発生日時:2017年5月
発生場所:イッシュ地方・セイクリフタウン郊外
関与ポケモン:不明
関与人物:ジェレミー・ロック(小学生/故人)
【未解決】刻印の犬と立方体
2017年5月、イッシュ地方の小さな町セイクリフタウンで起きた出来事は今なお多くの人々の記憶に深く刻まれている。
この日、小学4年生の【ジェレミー・ロック(10歳)】は寝坊し、母親に急かされながら通学団には加われず、いつもとは違う時間に一人で家を飛び出した。
ふてくされながらも元気よく走っていくその後姿は母親が最後に見るジェレミーの姿だとは当初は思いもしなかったという。
ジェレミーが家を出た数分後、周囲には低く鈍い地響きが走った。
地響きがおさまってから母親は不安を覚えて外を確認しに出たが町は至って平穏であったためそれ以上は気に留めなかったという。
だが11時30分頃、今度はさらに大きな地鳴りが轟き、庭にいた愛犬が異様なまでに吠えだした。
だがその《ナニカ》に怯えるような声はすぐに途切れ、地響きがおさまると静寂と共に愛犬は忽然と姿を消していた。
母親は周囲を夕方になるまで捜索したが愛犬の姿はどこにもなく、ジェレミーがとても大切にしていたためどう説明したものかと悩みながら帰路についた。
だが玄関をあけても息子の声はせず家のどこにもいなかった為、息子を心配した母親が学校に確認を取ったことで、その日《誰もジェレミーを目撃しておらず》、そもそも登校していなかったことが判明した。
誘拐の可能性が考えられ通報を受けた警察が即座に捜索を開始したがジェレミーの姿は町のどこにも見当たらなかった。
そんな中、事件発生からちょうど1週間後、家族のもとにジェレミーが可愛がっていた例の愛犬が自らの足で戻ってきた。
だがその姿は、家族が知っていた犬とはまるで別物だった。
全身の毛は全て失われ皮膚がむき出しの状態で、そこにはまるで《入れ墨のような幾何学的模様》が刻まれていた。
にもかかわらず犬はどこも怪我を負っておらず体調も極めて良好で、まるでこれが《正常な状態》であるかのように振る舞っていたという。
尚且つ、獣医による検査では《皮膚にインクや塗料が存在していない》ことが判明し、模様は染められたのではなく《皮膚そのものが変質して描かれている》という異常な報告がなされた。
さらに驚くべきことに犬の首輪には未知の金属でできたプレートが括りつけられており、そこには既知のどの言語にも該当しない文字のような記号が精緻に彫られていた。
首輪を取り外そうと試みたところ犬の皮膚と癒着しているどころか《神経や血管までもが首輪内部に存在する》ことがわかり、関係者の多くが言葉を失ったという。
一方、ジェレミー本人の行方は依然として不明のままだったが、それから数週間後、ついに不可解な形で発見されることになる。
ジェレミーの自宅からおよそ27km離れた緑地帯を近隣に住む男性が散歩していた時、草むらの奥に《20cm四方ほどの黒い立方体》が置かれているのを見つけた。
それは黒とも紺とも言えない濃い布に包まれており、一見してゴミか何かの破棄物のようにしか見えなかったため、興味本位で手を伸ばして触れた瞬間、内部から確かな脈動を感じたという。
男性はあまりの不気味さにその場を離れすぐに通報が行われた。
布に包まれたままのそれは警察の手によって搬送され調査が行われたところ、布らしきものは《内部と癒着》しており、完全に一体化していたため慎重な処理が求められた。
そして丁寧に切り開かれた瞬間に現れた中身を目にした関係者の一部は嘔吐し、その場から立ち去るほどの凄惨さだったと伝えられている。
公式発表では中身についての詳細は伏せられたが、DNA鑑定の結果それが《ジェレミー・ロック本人》であることが確認され、通常の方法では決して成し得ない加工が施されていたとだけ報じられた。
なお、ジェレミーと愛犬が失踪した当日と《犬が帰ってきた日》は共通して町の各地で《謎の地鳴り》が観測されており、それに続いて複数の住民が空に不思議な《漆黒の球体》を目撃していた。
それは光も影もなくどの方向から見ても真円で大きさや距離感すら把握できない、まるで《空間にあいた穴》のようにも見えたという。
後年、一部の研究者たちの間ではこの黒い球体がかつてシンオウ地方やパルデア地方、アローラ地方などで記録された《空蝕》と呼ばれる現象と類似していると指摘されている。
そのため、《ウルトラホールの変形型》か《未知のウルトラビースト》、あるいはそれに準ずる《未知のナニカ》が関与していた可能性も否定できないという見解が示された。
ジェレミーの変貌した姿、皮膚に刻まれた犬の模様、そして空に浮かぶ《ナニカ》。
それらの点は未だ結ばれておらず今も《ナニカ》がこの世界のどこかで誰にも気づかれぬまま進行しているのかもしれない。

――文・【レイナ・カルバン】(イッシュ民俗現象記録協会)
【管理人の考察】
選定と改良
ジェレミーと愛犬が失踪したタイミングと連動するかのように町全体に響いた地鳴りの発生源がもし空に浮かぶ《空蝕》であれば、なぜ目撃した者達は無事だったのだろうか。
そこにジェレミー達が選ばれる《ナニカ特別な条件》があったのだろうか。
地鳴り自体は失踪や《選別》そのものとは関係なく、《ナニカが起きている時》の副次効果でえ空間そのものが揺れていたとも考えられる。
戻ってきた愛犬の姿は通常のポケモンや自然現象では到底説明しきれない。
皮膚の変質は勿論のことながら既知の素材ではない金属の首輪に神経や血管が繋がるというのは到底この世界の科学力から逸脱しているといえる。
注射痕や手術痕もなく、あたかも《生まれながらにその状態》であるかのようであったという点から、これは最早《改造/改良》ではなく《時間の逆流と進化の根底を変更》したとも考えられないだろうか。
模様や首輪の記号が持つ意味も未解明だが、言語や信号のような機能を持っていた場合、もしかしたら愛犬はこちらの世界とあちらの世界を繋げる《通信や観察対象》といった可能性があるのではないだろうか。
立方体の生物
ジェレミーも愛犬同様に布と体が癒着し《1つの生命体》に作り変えられているといえる。
まず、恐ろしいのがジェレミーは決して《箱に入れられていた》や《布で包まれていた》のではなく《立方体の生物として再構築された》ということだ。
さらに、極めて恐ろしいのが《遺体であるという報道は一度として行われていない》点である。
発見者は微かでも勘違いでもなく《確かな脈動》を感じ取ったと証言しており、中身を開いた際にあまりに悍ましいという事からジェレミーは今もなお《立方体の生物として生きている》のではないだろうか。
バラバラにして箱に詰めるという事件をたまに見聞きするが、今回の件はそのようなレベルを遥かに超えている異常現象であると言える。
黒い球体の正体
空に浮かんでいた黒い球体は既知のポケモンが用いる影や技の類とは明らかに異なり、形状が崩れず距離感すら掴めなかったことから空間そのものに異常が生じていた可能性がある。
《空蝕》との類似性を指摘する説もあるが、それ以上に重要なのはあの球体がもしゲートであるならば繰り返し目撃されている事から目的は侵入ではなく《明確な意思を持った干渉》だということである。
一部学者の間では《空蝕》とはゲートや穴ではなく、《空蝕そのものが未知のウルトラビースト》であるという説を唱えている者もいるが、発生条件も持続時間も不明であるため研究は何一つ進んでいないと囁かれている。
このような事件は二度と起きてほしくないが、いつの日か《空蝕》の正体が判明する日が訪れることを切に願う。
構事件録
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