【未解決】去りし氷壁

発生日時:2004年
発生場所:カロス地方・ルジュの谷
関与ポケモン:クレベース(1体・野生)


【未解決】去りし氷壁

2004年2月14日、カロス地方北東部の《ルジュの谷》で登山者たちに《リリィアイス》と呼ばれ親しまれていた氷壁が突如として崩落し、9名のアイスクライマーのうち6名が死亡、2名が行方不明、1名のみが生還するという大規模な事故が発生した。

現場には4名と5名からなる2つの登攀グループが居合わせており、午前11時ごろにはすでに数名が中腹付近に到達していたとされる。
ちょうどその頃、下で準備をしていたベテランの女性クライマーが突如氷壁全体から断続的にひび割れていくような音を感じたという。
次の瞬間、谷全体に鈍い地響きが響き渡り氷の裂ける音があたり一面に木霊した。
《巨大なナニカ》が動き出したかのような震動とともに氷壁の一部が隆起し、攀じていた仲間たちは支点を失って次々と滑落していった。

その際、彼女はとっさに近くの岩棚へ飛び移り運良く辛うじて命をつなぎ止めた。
雪煙が晴れた後、彼女の目に映ったのは谷の奥へとゆっくり遠ざかっていく《巨大な山のような影》だった。
しばらくしてからそれが自分たちが数年間幾度も挑み続けてきた《リリィアイス》であることに気がついたという。

《全長約160メートルを超える》地形と誤認されるほどの個体はこれまで一度も確認されたことのない《超巨大な野生のクレベース》だった。
誰もが地形だと信じ、観光地として登攀を楽しんできたその場所は実のところずっと眠っていた一匹の生物の体であった。

 

救助要請を受けた山岳警察と捜索隊は速やかに現地に到着し6体の遺体を回収した。
遺体はどれもクレベースに踏み潰されており損壊は激しく、いずれも原型をとどめていなかったが所持品などより身元が直ぐに判明したという。

行方不明の2名は事故当時すでに登頂に成功していたことがGPSデータと証言から明らかになっている。
つまり最後に確認された彼らの位置は氷壁の最上部であるクレベースの背中の上だった。
後に最新のGPSデータが観測された場所を探索したがそこには機器が落ちているのみで行方不明者の姿はどこにもなかったという。

その後さらに衛星画像やドローンによる追跡も試みられたが超巨大な個体に匹敵する痕跡は足跡すら見つからず消息不明である。
あれほどの大きさを持つ存在が痕跡もなく完全に姿を消した方法は今も解明されていない。
だが、現場に残されたのは痕跡や証言から幻覚やその他の事故とは到底考えられないため、《トレーナーが捕獲》もしくは《別次元に消えてしまった》のではないかと研究者は語っている。

 

事故以降リリィアイスの名は地図から抹消されルジュの谷一帯は立入禁止区域に指定された。
一部登山者の間では今も《山に命綱をかける時、山が立ち上がらない事を祈れ》という言葉を語り継いでいるという。

――文・【アデル・ヴァランタン】(カロス異常事象研究局)


【管理人の考察】

登頂者の行方

行方不明となった2名が最後に確認されたのはクレベースの背中の上である。
もし彼らが滑落したのであればそれなりの痕跡が残るはずだが、発見されたのはGPS機器のみであり落下の証拠も遺体すら見つかっていない。
これは彼らが滑落したのではなくクレベースの移動とともに《どこかへ連れ去られた》可能性を示唆している。
あるいは自らの意思で共にどこかへ向かったのかもしれない。
あの日彼らは移動するクレベースの背中の上から《ナニカ》を目撃したのだろうか。

巨体の消失

160メートル超の個体が足跡ひとつ残さず谷から姿を消し、衛星やドローンが捉えた記録も一切ないというのは極めて異例である。
これは物理的な逃走ではなく空間転移もしくは別次元への移動、あるいは《存在の霧散》を疑うべき現象である。
その巨体さもあることながら環境と同化していたような個体であったことからクレベースはある種の特殊な能力を備えていた可能性がある。
もしくはそんなクレベースが当たり前という別世界があり、そこへ帰っていっただけなのかもしれない。

偽装だった可能性

リリィアイスという氷壁は長年にわたり《安全な登山対象》として人々に親しまれていた。
その実体がクレベースだったのだとすれば問題は単なる誤認にとどまらない。
氷壁と見せかけていたのではなくむしろ《そう見せかけられていた》とも考えられないだろうか。
少しちゃんと調べればそれが生物かどうかはわかるようなものではないかと思われる。
それでも誰も疑問に思わなかったということは意識に干渉する何らかの能力を用い、巨大な生物であることを周囲から隠していたのではないだろうか。
そして《ナニカ》のキッカケでクレベースが目覚めてしまい、そのまま姿を消したという可能性すらあり得る。
いずれにしてもルジュの谷はもはや人が立ち入るにはふさわしくない場所となってしまった。

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