【解決済】タイドベイの巨鯨

発生日時:2017年9月
発生場所:ガラル地方・タイドベイシティ
関与ポケモン:ホエルオー(1体・野生)


【解決済】タイドベイの巨鯨

2017年9月、ガラル地方《タイドベイシティ》で発生した嵐の夜に湾外へ向けて回り続けていた灯台の光が22時過ぎに唐突に消え、翌朝の干潮線に灯台守の遺体が打ち上がって見つかる事件が発生した。

遺体の第一発見は翌朝、港湾管理局の巡回係が入り江に作業外套の男が海藻が薄くまとわりついた状態でうつ伏せで倒れているのを目撃し遠目から見ても死亡していることがわかり通報を行い、到着した沿岸保安隊が現場を即時封鎖した。
その後、調査のために別動隊が灯台へ向かうと外階段の踊り場に濡れた拭布と油紙に包まれた工具袋が残され、灯室のフレネルレンズ外面には粗い塩の白斑が広がっているのが確認され雨風ではなく《灯台の頂点まで海水が達した》ことが確認された。
検視では溺水だけではなく肩背部から上腕へかけて帯状の擦過と広い打撲が左右非対称に分布しており複数箇所が骨折していた事から体勢を崩して手摺へ肩から打ちつけ、その後に下層の踊り場から海面へ転落したと結論付けられた。

その後夜間の記録を洗っていくと《巨大な水柱》の目撃情報と《低く長い警笛のような鳴き声》が港まで届いたという報告が複数残っていたことが判明し、嵐の中航行していた一部の漁師は灯台付近にまるで島のような巨大な丸い《ナニカ》が闇の中で揺らめいた直後に天まで届く巨大な水柱が立ち上がり、嵐が一層強まるのを感じたということが確認された。
以上のことから昼過ぎには海上調査を行ったところ、沖合で推定200メートルはある超巨大な《ホエルオー》がゆっくりと泳ぐ姿が確認され、目視できる距離まで近づいた段階で巨大な水柱を発生させた後緩やかに去っていったため昨晩の水柱を発生させたものと同一個体であると断定された。

その後数年に渡りホエルオーの行動が記録、観測されていき、この時期になると嵐とともに餌となるプランクトン帯や外洋回遊の個体がタイドベイシティの港付近の浅い湾へ入りそれを求めてやってくることが判明。
その際超巨大なホエルオーが吸い込みや浮上、そして噴気を発生させると大きなうねりと局所的な気流を伴いながら灯台を遥かに超える高さまで水柱が発生することも度々目撃された。
以上のことから沿岸保安隊は一連の死亡事故は人間など第三者の介入を示す痕跡も根拠もなく、またホエルオー自身も攻撃や殺戮を意図しているものではないことから全てが自然現象の一つとして《たまたまその場にいて巻き込まれた》のみであると断定。

その後タイドベイシティでは灯台に防飛沫の庇と撥水処理が新たに施され、外階段は囲い込み式に改修され、夜間点検は二人体制へ移行し、ホエルオーの回遊期には灯台はおろか港付近には絶対に近づかないよう呼びかけ、徹底されていった。
また漁船も朝、ホエルオーの鳴き声や水柱を目撃したら出航を見送るもしくは時刻をずらすようになり、港の掲示板には季節ごとの注意図が貼られ万が一にもホエルオーと接触しないよう心がけている。

――文・【オリバー・ケント】(ガラル異常事件調査班)


【管理人の感想】

港町にとって海は生活を支えるものであると同時に、時に計り知れない存在をもたらすものでもあったのだと改めて感じさせられる出来事だった。
嵐の夜に現れた超巨大なホエルオーは人間の視点からすれば驚異的な存在に映ったに違いないがそれは単に生きるために回遊を続けていただけであり、人を襲う意図など持たない自然の振る舞いに過ぎなかったと思われる。

港に届いたという低く長い鳴き声や夜の闇を切り裂くように立ち上がった水柱の事を思い浮かべるとそれは恐怖と同時に荘厳さを伴った光景だったのではないだろうか。
人間が作り上げた灯台をやすやすと呑み込む存在に自然界の圧倒的な力と無垢さが重なり合っていたように感じられる。

その後に行われた港や灯台の改修、そして市民への注意喚起は単なる事故防止の対策にとどまらず巨大生物と同じ場所を共有し続けるための知恵でもあったはずだ。
危険を避けるだけでなくホエルオーが季節ごとに回遊してくることを受け入れ、地域全体で折り合いをつけようとし、恐怖を伴う体験のはずが年月を経て【巨大な存在とともにある町】という特色へと変わっていったのだろう。

港に貼られた季節ごとの注意図や漁師たちの判断の工夫には人と自然の距離を無理に縮めようとせず、互いを尊重する柔らかい知恵が宿っているように思えた。

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