発生日時:1866年10月
発生場所:カロス地方・ロムティユタウン
関与ポケモン:ニャオニクス(2体・野生)
【未解決】魂を食らう森
1866年10月、カロス地方北部の山間部に位置する小さな村《ロムティユタウン》で村の収穫祭の最中に起きた集団失踪事件が150年以上経った今も異様な記憶として村の伝承に語り継がれている。
事件が発生したのは収穫祭の夜に行われる焚き火の儀式が終わった直後だった。
周囲の大人たちが踊りの準備に気を取られていた数分の間に6人の少年たちが忽然と姿を消した。
捜索を試みたものの発見には至らず、そのうち3人が戻ってきたのは失踪から3日後の早朝だった。
村の共同井戸近くで見つかった彼らは汚れひとつない服を身に着け、まるで誰かに連れられて歩いてきたかのように並んで立っていたという。
一見すると無事に戻ったかに思えたが彼らは村の誰にも理解できない奇妙な言語で喋り始め、家族や村人の問いかけには一切答えなかった。
その声の調子も普段のものとはまるで異なり、明らかに年齢に不相応な落ち着きと抑揚を帯びていた。
しばらくすると3人の少年全ての額に《第三の目》と思われるモノが開眼したとされる。
また、残りの3人の行方を求め村の男たちが山に分け入って捜索し、昼過ぎ頃にかつて薬草採取に用いられていたが今では使われていなかった獣道の奥で不可解な光景に遭遇する。
苔むした祭壇のような岩の上に失踪していた3人の少年が正座するようにして座り、両側には2体の《ニャオニクス》が人間の接近にも反応せず目を伏せたままジッとその場に佇んでいたという。
だが少年たちのもとへ駆け寄ろうとした瞬間、2体は急に顔を上げて光る眼をこちらに向け少年たちの周囲に紫がかった光の結界のようなものを展開された。
村人たちはこれを危険と判断し、火を焚いて音を鳴らし、木を打ち鳴らすなどの手段でニャオニクスを威嚇した。
最終的に煙を嫌がったのかニャオニクスたちは少年たちの周囲をひとめぐりしてから、音もなく森の奥へと消えていき、結界のようなものが消えると少年たちはその場に倒れ込んだ。
発見当初は全員昏睡状態にあり、呼吸と脈拍は安定していたが目を覚ますまでにはさらに数日を要したという。
意識を取り戻した彼らは自身がどこにいたのか、誰といたのかを一切覚えていなかった。
そればかりか失踪前の記憶も大部分が曖昧になっており、名前や家族の顔さえ断片的にしか認識できない状態だった。
一方、先に戻ってきた少年3人の容態はそれとは異なる異常を示した。
言語の異常や人格の変化だけでなく、徐々に外部刺激への反応が消失し、事件発生から1ヶ月を待たずして3人とも一切反応を示さない状態に陥った。
現代で言う植物状態に酷似したこの状態は医学の発展していなかった当時の村では《魂を失った》と表現されており、祭りに対する呪いではないかという噂が広がった。
この事件をキッカケに当時の《ロムティユタウン》の記録にはニャオニクスは《人を操り魂を封じる》といった言い伝えが記された。
事件から半年後、森に監視の目を置くための山小屋が建てられたがニャオニクスが再び姿を現すことは一度もなかったという。
異語を喋った3人の少年は10年後に全員が唐突に他界しており、その死因についても明確な診断は残されていない。
現在、事件の現場となった森の一帯は《魂を食らう森》と呼ばれ地元の人々は近づくことを避けている。
祭り自体も事件以降は一度も開催されておらず、封鎖された神域のように扱われているという。
ニャオニクスの存在を明確に記録したのはこの事件が初であり、その特異な行動は現在の研究者の間でも謎に包まれている。

――文・【エステル・ヴァレンヌ】(カロス民俗異常事象記録会)
【管理人の考察】
《ナニカ》による誘拐の可能性
祭りの最中という賑やかな場で短時間に6人もの少年が同時に姿を消したのは偶発的な事故や迷子といった単純な原因では説明がつきにくい。
周囲の注意が逸れていた時間はわずかであるため、誰にも気づかれずに消えるには村の構造を熟知している《ナニカ》による誘導があった可能性が考えられる。
特に、後に発見された3人が村から遠く離れた獣道奥の岩上に整然と座らされていた状況は偶然そこへ辿り着いたというよりも、何らかの手段で移動させられたと解釈する方が自然ではないだろうか。
人格の変容
先に戻った3人が話し始めた理解不能な言語と年齢不相応な落ち着きは単なる混乱や記憶障害だけでは説明しきれない異常性を示す。
言葉の意味が不明で理解できなかったとしても、声色や抑揚の変化は周囲の人々に強い違和感を与えたはずだ。
これは精神的な支配や人格の置き換えとも解釈できる現象であり、後の《第三の目》の発現とも何らかの関連があるのではないかと考えられる。
この変容は一時的なものではなく、最終的に外部刺激への反応を失う過程へと進んでおりその経過自体が不可解だ。
記憶消失と後遺症
後から救出された3人は記憶の大部分を失い家族や自身の素性すら断片的にしか認識できない状態にあった。
記憶喪失は極度のストレスや脳への影響によっても起こり得るが、先に戻った3人との症状の差異は特筆すべきである。
一方は徐々に反応を失い、もう一方は記憶だけが欠落する。
この差異は彼らがそれぞれ異なる状況や作用を受けていたことを示しているのではないだろうか。
その区別が意図的だったのか偶発的だったのかは不明だが、事件全体の理解において重要な分岐点となり得る。
ニャオニクスの真の目的
後に発見された3人の周囲に展開された紫色の光の結界とそれを発生させたとされる2体のニャオニクスの行動は極めて特徴的である。
結界は防御か拘束のいずれかの役割を果たしていたと推測されるが村人たちが火や音で威嚇した際に一切反撃せず撤退した行動から、彼らに明確な攻撃意図がなかった可能性も示唆する。
むしろもしかしたらニャオニクス達は少年たちを《ナニカ》から守っていたという解釈も成り立つのではないだろうか。
もしそうであれば、その場にいた三人の方が長く森にいたのに無事だったことにも頷ける。
事件後の沈黙
事件から半年後に監視のための山小屋が建てられたにもかかわらずニャオニクスが再び現れることはなかった。
この沈黙は単なる偶然か、それとも目的を達成して去ったのか判断は難しい。
ただ、異語を話した3人が10年後に全員死亡している事実は事件後も何らかの影響が継続していた可能性を否定できない。
現場が《魂を食らう森》として封鎖され続けている背景には村人の恐怖だけでなく、未知の力が再び作用することへの警戒心が色濃く残っているのではないだろうか。
構事件録
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