【解決済】蔓延する劇薬

発生日時:2018年3月
発生場所:カロス地方・クベルタウン
関与ポケモン:ドレディア(1体・トレーナー所有)
関与人物:ジャン・ロベール(売人/逮捕)


【解決済】蔓延する劇薬

2018年3月、カロス地方の歓楽街として知られる【クベルタウン】で短期間に18件もの不可解な昏睡事件が相次いで発生した。
いずれも被害者は風俗店で働く女性たちで、いずれも深夜から午前3時頃にかけて勤務を終えた直後に突如意識を失いその場に倒れ込むというものだった。
最初の2件までは偶発的な体調不良とみなされていたが同様の症状を訴える者が短期間に続出し歓楽街全体に不安が広がっていったことで警察が捜査に乗り出すこととなった。

女性たちが接客していた相手の男性はいずれも異なったため捜査は当初難航を極めたが、とある客が《あるモノ》を使用したことを証言し、他の客にもその事を追求すると全ての客が同様のものを利用していた事が明らかになった。
それは街角でふと声をかけられて購入したという《薄紅色の香り袋》で、《異性を惹きつけ、お互いの気持を昂らせる効果がある》といった怪しげな売り文句とともに販売されていたものだった。

香り袋の存在を突き止めた警察は供給元を徹底的に洗い出し、やがて裏通りで密かに活動していた売人【ジャン・ロベール(38歳)】に行き着いた。
家宅捜索が行われた結果ジャンの自宅からは大量の香り袋とともに調合用の器具や数種類の薬品、そして1体の《ドレディア》が発見された。

逮捕時ジャン『ただの香り袋でしかない』と供述したが、押収された香り袋を科学分析したところドレディアから採取された《特殊な花粉》が高濃度で含まれていることが判明する。
この花粉は元々ドレディアが繁殖期などに分泌する香気成分の一種だったが、ジャンはこれを特殊な方法で抽出・濃縮し、人間の神経系に強く作用させる《薬物》へと変化させていたのである。

効果は販売時の売り文句を大きく超えており、使用した者の脳内ホルモンバランスに深刻な異常をもたらすことが分かった。
被害者女性たちが昏睡状態に陥ったのは脳神経が香気成分に過剰反応した結果であった。
また、香り袋を使用していた男性客たちの多くも使用後40時間以上一睡もできず、極度の不眠や幻覚、錯乱といった重篤な副作用に苦しんでいたことが後から明らかとなる。

 

ポケモン由来の成分は厳格な安全審査と長期間の臨床データを経て初めて人間向けに使用が認められる。
しかし、ジャンは正式な資格もなく独自に成分を抽出し、さらに違法な増強剤を混入することで劇物へと変化させていた。
これにより香り袋は《指定薬物》に即時指定され、製造・所持・使用すべてが違法とされた。

ドレディアは現場で保護されたのち専門施設で長期の検査とケアを受けた後、現在は保護区で静かに暮らしている。
当初は《凶暴化したドレディア》という誤情報が一部で広まったこともあったがあくまでも問題は人間側の悪意ある利用にあったことが正式に発表されドレディアには一切の責任がないことが明確にされた。

事件後、カロス地方では消費者の意識も変化し【安易にポケモン由来製品を購入しない】といった姿勢が広まるキッカケとなった。
なお、香り袋を使用していた被害者の一部は後遺症が残り完全な回復には至っていない者もいる。
今もクベルタウンの一角には事件を思い出すように【路上販売禁止】のポスターや看板が至る所にあり、怪しいものがいるとすぐに警察が声をかけるようになっているという。

――文・【イズナ・マコト】(カロス薬物社会研究会)


【管理人の感想】

安易な欲望と無知がどれほど危うい結果を生むのかを痛感させられる。
直接的な暴力や悪意が加えられたわけではないが《香り》という一見無害なものを通じて人が容易に破壊されるというのが恐ろしい。

ドレディアに一切悪意がないまま人間の手で歪められ、薬物として利用されたことには強い憤りを覚える。
《凶暴化したポケモン》として事件当初に噂が流れていた事がさらに悲しくなる。
事件の概要すらわからないウチから面白おかしく騒ぎ立て、その後発言した者達は訂正するわけでもなくただ自然消滅していくだけという事こそ《悪意ある行動》と言えるだろう。

事件がもたらした傷は大きく、被害にあった女性達は勿論、男性達の中にも未だに回復できない人が多数いる。
ドレディアが無事に保護され、責任の所在もきちんと明らかになったことで少なくともポケモンに対する誤解や偏見だけはあれ以上広まらなかったことだけは救いだったのかもしれない。

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