発生日時:2002年7月
発生場所:ガラル地方・フリント湾
関与ポケモン:ヘイラッシャ(複数・野生)
【解決済】フリント湾海難事案
2002年7月、ガラル地方《フリント湾》で行われていた大規模な巻き網漁の最中に網全体が猛烈な力に引っ張られると同時に複数の《ヘイラッシャ》が海面を弾くように次々と浮上して高波を発生させながら周囲の船へ体当たりを繰り返し、巻き込まれた複数の小型漁船が横転して乗組員の一部が海上に放り出される事件が発生した。
最初に転覆を起こした二隻は網の張り出しを担っていた船で、裂け目から逃げるように奔る魚群を追って突進してきたヘイラッシャが浮子綱と錘綱を巻き取りながら暴れたため船体の片側だけが強く引かれて急激に傾き、甲板の氷箱や器具が滑り落ちて乗組員が足を取られたところへ、海中から跳ね上がった一体の影響で船を遥かに越える高波が発生し乗組員は全員海へと放り出された。
その後も周囲の船を破壊または転覆させながらヘイラッシャ達は暴れ続けた為、漁師達は網に絡まって暴れるヘイラッシャを撃退するために手持ちのポケモンを繰り出して戦闘が勃発。
しかし手持ちのポケモン達では太刀打ちができず苦戦を強いられ、見かねたそのうち一人がランターンを繰り出し全員を海から避難させてから強烈な電撃を放った。
網にかかっていた他の魚はその影響で死滅し、ヘイラッシャも戦闘不能になるかと思ったが、暴れるのは辞めたものの全固体が一斉に波乗りにより巨大な津波を発生させ、網を引っ張りながら上空へと上がった直後ヘビーボンバーによる落下で全ての船を転覆させる未曾有の大災害へと発展した。
それとほぼ同時に救難信号を受信したレスキュー隊及びレンジャー隊が現場に上空と海上から訪れ、激昂するヘイラッシャの群れを制圧しようと準備した所、レンジャー隊の指揮を執る隊長が戦闘への加勢を禁じ、救命を最優先として海に散らばった人々を捜索するよう命じると、相棒のムクホークの背に乗りながらキノガッサを繰り出し、上空からキノコの胞子を撒き散らせてヘイラッシャを全て眠りにつかせる事に成功した。
その後隊長はラプラスの背に乗りながらヘイラッシャ達に近づき、眠りから目覚めるものもいたが隊長は怯えることなく終始穏やかな声色でヘイラッシャ達へ話しかけながら網を一つ一つナイフで切断していった。
全ての網が切断されるとヘイラッシャ達はゆっくりと湾中央の濃い色へ吸い込まれるように潜航していき、十数秒もするとその場から全員が完全に姿を消した。
救助にあたった隊員らは転覆船の周囲で浮環を展開しながら水ポケモンの背に乗せて漂流者を収容していったが最終的に提出された乗組員名簿と海上保安の記録を突き合わせると18名が行方不明となっており、以降も数日に渡り捜索を試みたもののその後3人のみが遺体として発見されるのみであった。
その後の調査では回収された各船のエコー記録に巨影が集まった小魚を追って急速に接近する様子が出ていることが確認され、魚群の逃避行動に引かれて複数のヘイラッシャが網の外側から突進し、先頭個体が半身を差し込んだまま網地を押し広げ、続く個体の体重が同一点に重なって荷重が限界を超え、破断と同時に網が体表へ巻き付いてパニックを誘発したと推定された。
事故を伝える映像は当初テレビ報道や地元紙の写真として出回り事故の痛ましさを伝えていたが、後にSNSへ情報が流通していくと『危険海域で即応した漁師の判断を肯定する声』と、『網に絡まった個体に攻撃を加えた事への批判』が交錯し、その後さらに『逃げ場のない中で巨大ポケモンが複数体暴れていれば致し方ないという擁護』も重ねられて、救命と生態保護の線引きをめぐる議論はしばらく収束しなかった。
一方の技術的検討では当日の網は重量と展張を重視した仕様で逃避する小魚の壁となるには有効だったが、巨体の突進を受け止める補強が施されていないにも関わらず巨体が侵入する余地が多々あり、魚群探知により接近が判明した時点で段階的に外囲いを閉じるべきであったと結論付けられた。
その後、漁業組合は該当エリアとその周辺海域一帯を禁漁区として設定し、網地の強度や巻き取り速度の基準を改定するとともに、ヘイラッシャの生態や行動特性と対処手順を共有する説明会が実施され、翌年以降同様の事故は発生していない。

――文・【オリバー・グラント】(ガラル海事事故調査局)
【管理人の感想】
網の設計や操業の判断にいくつかの改良があれば避けられた可能性のある事故だったことを考えると、胸の奥に重たいものが残る。
この事故は人間だけでなく、網に巻き込まれ身動きの取れなくなったヘイラッシャにとっても生き延びるための必死の抵抗であったことを考えると被害を受けたのは人間だけでなくポケモン側もまた同じだったと感じられる。
行方不明となった18名のうち、数人は結局帰らぬ人となったが一部の者が遺体として家族のもとに戻ることができたのは残された人々にとって唯一の救いだったはずだ。
姿を取り戻せなかった者たちの空白の大きさは計り知れないが、それでも一部でも帰ってきてくれたという確かな事実が悲嘆の中にわずかな安らぎを与えたように思われる。
その後の対応で安全対策が進み、同様の事故が二度と発生していないことは過ちを繰り返さないための努力が実を結んだ証でもある。
海という自然を相手に生計を立てる漁師たちにとってリスクは常に隣り合わせであり、それでも日々海に出ている姿を思うと尊敬と感謝の念を抱かずにはいられない。
彼らの労働が地域を支え、人々の食卓を守っているのだという事実をあらためて強く意識させられる事故だった。
構事件録
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