【解決済】小判製造薬モドキ

発生日時:2019年8月
発生場所:カントー地方・マサラタウン郊外
関与ポケモン:ニャース(複数・野生)
関与人物:ハセガワ・シンジ(無職/逮捕)


【解決済】小判製造薬モドキ

2019年8月、カントー地方【マサラタウン】郊外で深夜にもかかわらず数十匹の《ニャース》が廃屋の前にふらふらと集まり、か細い声で鳴き続けるという異様な光景がたまたまその道を犬の散歩中に通りがかった近隣住民に目撃された。
ニャースはいずれも酔っ払っているかのように徘徊しており、正常とは思えなかった為即座に通報し、警察官が到着する頃にはニャース達の症状はさらに悪化し、目の焦点も合わず意識が朦朧としており、十数匹は嘔吐しながら道路や庭先に倒れ込んでいたという。

事態を重く見た警察はすぐに現場を封鎖しポケモン保護班も招集。
保護されたニャースたちは直ちに医療施設へ搬送され、検査の結果全ての個体から《違法薬物とマタタビ》に酷似した成分が検出された。
マタタビは言うまでもないが、違法薬物と酷似した成分は神経系を過剰に刺激し麻痺や幻覚、運動失調といった症状を引き起こす危険な代物であった。

ニャースが次々と保護されていく際に警察が廃屋に潜伏していた【ハセガワ・シンジ(42歳・無職)】が事件に関与していたことが明らかとなり逮捕された。
ハセガワは取り調べに対し『ニャース《ネコにこばん》で大量に金を出したら、俺の人生も変えられると思った』と供述。
ネットを通じて購入した《猫型ポケモンを集める薬》を撒くことで野生のニャースを呼び寄せ無理やり技を発動させて金銭を得ようとしたが、酩酊状態のニャースはまともに技を出すことすらできず、結局薬代のほうがはるかに高くついたという。

彼は高校中退後アルバイトを転々としており、35歳を超えたあたりから社会との繋がりを失い、ネット上で散見される都市伝説やオカルトじみた情報を盲信するようになっていった。
取り調べの際も『金さえ手に入れば何でも良かった』と繰り返しており、反省の色は見られなかったという。

 

その後ハセガワに薬物を提供していた売人の存在についても捜査が行われたが特定には至らず関連の噂話だけがネット上に残さる形となった。
事件から数日後には匿名掲示板に売人を名乗る者から【エーテル財団に匿ってもらった】という不可解な書き込みが投稿された。
数分後にはすぐに削除されたもののその後陰謀論めいた怪文書や映像などがSNSで爆発的に拡散されていった。
しかしその話題も不自然なほど短期間で消え失せ、検索エンジンからも関連ワードが極端に減少したことで以降は《検索してはいけない言葉》としてオカルトマニアの間で語り継がれることとなった。

なお、保護されたニャースたちは専門家の手厚い治療を受け後遺症もなく無事に野生へと帰されている。
また、この事件はポケモンを人間の欲望の道具とすることの危険性を社会に強く訴えかける契機となり、以降ポケモンへの違法薬物使用に関する法律や規制が大幅に強化された。

――文・【ナガセ・ミツオ】(カントー社会行動監察研究機構)


【管理人の感想】

ハセガワという男の動機はあまりにも幼稚で救いようのないものだったが彼だけを責めて終われる話ではないように感じる。
この事件の背後には社会からこぼれ落ちた人間の孤独や何かに縋りたいという切実さ、そしてネットの断片的な情報に踊らされる現代の闇が浮き彫りになっている気がした。
夢と現実の境界が曖昧になっていくその過程はたしかに狂っているが決して遠い世界の話ではない。
ニャースたちが人間の身勝手な欲望によって壊されていく様子はやはり心が痛む。

ネット上に拡散された売人の書き込みや消された痕跡、急速に消え失せた話題など、こうした不自然さもまたこの事件の後味の悪さを強めている。
陰謀論めいた話がどこまで真実なのかは分からないがこうした怪異めいた噂が生まれてしまうことそのものが社会がいかに不信と不安で満ちているかを物語っているように思う。

犠牲になったニャースたちが無事に回復し元の場所へ戻れたことが唯一の救いだった。
それでも人間の愚かさによって苦しめられ命を落とすポケモンがこれから生まれるかもしれないと思うとやるせなさは消えない。

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