発生日時:2013年12月
発生場所:ジョウト地方・フスベシティ
関与ポケモン:ニューラ(1体・野生)
【解決済】火傷模様の黒き英雄
2013年12月、ジョウト地方《フスベシティ》北東の斜面住宅地で木造二階建ての民家から出火し、乾いた梁と壁内断熱材が一気に燃え上がる火災事故が発生した。
第一通報は隣家の住人によるもので、通報時に野生の《ニューラ》が玄関脇の窓格子をよじ登って割れ目から侵入していく姿が目撃されている。
数分後には消防隊はすぐに駆けつけ消火活動が開始され、そのおよそ10分後、中に飛び込んでいったニューラが炎に包まれながらも《室内に取り残された幼子》を抱えてフラフラとした足取りで表へと出てくると買い物から帰宅した母親がニューラと幼子のもとへ駆け寄っていった。
抱えられていた幼子はニューラの発する冷気が付与された厚手の毛布に包まれており、表層が軽度に焦げていたものの外傷は一切なかったが、逆に抱えていたニューラの体表は耳房や前腕の毛が焼損して皮膚が斑状にただれ、呼吸が浅く体温維持も困難な状態に陥っていたという。
母親はその姿を認めるや否や即座にコートを脱ぎそれでニューラを包み、近隣住民の協力で幼子とともに最寄りのポケモンセンターへ搬入して救急処置を受けさせる事となった。
その後ニューラには最新機器による治療と無菌環境で入院が施行され、幼子には一酸化炭素曝露の有無の確認及び一時的な入院でのモニタリングが実施されたが、結果として幼子には一切の問題がなかったことが判明し、ニューラも背中に模様のような火傷痕が残ったものの一命をとりとめた。
後の母親の証言により当該のニューラは事件以前から良く庭に出没しては植木の札を引き抜いて並べ替えたり洗濯物を物陰へ運んだり表札を凍らせたり庭に巨大な雪だるまを作ったり等といった軽微な悪戯を繰り返していたことが判明している。
母親はその都度に困惑しながらも縁側でそれらを見る幼子が笑い声を立てて目で追う様子を何度も経験しており、またニューラも幼子がいる時にだけ行っている事もあり、致命的なトラブルや食材を荒らさない限りは注意はしつつも手を出さないようにしていたという。
そんな経緯もあり、母親は我が子を守り救ってくれたニューラの費用負担と通院介助を申し出て、回復過程に必要な静穏な環境を保証するため家族は新住居に引っ越すまでの仮設住宅では室温と湿度をセンターの指導値に合わせた室内とは思えない寒さの中、自身と幼子は厚着で耐え凌ぐ生活を送っていくこととなった。
数カ月後、保護と回復を経たニューラは人に対し攻撃性を示さず、過去の悪戯が火災に影響していない事と家屋火災時に明確な救助行動をとっていること、治療中も医療者の指示に反する事がなく現在の家族と問題なく生活を送れている事などを評価され行政上の分類を野生から《保護個体》へ変更され、新住居でそのまま家族のもとで生活することを認められた。
それから十年が経過した2023年4月、かつて救われた幼子である少女はトレーナーライセンスを取得し最初のパートナーとして件のニューラを選び《ポケモンリーグチャンピオン》を目指してジムへの挑戦の旅路へと出発した。
そして2024年3月に少女は《8つのジムバッジ》をそろえ《2024年ジョウトチャンピオンリーグ》への参加資格を得て、その年のチャンピオンへと輝いたことが地元紙に大々的に掲載されているが確認されている。
ジョウトチャンピオンとなった少女は現在《2025年カントーチャンピオンリーグ》を目指してカントー地方のジム巡りを行っており、ジョウト地方、特にフスベシティでは地元のチャンピオンが2地方制覇の偉業を果たす事を期待して応援を続けているという。
ニューラが飛び込まなければ亡くなっていた可能性が極めて高い悲劇の出火から始まった一連の出来事は、雪解け水が作る細い流路の間で折り重なるように続いており、火傷模様を背負うニューラと少女はその栄光へと向かって今も突き進んでいる。

――文・【ミヤシタ・ユイ】(ジョウト災害記録調査班)
【管理人の感想】
燃え盛る炎の中から小さな命を抱えて現れたニューラの姿は偶然ではなく必然として現れた、まさに英雄の姿だったと感じる。
普段は庭先で悪戯を繰り返し家族を困らせながらも笑いをもたらしていた存在がいざという時には命を張って守りにいった事実には本当に胸を打たれる。
炎に焼かれながらも自らを守るためではなく幼子守ることだけに冷気を使用し、優しく抱きしめ守り抜いた姿を思うとそこにはただの野生ポケモンには無いような《強い意志》があったと感じる。
その時負った火傷の痕は消えることはなかったがその痕こそが英雄としての証であり、家族と共に歩む未来へつながる《絆の印》となったのではないだろうか。
さらに心を動かすのはその幼子が成長し《最初のパートナー》としてニューラを選び旅立ったという後日談である。
深い絆を形成し、英雄と共に旅をし、様々な苦難を乗り越えて《ジョウト地方チャンピオン》のへとたどり着いたのは家族だけでなく地域全体に感動を与えた。
今後また英雄の背中を見て目標を掲げるトレーナーが数多く育つのではないだろうか。
この一連の出来事は悲劇と感謝、そして希望が折り重なっており《黒き英雄》と呼ばれるにふさわしい証左であると深く感じる。
構事件録
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