【解決済】花狂いの地獄

発生日時:2012年4月5日
発生場所:ジョウト地方・コガネシティ郊外の旧教会
関与ポケモン:キレイハナ(2体・トレーナー所有)
関与人物:ヤスイ・ヒカル(園芸家/逮捕)


【解決済】花狂いの地獄

2012年4月5日、ジョウト地方コガネシティ郊外にある廃墟と化した古い教会で《大量の人体片が花々と共に飾られている》という通報が寄せられた。
通報者は付近の野生ポケモンの捜索で敷地内に立ち入った若き旅するトレーナーで、教会の礼拝堂に踏み入れた際に辺り一面《黄色い粉》が充満して強烈な甘い匂いを感じ、一時は撤退も考えたという。
しかし、幸か不幸か彼の手元には《霧払い》を使えるポケモンがいたため粉を全て吹き飛ばして奥へと進もうとした。
だが祭壇に《人間の指、耳、眼球、唇、腕、皮膚の断片》等が花弁や蔓とともに精緻に配置されていたのを見てその場を即立ち去ったという。

駆けつけた警察が扉をあけると中は再び黄色い粉で満たされおり、それは後に《異常な量のキレイハナの花粉》であると判明する。
教会内部は全体が温室のように改造されており、気密性の高い構造で強烈な香りに包まれていたという。
再び《霧払い》で花粉を全て飛ばして中を確認すると通路には美しい花が飾られ、その脇には小動物の死骸があちこちに散乱しているのを発見した。

礼拝堂の奥には証言通り《バラバラにされた人間のパーツ》が花と一体になるように飾られていた。
中には《胴体にバラの茎を植え込まれ開花させられた遺体》《輪切りにされた心臓に生けられた花》《腸と蔓を織り交ぜて吊り下げた天井飾り》もあり室内はどこを見ても狂気に満ちた地獄絵図だったという。

現場に残されていた香水瓶や園芸道具などから、かつて式場で働いていた園芸家【ヤスイ・ヒカル(当時42歳)】の名が浮上。
近隣の園芸施設で身柄を確保され本人もすぐに犯行を認めた。

取り調べでヤスイはこう語っている。

『花は枯れてもまた咲くのに、人間は枯れたらそのまま腐るだけだ。
そんなのあまりにも悲しいじゃないですか。
心から花と人間が本当に1つになる必要があると思うんです。

だから咲き続ける身体を私が作ってあげればいいと思って。
キレイハナたちが一緒にいてくれたから全部上手くいったんです。
花粉で静かに眠ってもらって、余計な声が届かない場所で、飾って、咲かせて、1つにして……
《永遠の春》に選ばれた人たちは今も祝福に包まれているんです。

あそこは苦しみ悩む人達のための天国なんです。
だからこんな所にこれ以上私がいたらダメなんです、わかるでしょ?
救いを求めてる人はまだ沢山いるのだから。』

 

彼の自宅からはキレイハナ2体と大量の花、そして腐敗しかけた肉片を包んだ花束や被害者の血で書かれた《祝福の招待状》が見つかっている。
被害者は少なくとも30人以上にのぼる可能性が高いとされ現在も断片のDNA検査等が続いている。

キレイハナ2体はすぐに保護されたが2体とも重度の植物性毒素の分泌が続いており通常の飼育が困難な状態にあった。
また隔離施設内で時折花粉の濃度が異常上昇するという現象が報告されており、ポケモン研究者の間では《かなり長期的な治療を施す必要性》が指摘されている。

事件現場となった教会は封鎖されたが周辺では今なお時折花の香りが強く漂いその不気味さからも地元住民は誰も近寄らないという。

――文・【ヨシダ・メグミ】(ジョウト犯罪調査室)


【管理人の感想】

ヤスイの語る《永遠の春》という言葉は一見詩的で美しいがその実態はあまりにも異常で残酷だった。
死体の断片を装飾として並べ、それを《祝福》と呼ぶ感性はもはや狂気以外のなにものでもない。

それでも彼にとってはそれが本気で《救済》だったのだろう。
香りで眠らせ、分解し、飾り付けて、静かに沈めていく。
花粉に満たされた教会の中は彼にとって《苦しむ人を癒す楽園》だったのかもしれない。

ただ、そんなものに選ばれてしまった被害者たちは最後の瞬間に何を思ったのだろう。
毒に包まれた空気の中で、咲くことを強いられたその苦しみを想像するだけで寒気がする。

キレイハナたちもまた被害者だったと言えるのではないだろうか。
隔離された今も花粉を撒き続けているというその異常性には悲しみすら覚える。

花が咲き誇ることは本来喜ばしい事であるはずだが、この事件では咲く前からすでにそれは《呪い》だった。
決して誰も立ち入ってはならない《花の地獄》が確かにあの教会には咲いていたのだと思う。

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