発生日時:2006年7月
発生場所:シンオウ地方・ナギサシティ
関与ポケモン:ハブネーク(1体・野生)
関与人物:ナガミネ・コウジ(果樹園経営者/故人)
【未解決】果実詰める蛇
2006年7月14日未明、シンオウ地方【ナギサシティ】郊外の果樹園で経営者の【ナガミネ・コウジ(62歳)】が死亡しているのが発見された。
第一発見者は配送業者の男性で朝6時前に納品伝票を手渡すため園内の事務所を訪れたが応答がなく、裏手に回った際に異様な姿勢で吊るされた遺体を発見し警察へ通報した。
ナガミネの遺体は果樹園の貯蔵小屋の天井梁から逆さ吊りにされた状態で見つかり、両足首は葡萄用の麻紐で強く縛られていた。
顔面は鬱血によって赤黒く膨れ上がり、鼻腔からは果汁が滴っていたという。
司法解剖の結果死因は《窒息死》だったが、胃腸からは未消化の《柑橘類》やナギサ名産の《アカミモモ》が異常な量で詰まっていた。
量は計《2kg以上》に及び、いずれも噛み跡や咀嚼の痕跡がない丸呑み状態だったことから被害者本人が自ら飲み込んだ可能性は低いとされた。
現場となった小屋の床には長さおよそ3メートルの紫黒色の脱皮殻が確認され、分析により《ハブネーク》のものと断定された。
ハブネークは通常温暖湿潤な森や岩場に生息するためナギサシティのみならずシンオウ地方での生息確認は過去に例がなく、脱走や人為的放逐の可能性も捜査された。
しかし、近隣住民にハブネークを所有しているトレーナーは存在せず、観光客や外部のものの犯行ではないかと当初は考えられた。
だが、事件の数週間前にナガミネが町の集会で『侵入の痕跡はないのに最近畑の果実が毎晩少しずつなくなっている』と漏らしていたことが記録に残っており、長期間にわたり被害を受けていた可能性があり、近隣に住む同一犯の可能性が高いとされている。
現在もハブネークの目撃情報はなく、所有者も確認されていないため、その後の調査は難航し、数年後に捜査は打ち切られてしまった。
だがそのさらに数年後、一部研究者の間で現場にヘビが蛇行したような跡もなく、ナガミネが毒を受けた形跡もなく果実を詰め込まれた事から別の《ナニカ》が殺害したのではないかと考えられている。
また、今もなお果実を強制的に飲み込まされた意図も動機も完全に謎であり、手も念動力も使えない野生のハブネークが単体でそのような事を行ったとは思えないためやはりトレーナーの関与があったのではないかとされている。

――文・【フカザワ・アヤカ】(シンオウ怪奇事件調査班)
【管理人の考察】
冒涜的な果実
胃に詰め込まれていたのがナガミネが丹精込めて育てていた果実であったのはなぜなのだろうか。
それはただの凶器ではなく、彼自身の象徴、つまり彼の人生そのものだったと言えるのではないだろうか。
農園を営む者にとって果実とは労働の結晶であり、誇りそのものだ。
それを死の道具として口から腹にかけて無理やり押し込まれたのだとすればこれは《冒涜》の意思を持った行為と言える。
単なる殺害ではなく、《ナガミネの存在を否定するため》の強烈で歪んだメッセージだった可能性すらある。
果実による窒息死
恐ろしいのがナガミネは《窒息死》であったことである。
つまり、彼は《生きたまま果実を詰め込まれた》ということを意味している。
だが手足のない蛇型ポケモンが意識のある人間に対してそれを行えるとは考えにくい。
この過程に何らかの念動力や未知の生理現象が関与していたとしたら犯人像はまるで変わってくる。
ハブネークは単にそこにいただけで、実行犯は別に存在していた可能性が高いのではないだろうか。
ハブネークは実在したのか
現場に残された脱皮殻は本当に事件を起こした個体のものであったのか。
あるいは《そう見せかけるため》に置かれたものだったのではないか。
そもそもハブネークは本当にこの街に来ていたのだろうか。
ハブネーク本体の姿はその後一度も確認されておらず、這った痕跡もなかったという点から考えれば痕跡だけを残し姿を消す何者かによる犯行ではないだろうか。
例えば擬態、あるいは幻覚、もしくは単純に《抜け殻のみ持参した人間》による捏造が考えられる。
野生動物としての習性とは明らかに乖離した犯行内容と脱皮殻という証拠の露骨さは誰かの意図を強く感じさせる。
意図が見えない恐ろしさ
犯人の姿も動機も方法も全てが見えないという点においてこの事件はただの殺人事件ではなく理解不能な領域に踏み込んでいる。
論理や欲望ですらない《説明できない行動》ほど人の心を不安にさせるものはない。
ナガミネはなぜ果実を詰められたのか。
なぜ縛られ、逆さにされ、命を奪われなければならなかったのか。
そこに通底する《不明瞭な悪意》こそがこの事件をより深く、恐ろしくしているように思えてならない。
構事件録
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