【未解決】黒化した紅の礁帯

発生日時:2011年4月3日
発生場所:ガラル地方・ヨロイ島南東海域
関与ポケモン:サニーゴ(多数・野生)


【未解決】黒化した紅の礁帯

2011年4月3日、ガラル地方ヨロイ島南東の沿岸海域において広範囲にわたる《サニーゴの大量黒化および死滅現象》が確認された。
この事件が波紋を呼んだのは単なる生態的異常ではなく、同海域に近年突如現れ定着していたサニーゴ群が観光資源として公的に取り扱われていたという背景による。

ガラル地方では元々《ピンクや水色のサニーゴ》の生息地ではなく、少なくとも2000年代初頭に行われた生態調査では《白いサニーゴ》以外一切確認されていなかった。
ところが2008年5月頃を境に突如として《大量のピンクのサニーゴ》が漂着、定着し始め、その鮮やかな群体は沿岸一帯に広がった。
これを受けて地元自治体およびガラル観光局は同年6月にはこの海域を《紅の礁帯》と命名し、サニーゴ観察を主目的とする海中ツアーやエコ観光プロジェクトを開始。
以後、年間を通じて多くの観光客が訪れる一大観光地として知られるようになった。

しかし事件当日、漁業従事者によって報告されたのは鮮やかな紅の群体が《黒化して動かなくなっている》という異様な光景だった。
直後行われた潜水調査によって明らかになったのは《全長10キロにも及ぶ紅の礁帯》における《全てのサニーゴ》が黒化して死滅し、礁帯が壊滅していたという事実である。
死骸の一部は水面にまで浮上しており、その総数は少なくとも《25,000,000体以上》にのぼるとされ、ガラル地方の歴史においても前代未聞の大量死滅であったという。

調査班が行った初期分析では、海水のpH変動、微生物群濃度の上昇、水温の上昇などが記録されたものの、毒性物質や特定の有害化学反応は確認されなかった。
また、他の水棲ポケモン(タマンタ、ケイコウオ、ヒトデマンなど)の個体群に異常はなく、《サニーゴのみ》死滅したという点はまさに異質である。

 

この異常の原因を巡ってはいくつかの仮説が挙げられている。

そのうちの一つとして例をあげると、一部の研究者やメディアはサニーゴの天敵とされる【ドヒドイデ】の関与を疑う声を上げていた。
ドヒドイデはサニーゴを執拗に追い回す性質があり、精神的ストレスや外敵圧によってサニーゴが白化に至る例は、アローラ地方の報告で既に知られている。
しかし今回の事件ではヨロイ島南東海域においてドヒドイデの生息は一切確認されておらず、《白化ではなく黒化》している事からも別の要因の可能性が極めて高いとされている。
仮に外海から一時的に流入した可能性を考慮しても、それだけでこの規模の群体死を一夜で引き起こすとは考えにくいため《ドヒドイデ関与説》には否定的な声が次第に増えていった。

 

そもそもなぜこれほど大量の《ピンク色のサニーゴ》が突如としてヨロイ島周辺に現れ、定着したのか。
この最大の疑問に対し未だ明確な答えは出ていない。
生息適正の確認、生態系への影響評価、保護区指定の有無といった根本的な調査をしないまま、政府と地方観光部門は《資源》としてサニーゴを使用してしまった。

その結果、『大した対策も調査もせず、環境変化のわずかな揺らぎで崩壊するような脆弱な群体をあたかも永久資産であるかのように扱った』という批判が事件発生直後からネット上で相次いだ。
一時はガラル政府により鎮火されたものの、その後も『誰が、何の責任を持ってこの現象を引き受け、今後どう対応するのか』について今もなお議論されている。

 

今や《紅の礁帯》と呼ばれたその海域は人の無関心と期待がもたらした崩壊の象徴となりつつある。

事件後、ヨロイ島周辺の観光事業は一時全面停止。
海洋庁は専門チームを組織し、今回の黒化を引き起こした可能性のある要因について長期的調査を開始した。
だが、その途中経過は非公開とされており、再び群体が再生する兆しも今のところ確認されていない。

かつて多くの人を魅了し、称えられたあの群体は、なぜこの場所にたどり着き、なぜ死に絶えていったのか。
その問いに答えられる者は今もいない。

――文・【ナガセ・ユウリ】(ガラル環境記録協会)


【管理人の考察】

手遅れ過ぎた《気づき》

ヨロイ島の南東に突如現れたピンク色のサニーゴ。
それはかつてこの海に存在していなかったはずの生き物だった。
2008年の段階で数千万体ともいえる群体が沿岸に広がり、あっという間に《紅の礁帯》という名まで与えられた。
だが、誰も《なぜそこに突如として現れたのか》を真剣に考えようとしなかった。
この不可解な出現に対して行われたのは研究でも検証でもなく《観光資源としての転用》だった。

言葉を選ばずに言うなら、私たちは《正体不明の紅い群れ》に浮かれていたに過ぎない。
その根がどこにあるのかも知らずに。

原因究明と責任追及

事件直後からまず話題に挙がったのがアローラ地方での記録に基づいた《ドヒドイデ関与説》だった。
確かに、ドヒドイデがサニーゴの天敵であるのは周知の事実であり、その影響で白化を引き起こすという報告は存在する。
だが、今回は《黒化》であり、このヨロイ島南東海域にドヒドイデが確認された形跡は一度もない。
《わかりやすい敵、原因》を欲しがる人間の心理が働いたと言えるが、結局それらはほぼ全て否定されている。

そもそも、《紅の礁帯》の破滅がこれほど速かったのは守られる設計になっていなかったからだ。
保護区指定もされず、生態圏に与える影響も測られず、ただ【綺麗だから、珍しいから】という理由でツアーと広告に消費された。
発生したその異常性も、脆さに対する理解も措置もなかった。

そして群体が一夜で崩壊した今、誰がその死の責任を引き受けるのかという話になると皆が沈黙する。
【自然のことだから】【仕方ない事】とか【元に戻っただけ】といった曖昧な言葉で終わらせる空気が蔓延している。
果たして本当に誰にも落ち度はなかったのだろうか。

大量定着、大量死滅したことにより変化した環境を【元に戻った】とは到底思えない。

サニーゴは死んだのか、殺されたのか

大量のサニーゴたちはなぜ同時に黒化したのか。
環境変化が原因だったのか、それとも外的要因、人為的な関与などがあったのか。
未だに答えはないが、一つ考えられるのは《ある種の限界を超えたのではないか》ということだ。

ウイルスなのか毒物なのか、未知のエネルギーなのかそれはわからないが、数年にわたって《ナニカを蓄積されていた》のではないだろうか。
そして、《ナニカ》が関与したかはわからないがあの日、もしくはその前夜に全固体が臨界点を同時に迎えたという可能性。

つまり、サニーゴの群体は《死んだ》のではなく《殺された》という仮説。
しかしこの仮説を唱えるには情報があまりにも少なすぎる。
今もなお調査が続いているとのことだが、その途中経過は公開されず回復の兆しもない。
いつかそれが公開される時に答え合わせができることを切に願う。

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