猛烈な寒気に人々が包まれていった。
運転士が車内放送を使用して状況を伝えようと試みるも機器類は作動せず、やがて車両の電源が全て落ちたことにより暗闇の中に包まれながら急速に凍りついていき、脱出を試みようとした者達が窓を叩こうにも既に分厚い氷に覆われており割れることはなく、全車両が混乱の渦に飲み込まれた。

分厚い氷の影響で外の景色はあまり見えなかったが、全車両にて林からゆっくりと姿を現す《大型の白い影》が目撃され、それらは斜面を横切って線路際に並び、大きな声を上げながら腕を何度も地面に叩きつけ、ジリジリと前進し列車の側面を囲むように間合いを詰めていった。
その光景を目にした乗客はパニックを起こしている者と息を潜める者が混在するようになり、やがて白い影がより近づきそれが目を真っ赤に輝かせる《ユキノオー》の群れであることが判明するとパニックを起こしていた者達が反対側から出ようと再び凍りついた窓を叩き始め、その音と振動によりユキノオー達はさらに興奮しだしたため息を潜めていた者達がそれらを辞めさせようと抑え込んでいき、徐々にそれが争いへと発展し車両内はより混沌と化した。

誰もが己の身を案じる事しか出来なかった中、この時たまた乗車していた当時の《カントー地方チャンピオン》である少女が相棒のルカリオを繰り出し、ユキノオー達のいる側の扉を一撃で破壊し、車内にはキュウコンを待機させ外から冷気が入らないようにしつつ車内をゆっくりと温めさせ、単身猛吹雪の車外へと歩を進めた。
少女は並ぶ群れとの距離を計りつつ腕を大きく広げて退避するよう叫び、列にいた個体の幾つかはその声に恐れ一歩二歩と下がったが、群れのオス達と思われる一際大きな個体達はさらなる大声をあげながら前脚を雪にめり込ませ、重いい足取りでジリジリと詰め寄る気配を見せた。
これに対して少女は袖をまくりあげメガストーンを露出させエネルギーを送り込みルカリオメガシンカさせると、ユキノオー達から一切目を離さないまま静かに一言だけ《波動弾》を練り上げる指示を出し、それを受けてルカリオが構えると一帯の雪を一瞬で蒸発させ山脈に反響する低い唸りを伴いながら極大の光の玉が発生し、その後金属音を響かせながら徐々に光の玉が圧縮され光り輝く玉が出来上がると列車を包んでいた氷も全て溶けて水になり、その状況を乗客たちが固唾をのんで見守った。

波動弾を放つ指示は出されないまま少女は改めて全固体に聞こえるように大きな声で山に帰るよう呼びかけると、先頭にいた一際大きなユキノオーが大きな声を上げて背を向け林へと駆けるとそれに伴い全固体が一斉に林の奥へと走り去っていき姿を消した。
その後、乗務員達とチャンピオン等が各車両の怪我人を確認しながら毛布や飲み物を配っていき、第一報を受けた地元レンジャー隊と鉄道保全班が現地へ到着し、怪我や凍傷が見られる者達は全員搬送された後、列車は運行を再開してその日の夜に目的地へと無事到着した。

後日改めて周辺を広く調査した結果、近隣で前年末に発生した小規模な雪崩の影響で低木帯の一部が押しならされ、渓流に沿って新しい道が開けたことで斜面上部から谷底へ移動する最短ルートが形成されていたことが判明し、その道が偶然にも鉄路を直角に横断する地点と重なり、ちょうど斜面を上ってきた群れと列車の進行が交わったことで群れを守るための防衛反応であったと結論付けられた。

鉄道会社はこの踏査結果を受けて翌シーズン以降に線路脇の点検回数を増やし、横断する群れが安全に通れるように複数箇所にわたり野生ポケモン用の横断トンネルを新設し、線路に隣接して崖がある複数区画の線路上には雪覆いを兼ねた屋根を設けて橋として渡れるようにするなどの対策を実施した。
その後全ての工事は2012年に完了し、以降は同様の列車停止や急激な車体凍結の報告は勿論野生ポケモンとの衝突は発生しておらず、互いに干渉しない距離感を取り直したことが記録で確かめられている。

――文・【クレール・ボネ】(カロス山岳異常記録調査室)


【管理人の感想】

列車が突如として停止しわずかな時間で内部が氷に閉ざされていくのは想像するだけで震えるほどに恐ろしい。
冷気そのものも命を脅かす要因だがそれ以上に恐怖が連鎖して人々が混乱し、逃げ場のない空間で衝突や争いが生じた混沌ぶりには背筋が冷たくなる思いがした。
あの場に居合わせたら自分も冷静さを失ってしまっていたと思うと直接巻き込まれなかったことを心底安堵する気持ちが強く残る。

そんな極限状態で状況を収めたのが偶然乗り合わせていた若きチャンピオンだったことはとても印象深い。
力を誇示するのではなく単身表にでて退避を呼びかけ、最後まで無駄な争いを行わず全固体を無傷で退避させたその姿勢はまさに王者の威厳を感じさせた。
列車を囲んだ群れの迫力も凄まじかっただろうがそれを前にしても乗客を守り抜いた振る舞いは人々に彼女が勇敢だけではなく冷静さと誇りを兼ね備えた存在に映ったはずだ。

その後の鉄道会社と地域による徹底した対策もまた素晴らしいと感じた。
自然の営みを単に排除するのではなく、野生の群れが通れる道を確保しつつ人々の安全も守る形に整え直した発想は地域と自然との共存を真剣に考えた結果だったのだろう。
今では安心して旅を楽しめる環境が築かれており、いつか自分もブランシュ山脈を訪れ列車に揺られてみたいと思えた。

これは恐怖の記録であると同時に、人と自然との距離を改めて学ばせる出来事だったと感じる。

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