【解決済】織られた呪い

発生日時:2006年11月2日
発生場所:シンオウ地方・ノモセシティ
関与ポケモン:エルフーン(1体・野生)
関与人物:ハセガワ・ユウト(会社員/逮捕)


【解決済】織られた呪い

2006年11月2日、シンオウ地方ノモセシティで異常な執着と狂気が潜む事件が発覚した。

逮捕されたのは【ハセガワ・ユウト(32歳)】
彼はネット上の大手フリマショップを通じ《エルフーンの毛で作られた衣類》として数多くの商品を販売していた。
その品質の良さと安さから若い女性や子供向けの衣類が特に人気を博し、一部では《柔らかく肌触りが良い奇跡の布》とまで称賛されていた。

しかし、とある購入者がズボンのポケットを誤って破損させたことをキッカケにその評判は一変した。
ポケットの内側には明らかに動物ではない《人の黒髪》が何本も絡みついていたのだ。
それらはたまたまポケットに入ったようなものではなく、生地の中にしっかりと編み込まれていたという。
最初は偶然だと思った彼女だったが、不安が拭えずSNSに投稿したところ同様にポケットの内側や縫い目部分などの目立たない場所に《人毛が混入している》といった証言が次々と寄せられた。

 

その後、通報を受けた警察はハセガワの自宅を捜索し、異常な光景を目の当たりにすることとなった。
部屋の一角には山積みにされたエルフーン製の衣類があり、その隣には《彼自身の髪の毛》が詰め込まれた袋が無造作に置かれていた。
さらに部屋の奥では無理やり毛を刈り取られた《エルフーン》が監禁されていた。
エルフーンは手足を拘束され、毛はほとんど刈り取られていたため身体の輪郭が異様に細く、目は虚ろで疲弊していた。
その足元にはバリカンやハサミ、血のついた布切れが散乱していたという。

 

特に抵抗することもなく逮捕されたハセガワは警察の取り調べに対し終始落ち着いた様子で以下のように語った。

『私の髪の毛を織り込むことで、私の存在が布の中に染み込む。
誰かがその服を着れば、私はその人の側にいて、その人の一部にさえなることができる。
今までかつて私ほど多くの人と《繋がった》者はいないんじゃないだろうか?

アレは全て私の作品であり、私自身である。
当然エルフーンも同じだ、わかるだろ?
エルフーンの毛と私の髪を混ぜることで私たちは一体になれる。
私達は魂まで1つになれるんだ。
そして私達は数多の人とも1つになれる、そう、我々はみんなで1つの生命体なんだ。
これは全て愛なんですよ、愛。』

 

捜査員たちの一部は彼の供述の異常性に恐怖を覚えたという。
また、彼は取り調べの最中に繰り返し『エルフーンの感謝の声が聞こえる』と呟き続けた。
彼の発言からは何らかの精神疾患の兆候を示しているとされたが、精神鑑定の結果彼は《正常である》と診断された。

 

事件後、ハセガワが販売していた衣類はすべて回収され、警察の鑑識班によって分析が行われた。
その結果、全ての衣類には《ハセガワの髪の毛》が混入しており、さらに一部には《エルフーンと彼の血液》が付着しているものも確認された。

現在、エルフーンはシンオウ地方のポケモン保護施設で治療を受けている。
毛の回復はすぐに完了したが、精神的なケアにはまだ時間を要するとされている。
一方のハセガワは収監されており、そこでもまだ『エルフーンの声が聞こえる、もうこの繋がりは消えることがない』といった言葉を繰り返し呟いているという。

――文・【サカタ・リサ】(シンオウ犯罪調査班)


【管理人の感想】

服に自分の髪の毛を織り込んで《自分自身を布の中に溶け込ませる》なんて常軌を逸しているとしか言いようがない。
彼の中ではそれが《愛》だったというのが余計に不気味だ。
普通の感覚では考えられないが彼は本気で《みんなと繋がっている》と信じていたのかもしれない。

エルフーンの毛と自分の髪の毛を編み込んで《一体になる》という発想も異常だ。
監禁され、無理やり毛を刈り取られたエルフーンは何を思って彼に従っていたのだろうか。
《感謝の声が聞こえる》と言っていたが、一般的に考えればそれはただの幻聴でしかないが、彼の中では本当に聞こえていたのかもしれない。

 

購入者たちは今後新しい服を手に取るたびに嫌悪感と恐怖を感じることになったのではないだろうか。
自分の体にまとっていたものの中に他人の髪の毛や血が織り込まれていたなんて想像するだけでもゾッとする。
一見おしゃれで可愛らしい衣類にもまた《狂気》が潜んでいないかと怯える生活を想像すると胸が苦しくなる。

そして何よりもエルフーンのケアが今も続いているという事実が悲しい。
エルフーンがハセガワから与えられた《繋がり》はただの狂気の産物でしかないと思う。

しかし、ハセガワは今もなお《深い繋がり》を感じていると言い続けている。
彼の中ではこの異常な行為が《愛》であり、《永遠の絆》だったのかもしれない。
それがどれだけ他人にとって恐怖であり、エルフーンにとってどれだけの苦痛だったのかを彼は理解しているのだろうか。

 

ハセガワの《繋がり》は断ち切れる日は来るのだろうか。
彼は一生この歪んだ愛の中で生き続けるのかもしれない。

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