発生日時:2015年4月18日
発生場所:カントー地方・タマムシシティ
関与ポケモン:アリアドス(1体・トレーナー所有)
関与人物:カザミ・ユミコ(フリーター/逮捕)
【解決済】繭に響く声
2015年4月18日、カントー地方【タマムシシティ】の高層マンションの屋上を偶然通りかかった報道ヘリが《屋上に複数の人が横たわっている》ような様子を確認した。
一度はそのまま通り過ぎたが、違和感が拭えず帰り際に改めてカメラを向けに戻ることとした。
すると屋上一面に《巨大な蜘蛛の巣》が広がっており、その中に《無数の人影》が絡みついているのが映し出された。
さらにより良く見てみると《全ての人の顔は潰れて》いたため即座に通報し、警察の到着を待つこととなった。
駆けつけた警察が現場で目撃したのはさらに異様な光景であった。
屋上には無数の蜘蛛の糸が縦横無尽に張り巡らされ《9体の人形》が絡みついていた。
人形の顔は全て潰れており、目鼻立ちが確認できないほど押し潰されていた。
さらにそれらの人形には全て《衣服》が着せられており、ポケット等には《所持品》がそのまま詰め込まれていた。
恐ろしいことに、所持品を確認したところ全て《数週間前から行方不明となっていた人達》のものと一致していた。
被害者は20代前半の男女6名と、30代の男性2名、10代の少女1名であった。
彼らはそれぞれ異なる日に失踪しており、失踪場所や時間にも共通点はなく広範囲にわたっていたため、当初は同一犯とも思われてはいなかったという。
現場検証のため屋上に設置されていた防犯カメラの映像を確認した警察は驚愕することとなる。
映像には《壁伝いにアリアドスに乗って屋上まで登ってくる女性》の姿が映っていたのだ。
その後の調べで女性は【カザミ・ユミコ(28歳)】であり、事件現場近くの一軒家に住んでいることが判明。
捜査員が彼女の自宅を訪ねた際ユミコは動揺することもなく、淡々とした態度で対応した。
その際ユミコは微笑みながら警察を出迎え、そのまま抵抗せずに逮捕された。
逮捕後の調査にて、ユミコの自宅内は異常な光景に包まれてる事が判明する。
リビングの中央には《巨大な繭が9つ》並んでおり、それぞれの繭には《被害者たちの名前》が赤い糸で刺繍されていた。
その後駆けつけた調査員が繭を解体したところ、その中には《ドロドロに溶けたスライム状の物体》が詰め込まれて異臭を放っていた。
そして、その一部には《髪の毛や銀歯、アクセサリー》が絡みついているのを確認された。
物体の成分を分析したところ、人間のDNAが検出されたが損傷が激しく特定には至らなかったという。
だが、アクセサリーや名前が刻まれていた事からほぼ間違いなく全て失踪者のものであると断定された。
取り調べの中でユミコは淡々とした口調で以下のように語った。
『私の声を聞いてくれるのはいつもアリアドスだけだった。
どんなに大切な事を報せても人はみんな私を無視するの。
私はそれが凄く悲しくて、どうにかして伝えなきゃってずっと思ってたの。
アリアドスと一緒に過ごしてて気付いたの。
私の声と一緒に繭の中に閉じ込めればいいんだって。
そうすれば彼らは永遠に私の言葉を聞き続けて幸せになれる。
私の言葉が途切れることも、遮られる事ももう二度とないの。
繭は全て彼らの魂を糸にして紡いだの。
そうすれば彼らの記憶も感情も全部糸の中に染み込んで留まり続けられるから。
繭の中で私の声と一緒に溶けて混ざった彼らは本当に幸せだと思うの。
アナタ達もそう思うでしょ?私の言葉をずっと聞いていたいでしょ?』
現場で保護されたアリアドスはその後ポケモン保護団体の施設に送られた。
施設スタッフによるとアリアドスは囚われているかのごとく常に繭を編み続けているという。
ユミコがアリアドスに何を命じていたのか、またどのような調教を行っていたのかは依然として不明のままだ。
事件後、屋上の蜘蛛の巣は撤去され、防犯カメラの増設と高い柵が設けられた。
柵の上には有刺鉄線が巻かれており、もう二度と屋上を外部のものに悪用されないよう対策を講じているという。
それでも、かつての凄惨な事件現場として今も多くの者が上空からの撮影や侵入などを試みるという。

――文・【タナカ・カオリ】(カントー犯罪捜査班)
【管理人の感想】
彼女はただ自分の言葉を聞いてもらいたかっただけなのだろうか。
彼女はいったいナニを伝えようとし、なぜ人々は彼女を拒絶したのだろうか。
しかし、その思いがねじ曲がり結果として多くの者たちの命を奪ってしまったのは擁護できるものではない。
ユミコの孤独感や疎外感は他者と繋がりたいという願望に変わり、それが暴走してしまったように感じる。
アリアドスと共に暮らしながら彼女は次第に現実感を失い、糸という物質で《繋がり》を形にしようとしたのかもしれない。
繭に閉じ込めるという行為自体が彼女にとっての《永遠に続く対話》の象徴であり、そこに囚われた被害者たちはユミコにとって理想の姿だったのだろう。
アリアドスにとってもこの異常な共生は決して望んだものではなかったのではないだろうか。
保護施設に入所してからも繭を作り続ける様子はユミコに強要された結果であり、正常な状態とは言い難い。
それともアリアドスの中でもそれは1つの大切な繋がりだったのだろうか。
この事件を通じて孤独と狂気が結びつくことでどれだけ異様な結果を生み出すのかを改めて考えさせられた。
繋がりを求める気持ちは誰にでもあるものだがそれを強制し押し付けることでどれだけ多くの悲劇が生まれてしまうのか。
アリアドスが編み続ける繭はそんな哀しみと狂気が絡み合った象徴のように思えてならない。
構事件録
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