発生日時:2024年6月
発生場所:カロス地方・カルヌシティ
関与ポケモン:ママンボウ(複数・野生)
関与人物:ピエール・グランヴィル(元エーテル財団/死亡)
【解決済】毒化の秘薬
2024年6月、カロス地方北部を流れるヴォルド川沿いに位置する街《カルヌシティ》で毎年恒例の《ルミエール・フルール祭》の開催中、川面に浮かぶ多数のママンボウが突如として動かなくなり、次々と流れに任せて漂い始める異常事態が発生した。
最初に異変に気づいたのは祭の準備に携わっていた市民ボランティアの一団で、彼らはママンボウの救助を試みて次々と川に入ったが数分と経たぬうちに嘔吐と痙攣を訴え、そのまま意識を失い倒れ、溺れる事となった。
それを見た人々は救助活動を直ちに中止し救急車と専門家の到着を待つこととなったが、その後搬送された市民のうち7名が病院で死亡、他にも複数人が重度の神経障害を負う事態となった。
同様に川を漂っていたママンボウの群れも川岸に打ち上げられる頃にはその殆どが死んでいたという。
当初は未知のウイルスや自然発生した環境毒素の可能性が疑われたが調査が進むにつれ死因はそれらではなく、ママンボウの皮膚から発せられた高濃度の神経性毒素であることが明らかとなった。
この毒素は接触または水を介して皮膚から体内に侵入し、極めて短時間で中枢神経を麻痺させる強力な作用を持っていた。
さらに分析の結果、自然界に存在するママンボウの粘液とは明らかに異なる合成物質の痕跡が認められ、人工的な薬剤の影響で毒性が生じた可能性が高まった。
調査の焦点が【ママンボウの毒性がどのようにして生じたか】に移る中、決定的な証言が浮上した。
カルヌシティ郊外で暮らしていた《元エーテル財団研究員》の【ピエール・グランヴィル(58歳)】が自らカロス地方の警察に対し事件に関与したことを名乗り出たのだ。
彼は供述によれば彼はつい最近までエーテル財団に所属しており、研究所で開発されていた極めて危険な《生態環境破壊薬剤》を一本盗み出し事件当日の明け方にヴォルド川上流へと撒いたと語った。
その理由については《エーテル財団の闇と薬の危険性を世間に知らしめるため》と説明していたという。
この供述が明らかになると過去にカロス各地で話題となった《ある事件》が再び注目された。
2023年4月、カルト的宗教団体《L’Unité Absolue(リュニテ・アブソリュ)》が毒性を帯びたミルタンクを生み出した事件である。
当時、毒を帯びたミルタンクはエーテル財団により保護・回収されたが、その個体が持つ毒性や由来については詳細が明かされず終わっていた。
ピエール曰く、このミルタンクから抽出された特殊な成分が薬剤に使われており、薬剤が完成したら未曾有の被害が発生すると熱く語ったという。
しかし、エーテル財団は直ちにピエールの発言を全て否定した。
その後された公式発表ではピエールが在籍していたのは《10年以上前》であり、去年回収されたミルタンクには一切関与していないため今回の毒薬もエーテル財団と全く無関係であるとし、解雇理由も【虚言癖や精神疾患を抱えていたため】として彼の話している事が何一つ整合性がないことを主張。
さらに繰り返し『彼の話すことを真に受けることこそが危険である』という声明も発表し、謝った情報の拡散に対して法的措置も辞さない姿勢を示した。
騒動から3日後、エーテル財団の主張を受けて改めてピエールに事情聴取を行うため警察が自宅を訪れたところ、彼は首を吊った状態で発見された。
近くには震えた手書きの遺書が残されており以下のように綴られていたという。
『エーテル財団に不当に解雇されたとずっと思い込んでいたから復讐したかった。
でも悪いのは自分だと気付いた。
今は反省している。
薬はとある旅する薬師から購入したが詳細はわからない。
沢山の人に迷惑をかけてごめんなさい。』
その後ヴォルド川ではしばらくの間漁業とレジャー活動が全面禁止され、川沿いの複数地区では水質検査と浄化作業が並行して進められている。
また、生存したママンボウの群れが向かったルートから毒の拡散範囲に関する調査も継続されており、環境保護団体や市民の間には大きな不安と動揺が残っている。
《毒を流したのは誰か》という問いの答えが明確になった後も、その真の動機や薬の由来については未だ多くの点が霧の中にあるままだ。
※《L’Unité Absolue(リュニテ・アブソリュ)》が関与した事件のリンク

――文・【エロイーズ・マルシャン】(カロス環境災害調査局)
【管理人の感想】
ピエール・グランヴィルが遺した遺書と供述内容、そしてエーテル財団の公式声明の間にあまりに大きな乖離がある。
財団側は【10年以上前に解雇された】と主張し、その理由に精神疾患や虚言癖を挙げているが本当にピエールが10年前に組織を離れていたのか確かめる術は今や失われている。
仮に財団が意図的に在籍記録を抹消していたとすれば、ピエールの関与を組織的に隠蔽し全てを妄想と片付けるために処置していた可能性も否定できないのではないだろうか。
遺書の内容も含め、言葉の端々に確かな後悔と混乱が見られる一方で、それが本当にピエール自信が自らの意思で書いたものなのかは不明だ。
仮にピエールがほんの数日前まで在籍していたとするならば、自殺として処理された死もまた別の解釈を必要とするのではないかという疑念が残る。
ただ、どこまでが事実かは掴みきれないため、現時点で確証のないまま踏み込むことは避けるべきだろう。
一方で《カルヌシティ》という街の象徴とも言える《ルミエール・フルール祭》が突如として破綻した事実は重く受け止めなければならない。
穏やかな川に無数のママンボウが浮かび、その救助に向かった市民が命を落とすという惨状は単なる事故では済まされない痛ましさがある。
生命を救うチカラを保有するママンボウが毒を纏うという異常性も含めてこの街の人々が受けた精神的な打撃は計り知れない。
人の手によって変質させられた自然が日常の風景と伝統の行事を壊してしまったことの重さはどこに怒りを向ければよいのかも分からないほどだ。
事件の爪痕は亡くなった人々の家族にとっても、街の空気や川の流れにとっても、長く残り続けるのではないかと思われる。
構事件録
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